日本薬理学雑誌
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特集:インスリン・糖尿病研究の新展開:基礎から臨床まで
インスリン受容体シグナルによる糖輸送体GLUT4小胞の膜発現機構
今村 武史
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2023 年 158 巻 2 号 p. 169-172

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抄録

インスリン刺激による血糖低下作用は,血中グルコースが主として細胞内に取り込まれることによる.中心となる作用機序は,インスリン標的組織に存在する骨格筋細胞や脂肪細胞において,糖輸送体4型(GLUT4)タンパク質がインスリン依存性に細胞膜表面に発現することである.非刺激状態においてGLUT4タンパク質は核周囲に格納されたGLUT4小胞に存在しており,インスリン受容体シグナルがGLUT4小胞を核周囲から細胞膜へ輸送する.すなわち,インスリンによる血糖低下作用の一部分は,受容体シグナルによる細胞内GLUT4小胞輸送制御作用であると言える.我々はこれまでに,細胞内骨格をレールとする分子モータータンパク質が,核周囲にプールされたGLUT4小胞を細胞膜へ移動させる複数の機序を見出した.本稿ではその成果を中心として,インスリン受容体シグナル伝達の作用点の1つが分子モータータンパク質であること,および,細胞骨格制御を含めたGLUT4小胞輸送に関わるインスリン受容体シグナル経路について概略を示した.

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