日本薬理学雑誌
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特集 細胞の形と機能を司る生体膜のホメオスタシス制御とそこから迫る病態生理の新展開
外分泌腺腺房細胞におけるMARCKSを介した生体膜ドメインの動態制御と病態生理学的展望
佐藤 慶太郎大野 雄太長瀬 春奈
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2026 年 161 巻 4 号 p. 245-248

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抄録

唾液分泌は口腔および全身の健康維持に不可欠であり,耳下腺腺房細胞ではβアドレナリン受容体刺激に伴うcAMPとそれに続くプロテインキナーゼA(PKA)の活性化が,アミラーゼの開口放出(エキソサイトーシス)を誘発する.しかしPKA活性化から分泌顆粒膜と細胞膜の融合に至る詳細な分子機構には未解明な点が多い.筆者らは,生体膜ホメオスタシス制御の観点からプロテインキナーゼC(PKC)の主要基質であるMARCKS(myristoylated alanine-rich C kinase substrate)に着目し,その役割を検討した.ウェスタンブロット解析により,MARCKSは耳下腺,顎下腺,舌下腺,涙腺,および膵外分泌腺のすべてで強く発現していることが確認された.耳下腺においてβ受容体刺激はPKAの活性化を介してPKCδを活性化させ,MARCKSのリン酸化を惹起する.リン酸化されたMARCKSは,細胞膜の特定のマイクロドメインである脂質ラフト(detergent-resistant membrane:DRM)から細胞質へと脱離する.この刺激に伴う脂質ラフトからの脱離現象は,耳下腺(cAMP依存性)と膵臓(主にCa2+依存性)の両組織のアミラーゼ分泌に共通して認められた.MARCKS阻害ペプチドによる分泌抑制効果を併せると,MARCKSは脂質ラフト上でSNAREタンパク質等の分泌関連分子の機能を物理的あるいは空間的に制御しており,刺激に伴うその脱離がエキソサイトーシスのトリガーとして機能している可能性を示唆している.本機構は,耳下腺のみならず膵外分泌腺等でも共通して認められる外分泌機能の根幹をなす制御システムであると考えられる.本稿では,生体膜ドメインの動態制御の観点から,MARCKSを介した新たな分泌調節モデルを提唱し,その病態生理学的意義について考察する.

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