日本薬理学雑誌
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特集 生体の老化・がん化における代謝制御の分子基盤と創薬展望
細胞内の酸素・代謝状態のセンサーとして働く2-oxoglutarate-dependent dioxygenaseファミリー
中山 恒南嶋 洋司
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2025 年 160 巻 4 号 p. 251-255

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抄録

生体内の組織や細胞では,酸素の需要と供給のバランスが崩れ,需要が上回ると低酸素環境が形成される.低酸素環境下では生体は低酸素応答を引き起こして適応し,そのような厳しい環境下でも恒常性が維持される.しかしながら,細胞がどのように酸素濃度変化を感知して,低酸素応答を引き起こすのかは,長い間不明であった.1990年代半ばに,Hypoxia-Inducible Factor(HIF)が同定されたのを皮切りに,低酸素応答を司る分子機構の研究は一気に進んだ.そして,酸素濃度低下を感知して適応に働く低酸素応答の中心経路として,プロリン水酸化酵素prolyl hydroxylase domain-containing protein(PHD)-転写因子HIF経路が解明された.PHDはその活性に酸素を必要とすることから細胞内の酸素センサーと位置づけられている.一方,PHDと同じ,O2・Fe2+・2-oxoglutarateを補因子として利用する酵素が細胞内には多数存在しており,2-oxoglutarate-dependent dioxygenase(2OGDD)ファミリーとして注目されている.本稿では,2OGDDの働きと疾患における役割を概説し,その活性を制御するような薬物開発の方向性と課題を展望したい.

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