日本薬理学雑誌
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特集 薬理学・生理学・解剖学教育における実習の果たす役割について:実習は必要か?
改めて医学教育における実習とは―実習中心の解剖学の立場から―
長瀬 美樹
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2026 年 161 巻 5 号 p. 340-345

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抄録

解剖学は,人体の正常構造と機能を理解し,臨床医学を学ぶための基盤となる重要な教科であり,ご遺体を用いた解剖学実習はその中核を担っている.解剖学実習は,医学生が人体から直接情報を得る唯一の機会である.学生は日々真摯な態度でご遺体と向き合い,五感を駆使してご遺体が発する情報を収集する.実習の目的は,単なる知識の暗記にとどまらず,人体構造の三次元的理解と科学的観察力の育成にある.実際に目にする人体構造は必ずしも教科書通りではなく,その多様性を体験することは臨床的思考の基礎となる.

解剖学実習は,良き医師の育成を願って自らの身体を提供する献体者の崇高な志に支えられた特別な実習であり,関連する法令および倫理指針を遵守して実施される必要がある.とりわけ献体者への礼意と感謝の念を心に刻むことは重要であり,生命の尊厳,医の倫理,医のプロフェッショナリズムを涵養する貴重な教育機会でもある.近年,基礎医学教育の時間的制約が進む中,本学では臨床科と連携した垂直統合型教育を導入している.柔らかい固定法のご遺体を用いて,気管挿管などの基本的臨床手技を体験しながら当該部位の解剖を学ぶ特別実習を実施している.その際,事前に手技指導を受けた学生がピアティーチャーとして他の学生を指導するピアラーニング方式が有用であった.また,解剖学的知識が手術にいかに役立つかについて,外科医が手術動画を用いて解説する特別講義を導入することで,学生の学習意欲は大きく向上した.さらに,CTやMRIなどの医用画像読影と解剖学実習を統合した教育により,低学年から医用画像を系統的に学ぶ機会を提供し,人体構造の三次元的理解ならびに画像読影能力の向上につながっている.仮想現実(VR)技術を用いた教育教材が普及する現在においても,ご遺体を用いた解剖学実習は代替困難でかけがえのない教育手法であり,解剖学教育の根幹であり続けると考えられる.

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