日本薬理学雑誌
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実験技術
GRINレンズを用いた脳深部イメージング
平野 匡佑野村 洋
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2025 年 160 巻 1 号 p. 53-57

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抄録

個体の行動の変化を司る脳の情報処理機構を明らかにすることは神経科学における究極の目標の1つである.これは精神・神経疾患の治療法の確立に繋がるため,行動薬理学的にも大きな意義がある.脳は複数の神経細胞の活動を組み合わせて膨大な情報を表現していると考えられるため,脳の情報処理機構の解明には多数の神経細胞の活動を記録することが必要である.近年,多細胞の活動を同時に記録する手法の開発が飛躍的に進展している.特に,蛍光カルシウムセンサーを用いたカルシウムイメージング法は,神経細胞集団の空間配置および活動の時系列変化を同時に取得できる画期的な手法である.本稿ではGRINレンズを用いた脳深部イメージング,特に動物の頭部に搭載可能な小型顕微鏡を用いた自由行動下での脳深部カルシウムイメージングについて簡単に解説する.また,GRINレンズ以外のカルシウムイメージング法や電気生理学的手法,ファイバーフォトメトリー法と比較した際の本手法のメリットとデメリットを紹介する.最後に,本手法の発展について,二光子顕微鏡を用いた細胞体以外のイメージング,膜電位センサーを用いた膜電位イメージング,空間光変調器や電子式焦点可変レンズの導入による単一細胞レベルの解像度での神経活動操作を紹介する.

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