小児用医薬品の拡充は,小児患者に適切な医療を提供するために重要な課題である.小児は身体および臓器が発達・成長段階にあるため,同一の医薬品を同量投与した場合でも,薬効や副作用の発現が成人とは異なる場合がある.そのため,小児用医薬品の開発には小児臨床試験が不可欠であるが,対象患者数が限られていることに起因するさまざまな問題があり,大きな障壁のひとつとなっている.より安全かつ効率的な小児臨床試験を実施するためには,それに先立つ非臨床段階において,安全性や有効性を適切に予測・評価することが重要である.近年,ヒト細胞モデルや臓器オルガノイドなどのNew approach and methodologies(NAMs)の創薬における活用が進んでおり,非臨床試験におけるヒト予測性の向上や動物実験代替の促進が期待されている.小児の薬物動態や薬物応答を再現可能なNAMsを開発,実用化することで,小児における安全性や有効性を非臨床試験で適切に評価することが可能となり,小児用医薬品の開発促進につながる可能性がある.本稿では,ヒト細胞モデルを用いた小児心不全治療薬の創薬基盤研究および小児における薬物性肝障害の非臨床試験法の開発に関する筆者らの取り組みを紹介するとともに,小児用医薬品の非臨床評価技術の高度化に向けた取り組みについて国際動向を含めて概説する.