日本薬理学雑誌
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麻酔ラット心臓における再潅流性不整脈の病因解析: 虚血領域の大きさおよび血行動態の影響
大井 至小沢 尚美中村 敬太
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1992 年 100 巻 1 号 p. 87-95

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抄録
麻酔ラットの冠動脈(左前下行枝)を4分間閉塞し,7分間再潅流することにより惹起される再潅流性不整脈に及ぼす虚血領域の大きさおよび虚血中の血行動態の影響について検討した.再潅流により64%のラットが死亡し,その死因は非可逆的な心室細動であった.死亡群では,生存群に比較して虚血領域および虚血中の心拍数の上昇が有意(それぞれP<0.001およびP<0.05)に大きく,また,虚血中の不整脈(心室性期外収縮または心室性頻脈)の発生率も有意(P<0.001)に高かった.収縮期血圧は冠動脈の閉塞により低下したが,両群間に有意な差を認めなかった.再潅流から心室細動の発生までの時間もまた両群間に有意な差を認めなかった.虚血領域の大きさと虚血中の心拍数の増加量および虚血中の不整脈の発生率との間には,いずれも正の相関が認められた.これらのことから,虚血領域の大きさが再潅流性不整脈の程度を決定する主要因であると同時に,虚血中の心拍数の上昇や不整脈の発生にも強く関与していることが示唆された.また,本再潅流性不整脈モデルを用いて薬物の評価を行う場合には,虚血領域の大きさの測定が必須であり,それに加えて,血圧,心拍数,心電図等の各種循環指標の測定が必要であると思われる.
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