日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集 「見る」を科学する~眼科疾患創薬研究の新展開~
視神経機能の回復を目指した遺伝子治療研究
行方 和彦郭 暁麗原田 知加子原田 高幸
著者情報
ジャーナル 認証あり HTML

2025 年 160 巻 1 号 p. 19-22

詳細
抄録

緑内障は加齢に伴って進行する視神経の変性疾患であり,国内で最大の中途失明原因となっているが,根本的な治療法は見つかっていない.現在の治療法としては,点眼などによる眼圧降下によって,進行をできるだけ遅延させることに期待するのみである.しかし,眼圧降下だけでは進行を抑制できない緑内障患者も多数みられ,根本的な治療法の開発が待たれる状況にある.一方,近年では遺伝子治療の臨床応用が,世界中で活発になっている.現在でも様々な遺伝子治療用ベクターが開発され続けており,技術の進歩が非常に目覚ましい分野である.遺伝子治療はすでに複数の神経変性疾患に臨床応用されているが,緑内障に対する遺伝子治療はまだ確立されていない.我々のグループでは,神経栄養因子のシグナルを利用した遺伝子治療による,緑内障の治療研究を進めている.神経保護による病態の進行抑制だけでなく,視神経軸索などの再生による機能回復を目指している.本稿では,緑内障などのモデルマウスを用いた,視神経の遺伝子治療研究について,最近の成果をご紹介する.

著者関連情報
© 2025 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top