2026 年 161 巻 3 号 p. 164-169
小児医薬品開発の現状は,従来の実証主義から科学的妥当性に基づく外挿アプローチへの転換期にある.ICH-E11Aガイドラインに基づく疾患・薬理・治療効果の類似性評価により,成人データからの外挿による効率的な開発が求められている.日本では2025年のPMDA小児用医薬品シンポジウムにおいて,ドラッグ・ラグやドラッグ・ロス解消に向けた前例主義からの脱却と柔軟な開発初期段階からの相談体制構築が表明された.Modeling & Simulation(M&S)の活用が推奨される中,小児特有の生体情報に加えて,人種差を考慮した日本人小児の生物学的薬物動態モデルのプラットフォームを検討した.14種の薬剤を用いてその妥当性を検証したところ,実測薬物動態(pharmacokinetics:PK)パラメータの0.5~2.0倍以内に収まる予測性が示された.今後の展望として,M&S活用による小児医薬品開発の効率化が益々進む.すなわち,必要症例数の低下あるいは科学的妥当性に基づいたWaiverの可能性が高くなる.さらに病態を伴う小児特殊集団や薬物相互作用評価への応用拡大を推進するため,小児生理学の集団基礎情報の創生,個別化情報の収集・統合,方法論の検討や妥当性評価そして規制整備が期待される.これらには産・官・学・病院の連携による役割分担が重要となる.