日本薬理学雑誌
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特集 iPS 細胞技術とインシリコからひも解く循環薬理学の新たな展開
In silicoを活用したiPS創薬
藤原 侑哉𠮷田 善紀
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2025 年 160 巻 1 号 p. 13-17

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抄録

ヒト由来人工多能性幹細胞(hiPS細胞)から分化させたhiPS細胞由来心筋細胞は病態も含めた様々なヒトの心筋細胞の性質をin vitroで再現できる.そのため,心毒性作用の評価や心疾患に対する治療薬開発のために用いられる重要なツールである.またhiPS細胞由来心筋細胞を用いた再生医療は心臓移植の代替になりうる治療法として期待される.近年では心臓組織に近いプラットフォームとしてオルガノイドの開発が進められるなど,循環器におけるhiPS創薬の研究は発展し続けている.一方で,現状のhiPS細胞由来心筋細胞を用いた評価系は,細胞形態のような一部の表現型に関して定量化が困難な場合がある.また得られた結果から臨床における毒性リスクや薬効を精度良く予測することが難しいなど課題もある.再生医療においても細胞の品質管理やヒトにおける移植細胞の安全性の検証などの課題が存在する.人工知能(AI)やシミュレーションなどのin silicoを用いた創薬は循環器領域を含めて様々な領域で発展し続けており,hiPS細胞を用いた創薬においてもin silicoを活用することで,創薬の効率と臨床外挿性を向上させる取り組みがなされている.本稿では論文報告をもとに,in silicoとhiPS細胞由来心筋細胞を用いた創薬の現状と課題について述べる.

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