2026 年 161 巻 3 号 p. 192-197
不眠症治療薬として,従来はベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系が広く用いられてきたが,オレキシン受容体拮抗薬はその上市以降,より安全性の高い薬剤として臨床での使用が増加している.オレキシンは覚醒維持に関与する神経ペプチドであり,オレキシン受容体の阻害は自然な睡眠を促すと考えられている.ボルノレキサント(販売名:ボルズィ®錠)は国内で創製・開発されたOX1およびOX2受容体の両方を阻害する新規デュアルオレキシン受容体拮抗薬であり,2025年8月に不眠症を効能又は効果として日本で承認された.ボルノレキサントは不眠症治療薬の課題の1つである翌日の持ち越しリスクを低減させるため,短い消失半減期を持つようにデザインされた薬物である.ラットの脳波測定でボルノレキサントはレム睡眠およびノンレム睡眠の両方を増加することが確認された.第Ⅰ相臨床試験では速やかに最高血漿中濃度に達し,その後速やかに消失することが確認された.不眠症患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験では主観的な入眠困難,睡眠維持困難および日中の機能低下の改善が認められ,長期投与試験では52週間に渡り効果の持続が確認された.第Ⅱ相臨床試験では睡眠ポリグラフ検査で入眠困難および睡眠維持困難の改善が認められ,客観的評価でも有効性が確認された.安全性については用量に応じた傾眠の発現率の増加が認められたが,臨床上大きな問題となる有害事象は認められなかった.また,不眠症治療薬で懸念されている依存性,退薬症候,反跳性不眠や自殺念慮および自殺企図の有害事象は認められなかった.さらに,短半減期の特徴から期待された通り,ボルノレキサント10 mgまででは投与翌日の運転技能等の評価で臨床的に意義のある影響は認めず,持ち越し効果を生じる可能性が低いことが臨床試験より示唆された.ボルノレキサントは有効性および安全性の両面で不眠症治療における新たな選択肢として期待される.
Traditionally, benzodiazepines and non-benzodiazepines have been primary pharmacological treatments for insomnia. The introduction of orexin receptor antagonists has provided safer alternatives. Orexin is a neuropeptide involved in maintaining wakefulness, and blockade of its receptors OX1 and OX2 is considered to promote sleep with minimal disruption to the natural sleep. Vornorexant (Vorzzz® tablets 2.5 mg, 5 mg, 10 mg) is a dual orexin receptor antagonist developed in Japan and approved in August 2025 for insomnia. Designed with a short elimination half-life, vornorexant aims to minimize next-day residual effects—a common limitation of conventional hypnotics. In rat electroencephalogram studies, vornorexant increased both non-REM and REM sleep. Phase I trials confirmed rapid absorption and elimination in healthy volunteers. In Phase III trials, vornorexant improved sleep onset, sleep maintenance, and daytime functioning in both short- and long-term use. In a Phase II trial, improvements in both sleep onset latency and sleep maintenance were observed through polysomnographic assessment, confirming efficacy of the intervention based on objective measures. Regarding safety, an increase in the incidence of somnolence with increasing dose was observed, but no adverse events of major clinical concern were identified. No events of dependence, withdrawal, rebound insomnia, or suicidal ideation/behavior were observed. Consistent with its short elimination half-life, findings from clinical trials indicated that vornorexant at doses up to 10 mg did not impair next-day functioning including driving performance, suggesting minimal residual effects. These findings support vornorexant as a promising new therapeutic option for insomnia, offering both efficacy and safety.
不眠症は,入眠困難,睡眠維持困難,早朝覚醒等を特徴とし1),これらの睡眠の質の低下に加えて日中の倦怠感,うつ,不安,さらには生活習慣病や認知症のリスク増加とも関連する疾患である.成人の約10%が罹患していると報告されており2),個人の生活の質の低下のみならず,社会経済的損失の要因として重要な公衆衛生上の課題である3).
従来からの薬物療法として,γ-アミノ酪酸(GABA)A受容体に作用するベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が広く使用されているが,これらは,依存性4),耐性形成5),認知機能障害6),転倒リスク7)等の副作用を持つことが問題視されている.また,翌日の持ち越し効果が不眠症治療薬の課題の1つである.
こうした背景のもと,関心を集めているのがオレキシン受容体拮抗薬である.オレキシン(別名ヒポクレチン)は視床下部外側野に局在する神経細胞から分泌される神経ペプチドであり8,9),覚醒維持の中心的な役割を果たしている10,11).オレキシン受容体拮抗薬は,オレキシン1(OX1)受容体およびオレキシン2(OX2)受容体に対する拮抗作用を通じて覚醒系の過活動を抑制し,より生理的な睡眠を誘導する薬剤である12).
本稿では,2025年8月に不眠症の適応で日本国内で承認された新規オレキシン受容体拮抗薬であるボルノレキサントの薬理学的特徴,薬物動態学的特徴および臨床試験での有効性・安全性について概説する.
ボルノレキサントは,不眠症治療薬の課題である翌日の持ち越しリスクの低減を目指し,投与後速やかに入眠効果を発現し,翌朝には消失する薬物動態(PK)プロファイルを持つオレキシン受容体拮抗薬を開発することを目標として創製された.消失半減期を短くするために薬物の脂溶性を下げて体内に分布する量(分布容積)を低下させる戦略をとった.分布容積を小さくすることにより消失半減期を短縮できるが,脂溶性の低減は脳内移行性およびオレキシン受容体親和性の低下を招くというジレンマがあった.
まず,代表的なOX1およびOX2受容体拮抗薬のファーマコフォア(活性に必要な共通構造)モデルから,低脂溶性,OX1およびOX2受容体親和性,脳内移行性の維持に重要なアリールピラゾール構造を持つリード化合物(図1,化合物1)を創製した.化合物1の類縁体から見出された化合物2(図1,化合物2)は,短い半減期を示したがOX1およびOX2受容体に対する拮抗作用は十分ではなかった.一方,化合物3は強い拮抗作用を示したが脂溶性の低減が十分ではなかった(図1,化合物3).最適化の方針変更が必要とされ,化合物1の中心部分を環化し,環内にヘテロ原子を導入するアイデアに行きついた(図1,化合物4).試行錯誤の結果,1,3-オキサアジナン環を持つ化合物5は,化合物2と同程度の低脂溶性であるものの,約20~30倍強力なOX1およびOX2受容体拮抗作用を示すことが見出された(図1,化合物5).化合物5は,ラットのポリソムノグラフィー試験で1 mg/kgの経口投与で睡眠促進効果を示し,ラットおよびイヌで目的とするPKプロファイルを持つことが確認され,ヒトの消失半減期は0.9~2.0時間との予測が得られた.この化合物5の開発が進められ,のちにボルノレキサント(vornorexant)と命名された.

OX1R:オレキシン1受容体,OX2R:オレキシン2受容体,IC50:50%阻害濃度,ip:腹腔内投与,Log DHPLC:pH 7.4の分配係数,HPLC:高速液体クロマトグラフィー,po:経口投与.
ボルノレキサントは,放射性標識リガンドを用いた結合試験で,ヒトOX1およびヒトOX2受容体に対して同程度の高い親和性を示し,結合阻害定数(Ki)はそれぞれ0.460 nmol/Lおよび0.374 nmol/Lであった(表1).また,ボルノレキサントはヒトOX1およびヒトOX2受容体への放射性標識リガンド結合を競合的に阻害した.ボルノレキサントはラットOX1およびラットOX2受容体にも同等の親和性を示し,種差は認められなかった(表1).さらに,カルシウムイオンの細胞内濃度変化を指標とした機能性評価で,ヒトOX1およびヒトOX2受容体に対して同程度のアンタゴニスト作用を有し,50%阻害濃度(IC50)はそれぞれ1.61 nmol/Lおよび1.76 nmol/Lであった(表1).なお,ボルノレキサントはOX1およびOX2受容体以外の90種類の受容体,トランスポーターおよびイオンチャネルに対して薬理学的に意味ある作用を示さず,OX1およびOX2受容体への高い特異性が認められた.
| OX1受容体 | OX2受容体 | ||
|---|---|---|---|
| 親和性 | ラット 阻害定数Ki(nmol/L) | 0.378 ± 0.0529 | 0.566 ± 0.0566 |
| ヒト 阻害定数Ki(nmol/L) | 0.460 ± 0.0405 | 0.374 ± 0.0213 | |
| 拮抗作用 | ヒト 50%阻害濃度IC50(nmol/L) | 1.61[1.43~1.82] | 1.76[1.10~2.82] |
平均値±SEMまたは平均[95%信頼区間].
以上より,ボルノレキサントはOX1およびOX2の両受容体に対して同等の強い阻害活性を持ち,かつ高い選択性を有するデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)であることが示された.
2) ラットにおける受容体占有率15)ボルノレキサントのWistarラット脳におけるOX1およびOX2受容体占有率を,それぞれの放射性標識リガンドを用いたex vivo結合試験により評価した.ボルノレキサントは0.3~30 mg/kgの経口投与で用量に応じてOX1およびOX2受容体占有率を増加させ,ラットで睡眠促進作用を示した最小用量(1 mg/kg経口投与)での両受容体占有率はいずれも約50%であった.さらに,ボルノレキサント3 mg/kgを経口投与後のOX1およびOX2受容体占有率は,投与後1~2時間で最大に達した後,速やかに減少し,半減期はそれぞれ1.4および3.2時間であった.これは,同時に測定したボルノレキサントの血漿中濃度が速やかに上昇し,半減期1.7時間で低下する推移と近似していた.従って,受容体占有率と血漿中濃度の関係から,ボルノレキサントの薬力学的効果は血漿中濃度に依存し,血漿中濃度から予測できる可能性が示された.
3) ラットにおける薬理作用15)ボルノレキサントの睡眠・覚醒への影響を,脳波用電極を埋め込んだWistarラットを用いて暗期(活動期)に評価した.ボルノレキサント3または10 mg/kgの単回経口投与は溶媒対照と比較して,睡眠潜時を有意に短縮させ(いずれもP<0.01,図2A),投与後2時間の総睡眠時間を有意に増加させた(P<0.01,図2B).また,14日間の反復投与でも同様の作用が確認され(図2Aおよび図2B),連続投与による耐性形成は認められなかった.さらに,初回投与時の総睡眠をレム睡眠およびノンレム睡眠に分けたところ,レム睡眠およびノンレム睡眠の両方を有意に増加させた(いずれもP<0.01,図2C).

A:Day 1および14における睡眠潜時.B:Day 1および14における総睡眠時間.C:Day 1におけるレム睡眠・ノンレム睡眠への影響.平均値±SEM.*P<0.05,**P<0.01 vs. 溶媒群(Dunnett検定).††P<0.01 vs. 溶媒群(Dunnett検定,レム睡眠に対して).##P<0.01 vs. 溶媒群(Dunnett検定,ノンレム睡眠に対して).REM sleep:レム睡眠,NREM sleep:ノンレム睡眠,Vehicle:溶媒.
Sprague-Dawleyラットおよびビーグル犬にボルノレキサント3 mg/kgを経口投与し,PKプロファイルを検討した.ボルノレキサントは投与後速やかに吸収され,最高血漿中濃度(Cmax)に達するまでの時間(tmax)はそれぞれ0.67および1.3時間であった.その後速やかに血漿中から消失し,半減期(t1/2)はそれぞれ0.96および2.7時間であった.さらに,ボルノレキサントをWistarラットに経口投与した後の脳脊髄液中濃度(脳内における非結合型濃度と平衡状態にあると想定)と血漿中濃度を測定した結果,脳脊髄液中のボルノレキサント濃度-時間曲線下面積(AUC)は,血漿中非結合型濃度のAUCの46%を示し,投与1時間後の脳脊髄液中濃度は,OX1およびOX2受容体拮抗作用の平衡解離定数(Kb)を上回っており,薬効を示すための十分量が脳内に移行することが確認された16).
日本人健康成人男性にボルノレキサント10 mgを単回または7日間反復投与したときのPKパラメータを表2および表3に示す.絶食下単回投与(12例)では,ボルノレキサントのtmaxは0.5時間と速やかに吸収され,半減期は2.13時間であり,目的とするPKプロファイルである速やかな吸収および短い消失半減期を有することがヒトでも確認された.また,食後投与では,絶食下投与と比較して血漿中未変化体のAUC0-∞は増加し,tmaxは1時間遅延した.一方でCmaxおよび半減期では,絶食下投与と食後投与で大きな差は認められなかった17)(表2).さらに,ボルノレキサント10 mgの就寝前7日間反復投与時では,投与1日目と7日目の血漿中ボルノレキサント濃度はほぼ同様の推移を示した.1日目のAUC0-∞と7日目のAUC0-24hに差はなく,反復投与による蓄積性は認められなかった18)(表3).
| Cmax(ng/mL) | tmaxa)(h) | AUC0-∞(ng·h/mL) | t1/2(h) | |
|---|---|---|---|---|
| 絶食下(12例) | 279 ± 96.7 | 0.500(0.500,3.00) | 720 ± 237 | 2.13 ± 0.185 |
| 食後(12例) | 255 ± 77.7 | 1.50(0.500,2.00) | 851 ± 318 | 1.81 ± 0.336 |
平均値±SD,用量はいずれも10 mg,a):中央値(最小値,最大値).
| 用量(例数) | 投与日 | Cmax(ng/mL) | tmaxa)(h) | AUCb)(ng·h/mL) | t1/2(h) |
|---|---|---|---|---|---|
| 10 mg(6例) | 1日目 | 256 ± 63.2 | 1.50(1.50,2.00) | 1210 ± 420 | 2.04 ± 0.395 |
| 7日目 | 265 ± 73.5 | 1.75(0.750,2.00) | 1340 ± 632 | 2.03 ± 0.398 |
平均値±SD,a):中央値(最小値,最大値),b):投与1日目はAUC0-∞,投与7日目はAUC0-24h.
日本人不眠症患者590例を対象とした第Ⅲ相プラセボ対照比較試験17,19)にて,ボルノレキサントの有効性を検討した.対象患者をボルノレキサント5,10 mgまたはプラセボ群のいずれかに無作為に割り付け,1日1回就寝前に2週間投与した.主要評価項目を睡眠日誌による主観的睡眠潜時(sSL)の投与2週時のベースラインからの変化量とした.ボルノレキサント群とプラセボ群との差は,5および10 mg群でそれぞれ−10.6および−10.1分であり,いずれの群もプラセボ群に対して有意な改善が認められ(いずれもP<0.001,図3A),プラセボに対する5および10 mgの優越性が検証された19).重要な副次評価項目は睡眠日誌による主観的睡眠効率(sSE,就床時間に対する睡眠時間の割合)の投与2週時のベースラインからの変化量とし,いずれの群もプラセボ群に対して有意な改善が認められ(いずれもP<0.001,図3B),sSLと同様にプラセボに対する5および10 mgの優越性が検証された19).日中の機能改善効果は複数の評価尺度で評価し,いずれの群もプラセボ群に対して有意な改善が認められた17).不眠症患者を対象とした長期投与試験(非盲検)17)ではボルノレキサントの長期投与による有効性および日中の機能改善が52週時まで持続した.

A:sSL(主観的睡眠潜時).B:sSE(主観的睡眠効率).平均値±SEM.*P<0.05 vs. PBO.PBO:プラセボ群,VOR5:ボルノレキサント5 mg群,VOR10:ボルノレキサント10 mg群.
日本人不眠症患者24例を対象に,単回投与時の客観的有効性を睡眠ポリグラフ検査(PSG)で探索的に評価した(第Ⅱ相プラセボ対照クロスオーバー試験20)).持続睡眠潜時(LPS)および中途覚醒時間(WASO)を主要評価とした.LPSのプラセボ群との差は,5 mg群で−42.4分,10 mg群で−42.1分であり,いずれの群もプラセボ群に対して有意な短縮が認められた(P<0.001).WASOのプラセボ群との差は,5 mg群で−27.5分,10 mg群で−35.4分であり,いずれの群もプラセボ群に対して有意な短縮が認められた(P<0.01).
これらの結果より,主観的および客観的評価の両方で有効性が確認された.
2) 安全性 ●安全性プロファイル主な有害事象(3%以上の発現率)は,第Ⅲ相プラセボ対照比較試験19)で傾眠および上咽頭炎,長期投与試験17)で傾眠,上咽頭炎および悪夢であった.傾眠は両試験で用量増加に伴い発現率が高くなる傾向が認められたが,臨床上大きな問題となる有害事象は認められなかった.いずれも軽度又は中等度で,投与継続に伴う重症化傾向は認められなかった.長期投与試験ではナルコレプシー様症状に関連する有害事象として睡眠時麻痺および入眠時幻覚が認められたが,発現割合は両群共に0.5~1.1%で,いずれも軽度であり投与中止はなかったことから,ボルノレキサントの投与によりナルコレプシー様症状が誘発される可能性は低いことが示唆された.睡眠時随伴症に関連する有害事象としては,悪夢,異常な夢および爆発頭部症候群が認められたが,同様にいずれも軽度で投与中止例はなかった.長期投与試験で認められた悪夢は概ね投与初期の発現であり,長期投与に伴う増加は認められず,ボルノレキサントの投与による臨床上大きな問題となる可能性は低いと考えられた.なお,依存性,退薬症候,反跳性不眠,自殺念慮および自殺企図に関連する有害事象は認められなかった.
●持ち越し効果不眠症治療薬の使用において,翌日まで薬効が残存する「持ち越し効果」は,日中の眠気,ふらつき,脱力・頭痛,倦怠感等が生じ,臨床上の懸念事項である.ボルノレキサントでは主に自動車運転技能評価試験で持ち越し効果を検討した.自動車運転技能は,健康成人および健康高齢者を対象にしたクロスオーバー二重盲検比較試験でボルノレキサントの投与による翌日の持ち越し効果を運転シミュレータにより確認した.ボルノレキサント10 mgの単回および反復投与では臨床的に意義のある運転技能への影響は認められなかった21).また,投与翌朝の平衡機能や認知機能等への影響でも同様にボルノレキサント10 mgの単回投与による影響は認められなかった17).
以上の試験データより,ボルノレキサントは投与翌日の持ち越しリスクが低いことが示され,これらの結果がボルノレキサントの消失半減期が短いというPKプロファイルを裏付けた.
ボルノレキサントは,OX1およびOX2受容体に高い阻害活性と選択性を有するDORAである.高い阻害活性を保持したまま,脂溶性を低減することに成功し,短半減期の薬物動態プロファイルを実現させた.非臨床試験では,速やかな血漿中濃度の上昇と消失が認められたことから,速やかな入眠効果と持ち越し効果のリスクの低減を併せ持つ不眠症治療薬となり得ることが示された.臨床試験でも投与早期から入眠効果,睡眠維持,日中の機能改善が認められ,安全性評価でも臨床上問題となる影響は認められなかった.さらに,持ち越し効果についても不眠症治療薬の課題の克服が期待される成績を示したことから,ボルノレキサントは不眠症治療の新たな選択肢を提供し医療現場へ貢献できる新薬である.
不眠症は,うつ病,不安障害,認知症,心血管疾患,糖尿病,夜間頻尿等多様な疾患と関連しており,慢性的な睡眠障害がこれらの病態の進行に関与する可能性がある.適切な不眠症治療は,夜間の睡眠や日中機能の改善のみならず,併存疾患の予防・改善にも寄与する可能性がある.ボルノレキサントがより安全かつ生理的な睡眠を提供することで,患者の全体的な健康状態の改善につながることが期待される.
今後は,実臨床でのボルノレキサントの使用経験を蓄積するとともに,多様な患者背景に対応したエビデンスを創出して臨床現場に貢献していきたい.
横田 遥,地野 之浩,柴山 加世子,茶木 茂之,今寺 祐美子(大正製薬株式会社).