論文ID: 24045
Futibatinib(製品名:リトゴビ®錠4 mg)は,大鵬薬品によりシステイノミクス創薬技術を用いて開発された新規のFGFR(fibroblast growth factor receptor:線維芽細胞増殖因子受容体)阻害薬である.「がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道癌」を効能・効果として,2023年6月に国内製造販売承認が取得された.FutibatinibはFGFRのキナーゼドメイン内にあるP-ループのシステイン残基に共有結合し,FGFR1~4を選択的かつ不可逆的に阻害することによって抗腫瘍効果を発揮すると考えられている.開発中の薬剤を含め多くのFGFR阻害薬はATP競合型であり,共有結合型の不可逆的FGFR阻害薬としては,Futibatinibが初めて承認された薬剤となる.腫瘍細胞株を用いた実験では,FutibatinibはFGFRのリン酸化とその下流のシグナル伝達を阻害することで,細胞増殖を抑制することが示された.共有結合型の不可逆的FGFR阻害薬であるFutibatinibは,他のATP競合型の可逆的FGFR阻害薬と比べて,より幅広いFGFR変異体に対して阻害活性を示し,野生型のFGFR阻害効果と大きく乖離することなく細胞増殖を抑制する.また,FGFRがドライバーとなっているヒト腫瘍細胞株を皮下移植したマウスを用いた実験において,Futibatinibの経口投与は腫瘍縮小効果を示した.また,化学療法歴のあるFGFR2融合遺伝子またはFGFR2遺伝子再構成を有する肝内胆管がん患者を対象として実施された国際共同第Ⅰ/Ⅱ相試験(TAS-120-101試験)の第Ⅱ相パートにおいて,主要評価項目の全奏効率は41.7%であり,共存遺伝子変異の有無によらず一貫した有効性を示した.安全性においてはいくつかの特徴的な副作用を認めたがいずれも管理可能であり,良好な安全性プロファイルを示した.Futibatinibは,治療選択肢の限られた胆道がんにおいて重要な薬剤であるとともに,他のがん種での開発が複数進行しており,より多くの患者への貢献が期待される薬剤である.