日本薬理学雑誌
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特集:看護の現場に求められる実践的薬理学教育と人材育成
がん化学療法における多職種連携の推進―看護師が知っておきたい薬の基礎知識―
宮崎 雅之山田 清文
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2022 年 157 巻 6 号 p. 416-420

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抄録

細胞障害性抗がん薬に加え,分子標的薬,免疫チェックポイント阻害薬の登場により,がん化学療法の治療成績は顕著に向上している.安全な化学療法を施行するためにはそれぞれの職種がそれぞれの視点で関わることが求められる.看護師は,質の高い看護を提供し,安心・安全な治療を行うために,各薬剤の薬理学的特性を理解し,副作用や日常生活への影響,注意点について患者に情報提供することが必要とされる.今日の化学療法では,抗がん薬だけでなく,制吐薬などの支持療法に使用する薬剤も含めた全ての薬剤の用量や用法,治療期間を明記した治療計画としてレジメンが作成される.各治療をレジメン管理することにより,がん薬物療法の標準化と安全確保,業務の効率化が可能となる.多くの分子標的薬には,標的分子の遺伝子変異型(ドライバー遺伝子)や発現量から分子標的薬の効果を予測できるコンパニオン診断薬が開発されており,高い治療効果が見込める患者を選定することができる.一部のがん腫においては複数のドライバー遺伝子変異があり,それぞれのコンパニオン診断薬がある.2019年6月には次世代シークエンサーを用いることで数百種類の遺伝子を低コスト,高速で解析できるがん遺伝子パネル検査が保険適応となった.しかし,がん遺伝子パネル検査は標準治療がない,あるいは標準治療不応のがんが適応であり,検査から結果判明までに長時間を要すること,適応薬剤が見つかり,治療開始に至る割合が低いことなどが課題である.分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬では,細胞障害性抗がん薬には認められない様々な副作用症状があり,それぞれの薬理学的特徴を理解したうえで副作用マネジメントが必要とされる.

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