日本薬理学雑誌
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総説
遠位型ミオパチーに対するアセノイラミン酸
青木 正志
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2025 年 160 巻 1 号 p. 48-52

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抄録

縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(GNEミオパチー)は,10歳代後半以降に発症し緩徐に進行する有効な治療法のない難病である.常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式をとり,わが国における患者数は400名程度であると推定されている.原因遺伝子がシアル酸生合成経路律速酵素であるGNEであることが明らかになり,非臨床試験でシアル酸の有効性が示された.2010年から東北大学病院はアセノイラミン酸による医師主導第Ⅰ相試験を実施した.その後,海外での試験が先行し,アセノイラミン酸徐放錠を用いた第Ⅱ相試験で上肢の筋力回復が確認され,第Ⅲ相試験へ進んだ.国内では海外第Ⅲ相試験と同様なプロトコールにて第Ⅱ/Ⅲ相試験を国内5施設で行い,有効性および安全性を確認した.一方,海外での第Ⅲ相試験では有効性を示せず開発が中止となった.国内では追加の確認試験も実施し,再現性が確認された結果,世界に先駆けて2024年3月に製造販売承認となった.開発が困難といわれるウルトラオーファン疾患の対する治療薬開発の成功例となり,患者の早期治療につながることが期待される.

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