2026 年 161 巻 5 号 p. 335-339
薬理学実習において動物や摘出組織を用いて薬物作用を直接観察することは,講義で得た知識を統合的に理解するうえで重要な教育的役割を担ってきた.しかし近年,動物愛護や3R原則(Replacement, Reduction, Refinement)の普及,人的・経済的負担,さらにはシミュレーター教材の発展により,実験動物を用いた実習は縮小傾向にある.一方,動物実習に必要な専門的手技は一度途絶えると再構築が困難であることから,動物実習を継続する教育的意義を客観的に再評価する必要性が高まっている.高知大学の薬理学実習では,モルモット・ラット・マウスを用いた腸管運動,循環動態,中枢神経系機能の3課題を継続して実施している.本稿では,これらの実習に参加した2023年度および2024年度の学生から任意で回収した感想文を対象に,テキストマイニング手法を用いて学習効果および倫理的気づきの特徴を分析した.その結果,頻度分析では両年度とも「薬理」「薬物」「課題」など実習内容に関連する語が多く,実習が講義内容の理解に寄与していたことが示された.動物種では「マウス」の出現頻度が最も高く,マウスの行動観察が印象深い学習経験となっていた.一方,ラットを用いた実験では血圧変化の数値観察を通じて薬効理解が深まり,モルモットを用いた実験では臓器レベルの反応を確認する学習過程が反映されていた.さらに共起ネットワーク分析では,生体反応の観察経験が薬理学的理解や生命倫理・医療安全への意識と結びついて記述されていることが明らかとなった.以上より,実験動物を用いた薬理学実習は,知識の深化に加えて倫理的視点を育む教育手段として意義が大きく,今後も多面的な薬理学教育の一環として継続・発展が期待される.