日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
新薬紹介総説
高コレステロール血症治療薬ベムペド酸(ネクセトール®錠180 mg)の薬理学的特性と臨床効果
鈴木 智久藤多 ひとみ真宇根 寛美
著者情報
ジャーナル オープンアクセス HTML

2026 年 161 巻 5 号 p. 395-406

詳細
要約

ベムペド酸(ネクセトール®)は,肝細胞に選択的に発現するvery long-chain acyl-CoA synthetase 1(ACSVL1)により活性化体(CoAエステル体)へ変換され,ATPクエン酸リアーゼ(ACL)を選択的に阻害する高コレステロール血症治療薬である.活性体によるACL阻害により細胞質アセチルCoAが減少し,SREBP2活性化を介してLDL受容体発現が増加することで,血中LDLコレステロール(LDL-C)のクリアランスが促進される.ACSVL1は骨格筋でほとんど発現しないため,ベムペド酸は筋組織では活性化されず,筋障害関連副作用を引き起こしにくい特性を有する.非臨床試験では,ACLに対する直接阻害作用,肝細胞での脂質合成抑制,高脂肪・高コレステロール食負荷動物および複数の動脈硬化モデル動物におけるLDL-C低下作用と動脈硬化病変進展抑制が確認されている.国内外の臨床試験では,ベムペド酸は高LDLコレステロール血症患者に対して,スタチン治療の反応性に関わらずLDL-Cを低下させ,ベムペド酸の効果は投与後早期から認められた.また,安全性上のリスクについてもベムペド酸投与により特に留意すべき安全性上の重大な懸念事項はなかった.加えて,心血管疾患を有する又はそのリスクが高いスタチン不耐の高LDLコレステロール血症患者を対象とした海外第Ⅲ相試験の結果より,ベムペド酸はLDL-Cを低下させ,その効果を維持することで,臨床的に重要なエンドポイントである心血管イベント発症のリスクを減少させることが認められた.

Abstract

Bempedoic acid (Nexletol®) is a novel cholesterol-lowering agent that is converted to its active CoA ester by very long-chain acyl-CoA synthetase 1 (ACSVL1), an enzyme selectively expressed in hepatocytes. The active metabolite selectively inhibits ATP citrate lyase (ACL), leading to a reduction in cytosolic acetyl-CoA levels and subsequent activation of SREBP2. This results in increased expression of LDL receptors and enhanced clearance of LDL cholesterol (LDL-C). Because ACSVL1 is not expressed in skeletal muscle, bempedoic acid is not activated in muscle tissue and is therefore less likely to cause muscle-related toxicity. Nonclinical studies have demonstrated direct ACL inhibition, suppression of hepatic lipid synthesis, and LDL-C–lowering effects with attenuation of atherosclerotic lesion progression in multiple animal models. In domestic and international clinical studies, bempedoic acid reduced LDL-C levels in patients with elevated LDL-C, regardless of their response to statin therapy. The LDL-C–lowering effect was observed from the first scheduled assessment after treatment initiation. With respect to safety, no significant safety concerns requiring special consideration were identified, and bempedoic acid was generally well tolerated. In addition, an international Phase III trial in patients with hypercholesterolemia who were statin-intolerant and had established cardiovascular disease or were at high cardiovascular risk demonstrated that bempedoic acid not only reduced and sustained reductions in LDL-C levels but also significantly reduced the risk of cardiovascular events, the primary endpoint of the study.

1.  はじめに

脂質異常症は,わが国のみならず世界的に高い罹患率を示す疾患であり,その適切な管理は動脈硬化性心血管疾患の一次予防および二次予防において極めて重要である.特にLDLコレステロール(LDL-C)の低下は,数多くの臨床研究で心血管イベントリスクの減少と強く関連することが示されており,薬物療法の主軸としてスタチンが長年にわたり用いられてきた1,2

しかしながら,スタチン治療を行っても十分なLDL-C低下が得られない患者や,筋症状を含む副作用のため治療継続が困難となる患者が一定数存在する3.すなわち,最大耐用量でもLDL-C管理目標値未達の症例(スタチン効果不十分)や,副作用により必要量の投与が困難な症例(スタチン不耐)への対策が課題となっている.そのため,スタチンとは異なる作用点を有し,スタチンと併用可能な新規脂質低下薬の必要性が指摘されている4

ベムペド酸は,このような臨床的ニーズを背景として開発された新規コレステロール低下薬であり,従来薬とは異なる脂質合成経路の上流を標的とする点に特徴がある.本剤は経口投与可能なプロドラッグであり,肝臓で活性化され骨格筋では活性化されないという特有の性質を有するため,筋障害関連副作用の軽減が期待される.また,ベムペド酸はATPクエン酸リアーゼ(ATP citrate lyase:ACL)という脂質合成経路の酵素を阻害することで作用を発揮し,スタチンとの併用時には相補的効果が期待される.

ベムペド酸は米国Esperion Therapeutics社(エスペリオン社)により高コレステロール血症治療薬として開発され,米国・欧州をはじめとする複数地域で既に上市されている.大塚製薬株式会社はエスペリオン社と提携し,国内での臨床開発を実施した.その結果に基づき,「ネクセトール®錠180 mg」として医薬品製造販売承認申請が行われ,2025年9月に「高コレステロール血症,家族性高コレステロール血症」の効能・効果で承認を取得し,同年11月より国内販売が開始された.

本稿では,ベムペド酸の薬理学的特徴および国内外の臨床試験成績について概説する.

2.  ベムペド酸の薬理作用

1) In vitro/in vivoにおけるACL阻害作用

 (1)肝臓における活性化機序と活性体のACL阻害作用5)

ATPクエン酸リアーゼ(ATP citrate lyase:ACL)は,クエン酸からアセチルCoAを生成する酵素であり,コレステロールおよび脂肪酸のde novo合成を制御する中心的役割を担っている.本検討では,ベムペド酸の活性化機序と,活性代謝物によるACL阻害作用について詳細に評価した.

ベムペド酸は肝細胞内において,very long-chain acyl-CoA synthetase 1(ACSVL1)によりCoAエステル体へと変換される.ベムペド酸およびそのCoAエステル体を用いてACL活性に及ぼす影響を検討したところ,活性体であるベムペド酸CoAエステル体はヒトACLに対して明確な競合阻害を示し,その阻害定数(Ki)は2 μMであった(図1A, C).一方,ベムペド酸自体にはACL阻害作用は認められなかった(図1B).

図1 ベムペド酸CoAエステル体,及びベムペド酸のヒトACL活性に及ぼす影響(文献5より転載)

ヒトACL組み換えタンパク質を補因子,ベムペド酸CoAエステル体(パネルA)又はベムペド酸(パネルB)の存在下で反応させ,[14C]クエン酸の[14C]アセチルCoAへの変換を測定した.ベムペド酸CoAエステル体は,CoASHと競合するヒトACL組み換えタンパク質に対する競合的阻害薬である(パネルC).

さらに,ACSVL1をsiRNAにより抑制するとCoAエステル体への変換が著明に低下し,脂質合成阻害作用も消失した.このことから,ベムペド酸の薬理作用は肝臓でのACSVL1依存的な活性化(CoAエステル体生成)を必須とし,活性体がACLを直接阻害することで発揮されることが示された.

 (2)In vitro/in vivoにおける脂質合成速度と代謝中間体に対する作用5,6)

ACLは脂肪酸およびコレステロール合成に必要なアセチルCoAを供給するため,その阻害は脂質合成速度の低下および下流中間代謝物の減少をもたらすと考えられる.これを検証するため,ラットおよびヒト肝細胞でベムペド酸の作用を評価した.

ラット肝細胞において,ベムペド酸処置により[14C]酢酸のステロール合成(non SAP)および脂肪酸合成(SAP)がいずれも低下した(図2).さらに,[3H]H2O,[14C]ピルビン酸,[14C]グルコースを用いた他の評価系でも同様の抑制が確認された.IC50はnon SAP,SAPともに2~10 μMの範囲であり,ヒト肝細胞でも同様の傾向が得られた.

図2 ラット肝細胞におけるベムペド酸のSAP(丸)及びnon SAP(四角)脂質合成に及ぼす影響(文献6より転載)

ベムペド酸は,単離ラット肝細胞でSAP(丸)及びnon SAP(四角)脂肪酸の合成を阻害した.各データポイントは,同一実験内における3ウェル間の相対的な平均値[対照に対する割合(%)]を示す.

代謝中間体の解析では,ベムペド酸はACL下流の主要中間代謝物であるアセチルCoA,マロニルCoA,HMG-CoAをいずれも低下させた(図3A).一方,ACLの基質であるクエン酸は一過性の増加を示した(図3A).ベムペド酸はHMG-CoA還元酵素やアセチルCoAカルボキシラーゼに対して直接の阻害作用を示さないため,これらの変化はACL阻害に基づくものと判断された.

図3 ラット肝細胞,および正常ラットにおけるベムペド酸の脂質代謝中間代謝物に及ぼす影響(文献5より転載)

パネルA:ラット初代肝細胞を所定濃度のベムペド酸で2時間処理し,細胞内のCoASH,マロニルCoA,HMG-CoA,アセチルCoA,及びクエン酸をLC MS/MSで測定した.パネルB:正常な絶食下/再摂餌下Wistarラットにベムペド酸30 mg/kgを単回投与した.投与2時間後の凍結固定肝臓試料中のアセチルCoA,マロニルCoA,HMG-CoA,及びクエン酸を測定し,ng/g肝臓(湿重量)で示した.平均値±標準誤差(n=3~5).

さらにラットにおいても,ベムペド酸投与により肝臓中アセチルCoAなどの下流代謝物の減少と,クエン酸の上昇が再現され,in vitroで観察された代謝変動がin vivoでも確認された(図3B).

2) 脂質合成阻害作用とLDL受容体誘導作用5

血中LDL-C濃度は,主として肝臓から分泌されるVLDL粒子(LDLの前駆体)量と,肝臓に発現するLDL受容体(LDLR)を介したLDLクリアランス速度により規定される.ヒト初代肝細胞を用いた試験において,ベムペド酸はVLDL分泌に直接的な作用を及ぼさないことが示唆されている.

そこでLDLR制御作用に着目して評価した結果,ベムペド酸(100 μM)はDiI LDLを用いた取り込みアッセイにおいてLDL取り込み(LDLR活性)を2倍以上増加させた(図4A).さらに,ベムペド酸はスタチンと同様にSREBP2経路を介した転写応答を誘導し,HMGR,PCSK9,およびLDLRの発現を増加させた(図4B).ACLに対するsiRNAを用いた検討においても同様の結果が得られ,これらの作用がACL阻害に起因することが支持された.

図4 ヒト肝細胞におけるベムペド酸のLDLR活性,およびコレステロール制御遺伝子に及ぼす影響(文献5より転載)

パネルA:ヒト初代肝細胞をベムペド酸(100 μM)で20時間処理し,LDLR特異的DiI LDLの取り込みを測定した.平均値±標準誤差(n=6).Studentのt検定によるVehicle群との比較でのP<0.05.パネルB:ヒト初代肝細胞をベムペド酸又はアトルバスタチンで18時間処理し,RT-qPCRを用いてHMGR,SREBP2,PCSK9,及びLDLRの相対的なmRNA量を測定した.平均値±標準誤差(ドナー2例(各2回)).

以上の結果から,ベムペド酸はACL阻害によるコレステロール合成低下を起点として,SREBP2の活性化を介したLDLR発現の増加を引き起こし,LDLクリアランスを促進することにより血中LDL-C濃度を低下させることが示唆された.

3) 骨格筋における作用7

スタチンは高いLDL-C低下作用を有する一方で,筋痛や筋力低下などの筋障害関連副作用を生じ得ることが知られている.これは,スタチンが骨格筋でもHMG-CoA還元酵素を直接阻害し,コレステロール生合成やミトコンドリア機能障害を介して筋機能に影響を及ぼすためと考えられている.

一方,ベムペド酸は薬理活性の発現にACSVL1による活性化を必要とするが,ACSVL1は主として肝臓に発現し,骨格筋ではほとんど発現しない.そのため,ベムペド酸は肝臓においては活性型へと変換され脂質合成阻害作用を示す一方,骨格筋では活性化されず,筋障害関連副作用を引き起こしにくいと考えられる.

ヒト初代筋管細胞を用いた試験では,スタチンはコレステロール合成を強力に抑制し,48時間処置により筋管萎縮など典型的な筋障害関連副作用を示した(図5).一方,ベムペド酸はコレステロール合成を抑制せず,細胞形態や生存性にも影響を与えなかった(図5).この結果は筋管細胞でACSVL1発現が認められないことと一致する.

図5 ヒト骨格筋におけるベムペド酸やスタチンのコレステロール合成,及び筋毒性に及ぼす影響(文献7より改変)

パネルA:シンバスタチン(10 μM),アトルバスタチン(10 μM),及びベムペド酸(100 μM)のコレステロール合成に対する作用[溶媒対照に対する割合(%)].パネルBは筋管を0.1~100 μMのシンバスタチン,アトルバスタチン,又はベムペド酸で48時間処理し,生存率/細胞毒性をGF-AFC/bis-AAF-R110切断により測定した.

以上より,ベムペド酸は肝臓で選択的に活性化され,骨格筋では活性化されないため,スタチンとは異なり筋障害関連副作用を示す可能性が低いことが示唆された.

4) 脂質異常症に関連する薬効薬理試験

 (1)食事誘発モデルハムスター8)

ベムペド酸が食事誘発性脂質異常症に及ぼす影響を明らかにするため,高脂肪・高コレステロール(HFHC)食を負荷した雄Golden Syrianハムスターを用いて評価を行った.HFHC食により上昇するLDL-Cに対して,ベムペド酸は用量依存的な低下作用を示し,特に高用量(30 mg/kg/日)ではLDL-Cを約71%低下させた(図6).

図6 HFHC食を摂取させたハムスターにおけるベムペド酸のLDL-Cに及ぼす影響(文献8より転載)

ハムスターにフェノフィブラート又はベムペド酸を3週間投与後に18時間絶食させてから血液を採取し,高速タンパク質液体クロマトグラフィーで血漿中のリポタンパク質を分画し,リポタンパク質のコレステロール値を測定した.溶媒対照との比較での統計学的有意差(P<0.05)を示す.

さらに,肝臓内脂質に対しても明確な改善作用が認められ,肝トリグリセリド,コレステロールエステル,遊離コレステロールの有意な低下が確認された.これらの肝内脂質減少は血漿脂質の低下とも一致し,HFHC食により誘導される脂質蓄積を多面的に改善したことが示された.

 (2)動脈硬化モデルマウス9)

ApoEノックアウトマウスは,リポタンパク質代謝異常により自然発症的に動脈硬化を呈し,抗動脈硬化薬の評価に広く用いられる.本研究では,HFHC食を負荷したApoEノックアウトマウスを用いて,ベムペド酸の動脈硬化に対する作用を評価した.

HFHC食負荷によりLDL-Cが顕著に上昇し,大動脈に広範なアテローム形成が認められた.一方,ベムペド酸投与群では,これらの変化が明確に抑制されていた(図7A).さらに,血中LDL-C濃度および肝臓におけるコレステロール蓄積の低下に加え,大動脈組織中のコレステロール量も有意に減少していた(図7B~D).加えて,全身性炎症の指標である血漿SAAが30%以上低下しており(図7E),HFHC食によって惹起される慢性炎症反応が緩和されたことが示唆された.以上より,ベムペド酸が脂質代謝改善のみならず,炎症経路にも作用し,動脈硬化進展を抑制することが示された.

図7 ApoEノックアウトマウスの動脈硬化病変(A),血中LDL-C(B),肝臓中コレステロール(C),大動脈中コレステロール(D),及び血漿中SAA(E)に及ぼす影響(文献9より改変)

ApoEノックアウトマウスにHFHC食を摂取させ,ベムペド酸30 mg/kg/日を12週間投与した.パネルAは対照及びベムペド酸を投与したマウスから採取した大動脈洞切片をヘマトキシリン・エオシン染色し,アテローム性動脈硬化性病変サイズを測定した.パネルBは血中LDL-C,パネルCは肝臓中コレステロール量,パネルDは大動脈全体の総コレステロール量,パネルEは血漿中のSAA量を示す.平均値±標準偏差(n=4~10).1元配置分散分析(Bonferroni補正);及び#P<0.05.

 (3)動脈硬化モデルミニブタ10)

ヒトに近い脂質代謝・動脈硬化病態を示すLDLRヘテロノックアウトミニブタを用いて,ベムペド酸の長期投与による薬効を評価した.

LDLRヘテロノックアウトミニブタにHFHC食を摂取させ,プラセボまたはベムペド酸120 mg/日,240 mg/日を23週間投与したところ,プラセボ群ではLDL-Cの高値が持続したのに対し,ベムペド酸群では用量依存的なLDL-C低下作用が認められた(図8A).特に長期投与下では,ベースライン比で30~40%,プラセボ比では50%を超える明確なLDL-C低下が確認された.また,内因性コレステロール合成の指標であるラソステロール値の持続的な低下も確認された.

図8 LDLRヘテロノックアウトミニブタにおけるベムペド酸の血中LDL-C,及び血管動脈硬化病変に及ぼす影響(文献10より改変)

LDLRヘテロノックアウトミニブタにHFHC食を摂取させ,ベムペド酸120又は240 mg/日を160日(パネルA),または23週間(パネルB,C)投与した.パネルAはLDL-C濃度の変化率(%),パネルBはアテローム性動脈硬化病変で覆われた大動脈総表面積を大動脈総面積に対する割合(%),パネルCは隆起病変で覆われた表面積を腹部大動脈総面積に対する割合(%)を示す.平均値±標準誤差(n=3~4)Studentのt検定によるVehicle群との比較でP<0.05.

血管病変の評価においては,ベムペド酸投与群で大動脈アテローム性病変の縮小が認められた.120 mg群および240 mg群を統合した解析では,大動脈全体の染色病変総面積および腹部大動脈における隆起病変面積が,いずれも約58%減少していた(図8B,C).以上より,ベムペド酸はLDL-C低下作用とともに,長期投与下においても動脈硬化病変の進展を一貫して抑制する作用を示すことが確認された.

 (4)総括

脂質異常症および動脈硬化モデルでの検討により,ベムペド酸は食事誘発性脂質異常症モデルハムスターでのLDL-Cの顕著な低下と肝内脂質蓄積改善,ApoEノックアウトマウスおよびLDLRヘテロノックアウトミニブタにおける脂質代謝改善と動脈硬化病変形成の抑制といった,複数モデルにわたる一貫した薬理作用を示した.

これらの結果は,ベムペド酸が脂質低下作用,肝臓および血管への脂質蓄積抑制,全身性炎症改善,動脈硬化進展抑制という多面的かつ統合的作用を有することを示しており,脂質異常症から動脈硬化に至る幅広い病態に対して,有用な治療選択肢となり得ることが明らかとなった.

3.  薬物動態

1) ベムペド酸の基本的な薬物動態特性

日本人健康成人にベムペド酸180 mgを空腹時に単回経口投与した時,ベムペド酸は投与後約2時間で最高血漿中濃度に到達し,投与後速やかに吸収された.消失半減期は約20時間であった.1日1回反復経口投与ではベムペド酸血漿中濃度の累積が認められた.海外の反復投与試験の結果に基づくと,投与開始から8日後には定常状態に到達していると考えられた.日本人健康成人にベムペド酸180 mgを1日1回14日間反復経口投与した時,反復投与1日目に対する14日目のAUCの累積係数は2.35であった.食事は,ベムペド酸のCmaxをわずかに低下させたが,AUCには影響を与えなかった.

ベムペド酸のヒト血漿タンパク質結合率はin vitro試験において99.3%と高値であった.In vitro代謝試験からは,ベムペド酸の代謝へのCYPの寄与は小さく,ベムペド酸は主にNADPH依存性の酸化及びUGT2B7によるグルクロン酸抱合により代謝されることが示された.

14C-ベムペド酸を用いたヒトマスバランス試験では,投与放射能量の62.1%が尿中,25.4%が糞便中から回収された.未変化体としての尿中排泄は投与量の5%未満であったことから,吸収されたベムペド酸は主として代謝を介して消失すると考えられた.

2) 腎機能障害がベムペド酸の薬物動態に及ぼす影響

軽度(eGFR:60~89 mL/min/1.73 m2),中等度(eGFR:30超~59 mL/min/1.73 m2)及び重度(eGFR:30 mL/min/1.73 m2以下)の腎機能障害患者にベムペド酸180 mgを単回経口投与した時,Cmaxはいずれの群でも腎機能正常被験者と大きな違いはなかった.一方,AUCは軽度で1.18倍,中等度で1.76倍,重度で1.90倍に増加した.

透析中の末期腎不全患者においても,Cmaxは腎機能正常被験者と比較して大きな違いはなかったが,AUCは透析前投与時で1.47倍,透析後投与時で1.75倍に増加した.

これらの結果より,腎機能低下に伴いベムペド酸のAUCは増加することが示された.なお,高LDLコレステロール血症患者を対象とした有効性及び安全性を評価する臨床試験には,腎機能正常患者に加え軽度及び中等度の腎機能障害患者が含まれたが,中等度までの腎機能低下時に,腎機能障害の程度に依存した有害事象全般の発現割合の上昇傾向は認められなかった.

3) 肝機能障害がベムペド酸の薬物動態に及ぼす影響

軽度(Child–Pugh A)及び中等度(Child–Pugh B)の肝機能障害患者にベムペド酸180 mgを単回経口投与した時,血漿中総ベムペド酸(血漿タンパク質結合形+非結合形)のCmax及びAUCは,肝機能正常被験者と比較して0.8~0.9倍であり,増加は認められなかった.

一方,非結合形ベムペド酸のCmax及びAUCは,中等度肝機能障害患者においてそれぞれ約1.4倍及び約1.3倍であったことから,肝機能障害はベムペド酸の非結合形曝露量に影響を及ぼす可能性が考えられた.重度(Child–Pugh C)の肝機能障害患者における薬物動態は検討されていないが,非結合形曝露量が上昇するおそれがあることに注意が必要である.

4) スタチンの薬物動態に及ぼす影響

ベムペド酸とスタチンとの薬物相互作用は,健康成人及び高コレステロール血症患者を対象とした複数の臨床試験において検討されている.アトルバスタチン,ロスバスタチン,シンバスタチン,及びプラバスタチンとの併用により,スタチン単独投与時と比較して各スタチン及びその活性代謝物のCmax及びAUCの上昇が認められた(表1).

表1アトルバスタチン,ロスバスタチン,シンバスタチン,及びプラバスタチンの薬物動態に対する定常状態におけるベムペド酸の影響の要約

試験番号 ベムペド酸
の用量a
スタチンの
種類及び用量
分析物 Cmaxの幾何平均比 AUCbの幾何平均比
1002-007 120 mg アトルバスタチン10 mg
(定常状態)
アトルバスタチン 1.647 1.594
o-ヒドロキシアトルバスタチン 1.611 1.546
p-ヒドロキシアトルバスタチン 2.349 2.337
240 mg アトルバスタチン10 mg
(定常状態)
アトルバスタチン 1.685 1.767
o-ヒドロキシアトルバスタチン 1.814 1.755
p-ヒドロキシアトルバスタチン 3.353 3.287
1002-012 240 mg シンバスタチン20 mg シンバスタチン 0.987 1.289
シンバスタチン酸 1.430 1.911
プラバスタチン40 mg プラバスタチン 2.037 1.985
ロスバスタチン10 mg ロスバスタチン 2.077 1.690
1002-035 180 mg アトルバスタチン80 mg
(定常状態)
アトルバスタチン 0.994 1.29
o-ヒドロキシアトルバスタチン 1.03 1.22
p-ヒドロキシアトルバスタチン 1.43 2.03
1002-037 180 mg アトルバスタチン80 mg アトルバスタチン 1.438 1.439
o-ヒドロキシアトルバスタチン 1.527 1.458
p-ヒドロキシアトルバスタチン 2.901 2.241
シンバスタチン40 mg シンバスタチン 0.998 1.198
シンバスタチン酸 1.518 1.957
プラバスタチン80 mg プラバスタチン 1.360 1.461
ロスバスタチン40 mg ロスバスタチン 1.682 1.454

aベムペド酸の承認された用量は180 mgである.

b単回投与時の評価(1002-012及び1002-037試験)ではAUCinf,反復投与定常状態時の評価ではAUC24を表す.

臨床試験においてベムペド酸とスタチンを併用した際に筋障害関連の有害事象の発現状況に明らかな影響は認められていないものの,薬物動態学的相互作用としてスタチン曝露量の増加が確認されていることから,併用時には筋障害等の有害事象の発現に注意が必要である.

4.  ベムペド酸の国内及び海外臨床試験成績

1) 国内第Ⅲ相試験

 (1)検証試験11)

高LDLコレステロール血症に対する治療を受けているものの,コントロールが不十分で脂質管理目標値を達成できていない高LDLコレステロール血症患者(スタチン効果不十分(スタチン及び必要な患者では他の薬剤との併用療法を実施してもLDLコレステロールのコントロールが不十分)又はスタチン不耐(スタチン服用により安全性上の問題が生じ,服用中止又は減量後に問題が解消された経験を有する))96例を対象として,ベムペド酸180 mg /日を12週間投与し,プラセボに対する優越性を検証した.

有効性

主要評価項目であるLDL-CのベースラインからWeek 12までの変化率は,ベムペド酸群で-25.25%(最小二乗平均値,以下同様),プラセボ群で-3.46%であり,プラセボ群と比較してベムペド酸群で統計学的に有意なLDL-Cの低下が認められた[プラセボ群との群間差(95%信頼区間)P値,-21.78%(-26.71%,-16.85%)P<0.001,以下同様](図9).

図9 LDL-Cのベースラインからの変化率の推移(FAS):検証試験(346-102-00002)(文献11より転載)

詳細は本文参照.

スタチン反応別のLDL-CのベースラインからWeek 12までの変化率は,スタチン効果不十分の集団でベムペド酸群-23.29%,プラセボ群-3.12%,スタチン不耐の集団でベムペド酸群-30.41%,プラセボ群-4.65%であり,いずれの集団でもプラセボ群と比較してベムペド酸群でLDL-Cの低下が認められた[スタチン効果不十分:-20.17%(-25.82%,-14.53%)P<0.001,スタチン不耐:-25.77%(-36.61%,-14.92%)P<0.001].

Week 12のLDL-Cがリスク区分別の脂質管理目標値(治験立案時の基準である動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版を使用)に達した被験者の割合は,ベムペド酸群で62.5%(30/48例)であり,プラセボ群8.3%(4/48例)と比較して高かった[プラセボ群との群間差(95%信頼区間)P値,54.2%(38.4%,69.9%)P<0.001,以下同様].また,スタチン反応別のWeek 12のLDL-Cがリスク区分別の脂質管理目標値に達した被験者の割合は,スタチン効果不十分の集団でベムペド酸群63.9%(23/36例),プラセボ群8.3%(3/36例),スタチン不耐の集団でベムペド酸群58.3%(7/12例),プラセボ群8.3%(1/12例)であり,いずれの集団でもプラセボ群と比較してベムペド酸群で高かった[スタチン効果不十分:55.6%(35.3%,72.5%)P<0.001,スタチン不耐:50.0%(12.1%,79.1%)P=0.027].

non-HDL-C,TC,apo B,hs-CRP,及びHbA1cのベースラインからWeek 12までの変化率は,non-HDL-Cでは,ベムペド酸群で-20.33%(最小二乗平均値,以下同様),プラセボ群で-2.76%[プラセボ群との群間差(95%信頼区間)P値,-17.57%(-22.03%,-13.12%)P<0.001,以下同様],TCでは,ベムペド酸群で-16.36%,プラセボ群で-2.23%[-14.13%(-17.79%,-10.47%)P<0.001],apo Bでは,ベムペド酸群で-18.10%,プラセボ群で-0.67%[-17.43%(-21.97%,-12.89%)P<0.001],hs-CRPでは,ベムペド酸群で15.40%,プラセボ群で119.60%[-104.20%(-273.01%,64.60%)P=0.223],HbA1cでは,ベムペド酸群で-0.87%,プラセボ群で0.16%[-1.03%(-2.56%,0.50%)P=0.183]であった.プラセボ群と比較してベムペド酸群ではnon-HDL-C,TC,及びApo Bの低下が認められた.感度分析として行った正規性を仮定していないロバスト回帰分析の結果,hs-CRP以外の項目は正規性を仮定した結果と同様の傾向であった.hs-CRPでは,正規性を仮定した結果と異なる傾向を示した[プラセボ群との群間差(95%信頼区間),-26.57%(-47.77%,-5.37%)].なお,ベースラインからWeek 12までのhs-CRPの変化率の中央値は,ベムペド酸群-21.04%,プラセボ群14.81%であった.

安全性

有害事象の発現割合は,ベムペド酸群56.3%(27/48例),プラセボ群50.0%(24/48例)であった.ベムペド酸群で5%以上に認められた有害事象は,上咽頭炎(ベムペド酸群:14.6%,7例,プラセボ群:10.4%,5例),関節痛(ベムペド酸群:6.3%,3例,プラセボ群:0%,0例),背部痛(ベムペド酸群:6.3%,3例,プラセボ群:2.1%,1例)であった.副作用の発現割合は,ベムペド酸群で6.3%(3/48例),プラセボ群で4.2%(2/48例)であった.本試験において,死亡及び重篤な有害事象はいずれの群においても認められなかった.投与中止に至った有害事象は,ベムペド酸群で1例1件(関節痛),プラセボ群で1例1件(肝機能異常)に認められた.これらの事象はいずれも治験薬との関連性があると判断された.

ベムペド酸は,尿酸の輸送に関与すると報告されている腎尿細管のOAT2を阻害するため,尿酸値を上昇させる可能性がある.ベムペド酸の安全性評価のために注目すべき有害事象として尿酸関連有害事象を設定し評価したところ,発現割合はベムペド酸群2.1%(1例),プラセボ群0%(0例)であった.スタチンによる治療に関連すると考えられる既知の事象として筋障害関連有害事象を評価したところ,筋障害関連でベムペド酸群2.1%(1例),プラセボ群4.2%(2例)であった.また,注目すべき有害事象として評価した,肝機能障害関連有害事象の発現割合は,ベムペド酸群2.1%(1例),プラセボ群2.1%(1例),腎機能障害関連有害事象は発現しなかった.

以上より,ベムペド酸180 mg/日を12週間投与した際のプラセボ群に対するベムペド酸群の安全性に大きな問題はなく,忍容性は良好であった.

 (2)長期投与試験12)

高LDLコレステロール血症に対する治療を受けているものの,コントロールが不十分で脂質管理目標値を達成できていない高LDLコレステロール血症患者(スタチン効果不十分(スタチン及び必要な患者では他の薬剤との併用療法を実施してもLDLコレステロールのコントロールが不十分)及びスタチンによる治療が困難な患者(スタチン服用により安全性上の問題が生じ,その後服用中止又は減量後に問題が解消された経験を有する,もしくはスタチンの服用又は増量に伴い安全性上の問題が生じる懸念を有する患者))130例を対象に,ベムペド酸180 mg/日を52週間投与した際の安全性及び有効性を評価した.

有効性

LDL-Cのベースラインからの変化率は,Week 52で-21.55%であった.LDL-Cは投与開始後最初の評価時点であるWeek 4から低下し,その低下は最終評価時点であるWeek 52まで持続した.また,スタチン反応別のいずれの集団でもLDL-Cは低下した.

Week 52のLDL-Cがリスク区分別の脂質管理目標値(治験立案時の基準である動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版を使用)に達した被験者の割合は65.6%(80/122例)であった.non-HDL-C,TC,apo B,hs-CRP,及びHbA1cのベースラインからの変化率は,Week 52(122例)でnon-HDL-C -19.36%,TC -16.10%,apo B -17.00%,hsCRP -14.39%,HbA1c 0.24%であった.non-HDL-C,TC,及びapo Bは,Week 52までベースラインから低下した.

安全性

有害事象及び副作用の発現割合は,83.8%(109例)及び14.6%(19例)であった.死亡は認められなかった.重篤な有害事象は6.2%(8例)であり,重篤な副作用は認められなかった.投与中止に至った有害事象は4.6%(6例)に発現した.5%以上に発現した有害事象は,上咽頭炎(22.3%,29例),COVID-19(12.3%,16例),背部痛(8.5%,11例),高尿酸血症(6.9%,9例),及び関節痛(6.9%,9例)などであった.発現した有害事象の重症度は,すべて軽度又は中等度であった.尿酸値上昇関連有害事象は,12.3%(16/130例)に発現した.発現した事象の内訳は,高尿酸血症(6.9%,9例),血中尿酸増加(5.4%,7例),及び痛風(1.5%,2例)で,重篤又は高度と判定された事象はなかった.中等度の痛風1例(0.8%)が投与中止に至ったが,転帰は回復であった.筋障害関連有害事象の発現割合は,7.7%(10/130例)であった.最も発現割合が高かった事象は,血中クレアチンホスホキナーゼ増加(2.3%,3例)であった.高度及び投与中止に至った事象はなかった.軽度の筋力低下1例が重篤と判断されたが,転帰は回復であった.肝機能障害関連有害事象の発現割合は,4.6%(6/130例)であった.最も発現割合が高かった事象は,肝機能異常(2.3%,3例)で,重篤又は高度と判定された事象はなかった.投与中止に至った事象は,肝機能異常及び肝機能検査値上昇が各1例(各0.8%)であった.腎機能障害関連有害事象は発現しなかった.

以上より,高LDLコレステロール血症患者を対象に,ベムペド酸180 mg/日を52週間投与した際の安全性に問題はなく,忍容性は良好であった.

2) 海外で実施した臨床試験

 (1)海外第Ⅲ相試験

海外第Ⅲ相試験は,4つのPivotal試験で構成され,うち2試験はHigh CV Risk/Long-Term試験,残りの2試験はNo or Low-Dose Statin試験である.High-Risk/Long-Term統合をスタチン効果不十分患者,No or Low-Dose Statin統合をスタチン不耐患者での成績とみなした.なお,安全性は統合解析を行い,High CV Risk/Long-Term試験とNo or Low-Dose Statin試験の結果として示している.

①High CV Risk/Long-Term試験13,14

有効性

1. 高コレステロール血症治療薬(最大耐用量のスタチン及び/又は必要な患者では他の高コレステロール血症治療薬の投与)でコントロールが不十分な高LDLコレステロール血症患者779例を対象に,ベムペド酸180 mg/日を投与した際の有効性及び長期投与時の安全性を評価した.

主要評価項目であるLDL-CのベースラインからWeek 12までの変化率は,ベムペド酸群で-15.07%(最小二乗平均値,以下同様),プラセボ群で2.35%であり,プラセボ群と比較してベムペド酸群で統計学的に有意なLDL-Cの低下が認められた[プラセボ群との群間差(95%信頼区間)P値,-17.42%(-20.951%,-13.896%)P<0.001].

2. 高コレステロール血症治療薬(最大耐用量のスタチン及び必要な患者では他の高コレステロール血症治療薬の投与)でコントロールが不十分な高LDLコレステロール血症患者2,230例を対象に,ベムペド酸180 mg/日を投与した際の長期安全性及び忍容性を評価した.

有効性主要評価項目であるLDL-CのベースラインからWeek 12までの変化率は,ベムペド酸群で-16.5%(最小二乗平均値,以下同様),プラセボ群で1.6%であり,プラセボ群と比較してベムペド酸群で統計学的に有意なLDL-Cの低下が認められた[プラセボ群との群間差(95%信頼区間)P値,-18.1%(-20.0%,-16.1%)P<0.001].

安全性

High-Risk/Long-Term統合での有害事象の発現割合は,投与群間で同程度であり(ベムペド酸180 mg群76.3%,1,533/2,009例;プラセボ群76.7%,766/999例,以下同順),プラセボ群と比較してベムペド酸180 mg群で発現割合が2%を超えて高かった有害事象はなかった.High-Risk/Long-Term統合のベムペド酸180 mg群で2%以上に発現し,かつプラセボ群と比較して発現割合が1%以上高かった有害事象は,筋痙縮,背部痛,四肢痛であった.副作用では,ベムペド酸180 mg群でプラセボ群より発現割合が2%以上高い又はベムペド酸180 mg群で2%以上に発現かつプラセボ群より発現割合が1%以上高かった事象はなかった.死亡はすべてHigh-Risk/Long-Term統合で発現した.いずれの被験者も,関連する疾患の既往症や合併症及びリスク因子を有していた.重篤な有害事象の割合は,ベムペド酸180 mg群及びプラセボ群で同程度であり,投与群間で発現割合に1%以上の差がある事象はなかった.投与中止に至った有害事象のうち,投与群間で発現割合に1%以上の差があった事象はなく,最も発現割合が高かったのは,いずれの投与群でも筋肉痛であった(1.1%,23/2,009例;1.3%,13/999例).

②No or Low-Dose Statin試験15,16

有効性

1. スタチン不耐の高LDLコレステロール血症患者345例を対象に,ベムペド酸180 mg/日を投与した際の有効性及び安全性を評価した.

主要評価項目であるLDL-CのベースラインからWeek 12までの変化率は,ベムペド酸群で-22.58%(最小二乗平均値,以下同様),プラセボ群で-1.17%であり,プラセボ群と比較してベムペド酸群で統計学的に有意なLDL-Cの低下が認められた[プラセボ群との群間差(95%信頼区間)P値,-21.41%(-25.132%,-17.697%)P<0.001].

2. スタチン不耐の高LDLコレステロール血症患者269例を対象に,エゼチミブ併用下でベムペド酸180 mg/日を12週間投与した際の有効性及び安全性を評価した.

主要評価項目であるLDL-CのベースラインからWeek 12までの変化率は,ベムペド酸群で-23.46%(最小二乗平均値,以下同様),プラセボ群で4.99%であり,プラセボ群と比較してベムペド酸群で統計学的に有意なLDL-C低下が認められた[プラセボ群との群間差(95%信頼区間)P値,-28.45%(-34.376%,-22.531%)P<0.001].

安全性

No or Low-Dose Statin統合での有害事象は,ベムペド酸180 mg群415例の57.3%(238例)及びプラセボ群198例の51.5%(102例)に発現した.プラセボ群と比較して発現割合が2%を超えて高かった有害事象は,血中尿酸増加(ベムペド酸180 mg群:4.3%,18例;プラセボ群:1.0%,2例,以下同順)であった.No or Low-Dose Statin統合のベムペド酸180 mg群で2%以上に発現し,かつプラセボ群と比較して1%以上高い発現割合であった有害事象は,関節痛,浮動性めまい,四肢痛,高血圧,血中尿酸増加,副鼻腔炎であった.副作用では,ベムペド酸180 mg群で2%以上に発現かつプラセボ群より発現割合が1%以上高かった事象は血中尿酸増加(2.9%,12例;0.5%,1例)のみであった.有害事象の重症度の割合は投与群間で同様であった(中等度:24.3%,101例;23.7%,47例,高度:4.6%,19例;3.5%,7例).No or Low-Dose Statin統合では死亡は認められなかった.重篤な有害事象の割合は,ベムペド酸180 mg群及びプラセボ群で同程度であり,各投与群で1%を超えて発現した事象はなかった.投与中止に至った有害事象のうち,最も発現割合が高かったのは,いずれの投与群でも筋肉痛であった(1.9%,8例;4.0%,8例).ベムペド酸180 mg群でプラセボ群と比較して1%以上発現割合が高かった事象は,筋痙縮(1.7%,7例;0%,0例)及び四肢痛(1.0%,4例;0%,0例)であった.

 (2)心血管イベント抑制試験17)

心血管疾患を有する又はそのリスクが高いスタチン不耐の高コレステロール血症患者13,970例を対象に,ベムペド酸180 mg/日を投与した際のMACE(心血管死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中,又は冠動脈血行再建術の複合エンドポイント)リスク軽減効果をプラセボとの比較により評価した.

主要評価項目はMACE-4(心血管死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中,又は冠動脈血行再建術の複合エンドポイント)の初発までの時間とし,主な副次的評価項目は,MACE-3(心血管死,非致死性心筋梗塞,又は非致死性脳卒中の複合エンドポイント)の初発までの時間,致死性及び非致死性心筋梗塞の初発までの時間,冠動脈血行再建術の初回実施までの時間,致死性及び非致死性脳卒中の初発までの時間,心血管死までの時間,及び死亡までの時間とした.

主要評価項目であるMACE-4が試験期間中に1度でも発現した被験者の割合は,ベムペド酸群で11.7%(819/6,992例),プラセボ群で13.3%(927/6,978例)であった.プラセボ群に対するベムペド酸群のMACE-4の初発リスクのハザード比は0.87[(95%信頼区間)P値(以下同様),(0.79,0.96)P=0.0037](図10A)となり,ベムペド酸の投与により統計学的に有意なリスクの減少が認められた.

図10 心血管イベントの累積発生率(文献17より転載)

P値はログランク検定を用いて算出.A:主要評価項目である主要心血管イベント(MACE)の累積発生率.B:心血管死,非致死性心筋梗塞,または非致死性脳卒中からなる3項目のMACE(第1主要副次評価項目)の累積発生率.C:致死性または非致死性心筋梗塞(第2主要副次評価項目)の累積発生率.D:冠動脈血行再建(第3主要副次評価項目)の累積発生率.詳細は本文参照.

主な副次的評価項目のうち,プラセボ群に対するベムペド酸群のMACE-3,致死性及び非致死性心筋梗塞,及び冠動脈血行再建術の初発リスクのハザード比は,それぞれ0.85[(0.76,0.96)P=0.0058](図10B),0.77[(0.66,0.91)P=0.0016](図10C),及び0.81[(0.72,0.92)P=0.0013](図10D)となり,ベムペド酸の投与により有意なリスクの減少が認められた.致死性及び非致死性脳卒中の初発までの時間ではプラセボ群とベムペド酸群の間に有意差は認められなかった.心血管死までの時間及び死亡までの時間については,治療効果は認められなかった.また,LDL-Cのベースラインから初回評価時期であるMonth 3までの変化率は,ベムペド酸群で-22.81%(平均値,以下同様),プラセボ群で-0.05%であり,Month 3よりLDL-Cの低下が認められた[最小二乗平均値の差(95%信頼区間),-22.74%(-23.49%,-22.00%)].ベムペド酸群のLDL-Cの値は投与期間を通して低かった.

有害事象の発現割合は,ベムペド酸群7,001例で86.3%(6,040例),プラセボ群6,964例で85.0%(5,919例),副作用の発現割合は,ベムペド酸群で20.5%(1438例),プラセボ群で17.0%(1,186例)であった.重篤な有害事象の発現割合は,ベムペド酸群で25.2%(1,767例)及びプラセボ群で24.9%(1,733例)であり,投与中止に至った有害事象の発現割合は,それぞれ10.8%(759例)及び10.4%(722例)であった.また,本試験では,治験責任医師等が報告した有害事象に加え,独立臨床評価項目委員会がMACE以外と判定した事象も有害事象とされた.いずれかの群で10%以上の被験者に発現した有害事象は,COVID-19(ベムペド酸群:11.2%,784/7,001例;プラセボ群:12.5%,872/6,964例,以下同順)で,次いで高血圧(11.0%,771/7,001例;11.8%,820/6,964例),高尿酸血症(10.9%,763/7,001例;5.6%,393/6,964例)であった.副作用のうち,発現割合が5%以上であった事象はなく,プラセボ群との差が1%以上であった事象は,高尿酸血症及び血中尿酸増加であった.

3) 臨床試験のまとめ

ベムペド酸はスタチン効果不十分又はスタチン不耐の高LDLコレステロール血症患者のLDL-Cを低下させ,その他の脂質パラメータも低下させることが示された.さらに脂質異常症を治療する主たる目的である心血管イベント発症のリスクを減少させることが海外で実施された試験の結果から示された.また,安全性面でも重大な懸念事項はなく,高尿酸血症については血清尿酸値の測定等の観察を十分行うことでリスクを軽減できると考える.

5.  おわりに

ベムペド酸は,脂質合成経路の上流に位置するATPクエン酸リアーゼ(ACL)を標的とする新規作用機序の経口コレステロール低下薬であり,既存のHMG-CoA還元酵素阻害薬とは異なる薬理学的特徴を有する.本稿で概説した非臨床試験成績から,ベムペド酸は肝臓における脂質合成を抑制し,LDLコレステロール(LDL-C)の低下ならびに肝臓および血管における脂質蓄積の抑制を通じて,動脈硬化病変の進展を抑制することが示された.

特に,ACSVL1による肝臓選択的な活性化機構に基づき,骨格筋では作用を示さないという特性は,スタチン治療で課題となる筋障害関連副作用の観点から重要な意義を有する.このような肝臓選択性は,脂質低下効果と安全性を両立し得る薬理学的基盤と考えられる.

国内外の臨床試験の結果から,ベムペド酸はスタチン効果不十分又はスタチン不耐の高LDLコレステロール血症患者のLDL-Cを低下させ,安全面でも重要な懸念点は認められなかった.

これらの知見は,スタチン単独療法で十分なLDL-C管理が困難な患者や,筋症状等によりスタチン治療の継続が制限される患者において,ベムペド酸が有用な治療選択肢となり得ることを示唆している.また,作用機序の異なる脂質低下薬との併用による治療戦略の幅を拡げる可能性も期待される.

今後,実臨床データのさらなる蓄積を通じて,高コレステロール血症治療におけるベムペド酸の臨床的位置付けが一層明確化されることが期待される.

利益相反

鈴木 智久,藤多 ひとみ,真宇根 寛美(大塚製薬株式会社).

文献
 
© 2026 公益社団法人 日本薬理学会
feedback
Top