2025 年 160 巻 1 号 p. 43-47
アレルギー疾患に対する治療として,古くからアレルゲン特異的免疫療法が行われてきた.従来は皮下免疫療法が主体であったが,舌下に投与できる製剤の開発と共に,全身性副反応の少なさから,舌下免疫療法が世界的に普及しつつある.本邦でも2014年から舌下免疫療法用の標準化製剤が承認されたことを契機に,急速に普及しつつある.アレルギー性炎症の誘導メカニズムは,感作相と惹起相に大別され,前者は特定の抗原に対する抗原特異的IgE抗体が産生され,IgE抗体がマスト細胞や好塩基球上のFcεRIに結合することで,特定の抗原に対するアレルギー反応の準備状態が出来上がることをさす.後者は,特定の抗原に対するアレルギー反応の準備状態が出来上がった状態で,再度同抗原に曝露された際に炎症,症状が惹起されることを指し,そのメカニズムには,IgE抗体を介してマスト細胞が活性化され脱顆粒するメカニズムと,組織局所でTh2細胞が活性化されることにより炎症が惹起されるメカニズムが含まれる.AITのメカニズムは不明な点が多く残されているが,そのメカニズムは脱感作と免疫寛容に分けられる.脱感作はマスト細胞や好塩基球の抗原に対する応答が低下することにより誘導される.免疫寛容は抗原特異的IgE抗体と抗原に対する結合が競合する抗原特異的IgG4抗体の産生誘導や,IL-10等の炎症抑制性サイトカインの産生する制御性T細胞をはじめとした炎症抑制性免疫細胞が誘導等により誘導されることが知られている.AITには,有効性を事前に予測できるバイオマーカーがないことなど,複数の課題が残されているが,近年の研究では,HLA遺伝子型がAITの応答性に影響を与えることが示されており,遺伝子解析や一細胞レベルでの解析が可能となった技術革新により,今後これらの課題の解決が期待される.