2026 年 161 巻 5 号 p. 395-406
ベムペド酸(ネクセトール®)は,肝細胞に選択的に発現するvery long-chain acyl-CoA synthetase 1(ACSVL1)により活性化体(CoAエステル体)へ変換され,ATPクエン酸リアーゼ(ACL)を選択的に阻害する高コレステロール血症治療薬である.活性体によるACL阻害により細胞質アセチルCoAが減少し,SREBP2活性化を介してLDL受容体発現が増加することで,血中LDLコレステロール(LDL-C)のクリアランスが促進される.ACSVL1は骨格筋でほとんど発現しないため,ベムペド酸は筋組織では活性化されず,筋障害関連副作用を引き起こしにくい特性を有する.非臨床試験では,ACLに対する直接阻害作用,肝細胞での脂質合成抑制,高脂肪・高コレステロール食負荷動物および複数の動脈硬化モデル動物におけるLDL-C低下作用と動脈硬化病変進展抑制が確認されている.国内外の臨床試験では,ベムペド酸は高LDLコレステロール血症患者に対して,スタチン治療の反応性に関わらずLDL-Cを低下させ,ベムペド酸の効果は投与後早期から認められた.また,安全性上のリスクについてもベムペド酸投与により特に留意すべき安全性上の重大な懸念事項はなかった.加えて,心血管疾患を有する又はそのリスクが高いスタチン不耐の高LDLコレステロール血症患者を対象とした海外第Ⅲ相試験の結果より,ベムペド酸はLDL-Cを低下させ,その効果を維持することで,臨床的に重要なエンドポイントである心血管イベント発症のリスクを減少させることが認められた.