日本薬理学雑誌
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一次繊毛による骨形成機構
斎藤 将樹厚味 厳一
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ジャーナル 認証あり 早期公開

論文ID: 23113

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抄録

一次繊毛は,中心体由来の基底小体を起点として形成される不動性の繊毛で,細胞周期G0期のほとんど全ての細胞種において細胞外に突出する.一次繊毛の根底部には物質輸送のバリアがあるため,内部には選択的な分子が存在し,特に一次繊毛を覆う細胞膜(一次繊毛膜)には限られた種類のGタンパク質共役型受容体,増殖因子受容体や,イオンチャネルが分布する.そのため一次繊毛は,選択的な生理活性物質や機械刺激のシグナル受容器として細胞の増殖や分化を制御し,骨,脳や腎臓など,全身の様々な臓器の形成や成熟に関与する.一方,一次繊毛の形成不全や機能破綻が生じると,様々な臓器の形成不全を主徴とする繊毛病を引き起こすことが明らかになってきており,一次繊毛はその生理的重要性のため,それらを対象とする研究がここ20年ほどで活気を帯びている.骨形成における一次繊毛の役割とその分子制御機構に関する研究も少しずつ進んでおり,骨芽前駆細胞に形成される一次繊毛は,ヘッジホッグなどの選択的な生理活性物質を受容して骨芽細胞への分化を亢進し,頭蓋骨や長管骨の形成に関与することが周知となってきている.最近さらに,それまで一次繊毛形成とは関連が示されていなかった膜裏打ちタンパク質4.1Gが,骨芽前駆細胞において一次繊毛の形成,ヘッジホッグシグナルの伝達,および骨芽細胞への分化を促進することによって,骨形成に関与することが報告された.本稿では,骨形成において一次繊毛が果たす役割とその分子制御機構について,4.1Gの役割を含めて紹介する.

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