日本薬理学雑誌
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100 巻, 1 号
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  • ―ムリサイドを中心として―
    小野寺 憲治
    1992 年 100 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    When rats were maintained on a thiamine-deficient diet for 30 days, about 70% of the animals showed a mouse-killing response (muricide). The thiamine-deficient killer-rats do not eat but merely killed the mice. Once this abnormal behavior appeared, the response remained, and could not be suppressed by the administration of thiamine hydrochloride plus thiamine-supplemented diet, regardless of a return to normal feeding, growth and heart rate. Drugs that activate the central serotonergic and noradrenergic systems have suppressive effects on it. Conversely, among the various depletions of brain monoamines, only depletion of serotonin by the drug p-chlorophenylalanine significantly increased the incidence of muricide. Antihistaminergic drugs were potently effective, but atropine, an anticholinergic drug, were ineffective. Various antidepressants and electroconvulsive shock treatment also suppressed muricide to various degrees. Thus, it is expected that the muricide induced by thiamine deficiency may be useful as an animal model of depression, although the usefulness of this abnormal behavior as a working model of depression or for screening new antidepressants remains to be evaluated.
  • 山下 義昭, 三宅 義雅, 光廣 茂夫, 古川 達雄
    1992 年 100 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    イフェンプロジルの,モルモット肝臓ミトコンドリアアデノシントリホスファターゼ(ATPase)におよぼす影響を検討した.1)新鮮なモルモット肝臓ミトコンドリアATPase活性を,イフェンプロジルは濃度に応じて促進し,この促進作用はジニトロフェノール(DNP)によって増強された.ミトコンドリアのヌクレオチド分解活性はATP>CTP>ITP>GTPの順に強く,イフェンプロジルの促進作用も基質にATPを用いたときにのみ観察された.イフェンプロジルの作用はMg2+やCa2+によって抑制されたが,Na+,K+,G-ストロファンチンでは影響を受けなかった.オリゴマイシンはイフェンプロジル存在下のATPase活性を著明に阻害した.またイフェンプロジルの作用は,マーサリールによっても抑制されたが,牛血清アルブミンによってはほとんど影響を受けなかった.KCNはATPase活性を阻害するが,本阻害作用はイフェンプロジルによって完全に回復した.2)50°C,60分間加熱処理したモルモット肝臓ミトコンドリアATPase活性を,イフェンプロジルは濃度に伴って阻害したが,DNPには作用は認められなかった.このミトコンドリアのATP,GTP,ITP分解活性は,ほぼ同程度であったが,イフェンプロジルの阻害作用はATPを基質にしたときが最も弱かった.イフェンプロジルのATPase阻害作用はMg2+およびCa2+によって消失したが,Na+,K+およびG-ストロファンチンによっては影響されなかった.オリゴマイシンはイフェンプロジルの存否にかかわらずATPase活性を著明に阻害した.以上の結果から,イフェンプロジルは潜在的ミトコンドリアATPaseの活性化と活性化されたミトコンドリアATPaseを抑制する作用があることが判った.特に前者は,イフェンプロジルの有するシアン化合物毒性に対する保護作用の発現に見られたように,本薬物がミトコンドリア膜機能に直接影響してMg2+およびCa2+の作用に変化を与えることに起因すると判断される.
  • 高橋 昌哉, B. FRITZ-ZIEROTH, 山口 基徳, 小川 博, 田中 友世, 笹川 祐成, 筑後 孝章, 太田 善夫, 岡本 耕 ...
    1992 年 100 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)の卒中に伴う脳内変化をMagnetic Resonance Imaging(MRI)を用いて非侵襲的に観察し,病理学的検索結果と比較検討した.雄性SHRSP10例を4週令より低Mg2+/Ca2+含有船橋SP食,食塩水(1%)飲水条件で飼育したところ,12~13週令で全例顕著な体重減少と共に攻撃性,過敏性の亢進などの神経症状を発症した.神経症状発症1~2日目のMRIのT2強調画像(T2-WI)において,皮質,視床などの脳領域に高信号部位が10例中9例で検出された.これらの高信号部位の数,範囲は,病理検索上浮腫,グリオーシス,軟化,嚢胞,赤血球の漏出などの脳血管障害の観察された脳部位の数,範囲にほぼ一致していた.T1強調画像(T1-WI)では脳内に高信号部位は検出されなかったが,造影剤Magnevist®投与によりT1-WIにおいても,T2-WI上高信号を示す脳領域のうち約8割の領域で斑状の高信号部位が造影検出された.これらの8割の脳領域では上記の脳血管障害に加えて血管壊死や血栓も確認された.T2-WIの高信号脳領域中に点状の低信号部位が3箇所で観察されたが,この低信号部位はT1-WIおよびMagnevist®投与T1強調画像(Gd-T1-WI)においても検出され,血腫形成脳部位に一致していた.また,T2-WIにおいては,脳梁あるいは脳室が高信号を示す例も見られた.神経症状発症3~4日目のMRIでは,T2-WIでの上記の異常信号部位は変わらず検出されたが,Gd-T1-WIにおいては一部の脳部位が検出されなくなり,血液脳関門の修復が示唆された.以上,各種画像条件でのMRIにより,SHRSPの脳卒中発症時の脳血管障害の部位,病変の種類,程度,経時的変化を非侵襲的に検出識別することが可能であり,SHRSPへのMRI利用が脳卒中に伴う脳血管障害の発症過程の解明あるいは治療薬の薬効評価に有用であることが示唆された.
  • 真柳 誠, 中山 貞男, 小口 勝司
    1992 年 100 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    キク科和漢薬の15生薬より熱水抽出エキス(HWE)と9生薬よりタンニン除去画分(DTF)を調製し,ラット肝のアミノピリンN-メチル基分解酵素(APD)活性とアニリン水酸化酵素(ANH)活性,および脂質過酸化物(LPO)形成に対するHWEとDTFの影響をin vitroで検討した.APD活性は12生薬のHWEで抑制され,特に菌陳蒿の作用は著明であった.菌陳蒿・艾葉・款冬花・蒼朮・白朮のDTFではHWEよりAPD活性抑制作用が減弱,ないしは消失したが,紅花のDTFでは活性を促進した.ANH活性は11生薬のHWEで抑制された.菌陳蒿・艾葉・旋覆花のHWEはANH活性を促進させたが,それらのDTFでは抑制を示した.紫〓のDTFではHWEよりANH活性の抑制作用が減弱したが,紅花・白朮・蒼朮・木香のDTFではそれぞれのHWEより抑制作用が増強された.LPO形成は14生薬のHWEで抑制され,菌陳蒿・艾葉・款冬花・紅花・木香は著明な抑制を示した.紫〓以外のDTFではHWEよりLPO形成の抑制が減弱したが,紅花はなお強い抑制を示した.今回,APD・ANH活性とLPO形成に対し著明な作用を示した菌陳蒿・艾葉・紅花・菊花・旋覆花・白朮・蒼朮・木香は,in vivoにおいてもそれらに影響を与える可能性が示唆された.
  • 菅谷 健, 美濃部 敏, 谷口 友康, 橋本 善勝, 久保 雅巳, 渡辺 泰三
    1992 年 100 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    新規ACE阻害薬,imidaprilの活性体である6366Aについて種々の動物ならびに組織由来のACEに対する阻害作用をin vitroで検討し,enalaprilat(エナラプリルの活性体)およびカプトプリルと比較した.部分精製したブタ腎臓およびヒト血清AcEに対する6366Aの阻害定数(Ki)はそれぞれ6.7×10-11M(enalaprilatの1/3,カプトプリルの1/6)および4.0×10-11M(enalaprilatの1/4,captoprilの1/18)であった.また,Lineweaver-Burkプロットを用いた酵素学的解析から6366AのこれらACEに対する阻害様式は拮抗阻害であった.高血圧自然発症ラット(SHR)およびWistar系Kyotoラット(WKY)の肺,大動脈,心臓,脳,腎臓のACEに対する6366A,enalaprilatおよびそれらの関連化合物(6366DM,6366PY)の50%阻害濃度(IC50)は両ラット共にいずれの組織においても6366Aが最も低い値を示した.さらに,これらACE阻害薬の分子構造とACE阻害活性との間には構造活性相関が認められた.以上,6366Aはin vitroにおいてブタ腎臓,ヒト血清およびラット(SHR,WKY)各種組織由来のいずれのACEに対しても,enalaprilatやカプトプリルよりも強いACE阻害作用を示すことが示唆された.
  • 風間 睦美, 小林 国男, 田原 千枝子, 宮島 ゆかり, 遠藤 幸男, 田中 博之, 中谷 寿男, 多治見 公高
    1992 年 100 巻 1 号 p. 47-58
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    汎発性血管内血液凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome:DIC)は,凝固亢進状態を契機として,消耗性止血障害による全身性出血傾向及び末梢循環不全による多臓器障害を主症状とする症候群である.しかして本症候群は重篤な疾患に合併して,患者の予後を著しく不良とする.DICの凝固亢進状態に対しては抗凝固療法が基本であるが,従来用いられてきたヘパリンの外に,我が国ではメシル酸ガベキサート,メシル酸ナファモスタット,アルガトロバンなど,タンパク質分解酵素に対する合成インヒビターが用いられ,基礎的,臨床的有効性が認められている.われわれは合成インヒビターE-3123を用いて,イヌに作成した実験的DICに対する改善効果を,循環動態及び止血学的所見から検討した.すなわちイヌにトロンボプラスチン150単位/kgを30分かけて静注して未治療対照群(第I群:n=4)とし,治療群としては第II群:E-3123 5mg/kg/hr併用群(n=4),第III群:同10mg/kg/hr併用群(n=4),第IV群:メシル酸ガベキサート(GM)6mg/kg/hr併用群(n=4)の計4群を作成した.HR・PaO2・Ca(v)O2・CI・SVIなどの血行動態の指標には何れの群でも有意な変動が認められず,またMPAP,PVRIの変動に対しても有意の改善効果は認められなかった.しかし末梢循環機能を示すlactate,pyruvate/lactateには,治療群で有意ではないが改善傾向が認められた.一方アンチトロンビンIII,プラスミノーゲンには何れの群でも有意の減少が認められず,治療効果の分析はできなかったが,対照群で認められた(1)プロトロンビン時間の延長,(2)血小板数,フィブリノーゲン,α2-プラスミンインヒビターの減少及び(3)フィブリン分解産物の増加などに対しては,t検定及び2元分散分析で,第III群,第IV群に有意の改善効果が認められた.これらの成績から,実験的DICの止血異常に対して,E-3123はGMと同程度の改善効果があると結論された.
  • 丹羽 雅之, 野崎 正勝, 小林 雅司, 鶴見 介登
    1992 年 100 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    新規1,4-dillydropyridine(DHP)系カルシウムチャネルブロッカー(Ca2+-ブロッカー),NZ-105,((±)-2-[benzyl(phenyl)amino]ethyl 1,4-dihydro-2,6-dimethyl-5-(5,5-dimethyl-2-oxo-1,3,2-dioxaphosphorinan-2-yl)-4-(3-nitrophenyl)-3-pyridinecarboxylate hydrochloride ethanol)の作用特異性を検討する目的で,NZ-105の中枢性のCa2+チャネルDHP結合部位への親和性を検討すると同時に,その他の主に中枢性の各種受容体(α1,α2,β-アドレナリン受容体,ドパミンD1,D2受容体,ムスカリン性アセチルコリン受容体,μ,δ,κ-オピオイド受容体,NMDAタイプ,キスカル酸タイプならびにカイニン酸タイプグルタミン酸受容体)結合に及ぼす影響を同じDHP系Ca2+ブロッカーのニカルジピンおよびベンゾチアゼピン系Ca2+-ブロッカーのジルチアゼムと比較検討した.NZ-105は中枢性DHP結合部位に対してニカルジピンと同レベルの親和性を示したが,他の受容体に対しては有意な親和性を示さなかった.一方,ニカルジピンおよびジルチアゼムは高濃度ではあるが各種受容体に対する抑制作用が認められた.以上の結果より,NZ-105は従来のCa2+-ブロッカーに比べ他の受容体結合に対する影響は弱く,より選択的にDHP-結合部位に作用するという特徴を有することが示された.
  • 鬼頭 康彦, 桂巻 常夫, 田中 浩和, 田中 道子, 北林 範子, 片岡 正憲, 藤森 茂樹, 梅本 準治, 難波 和彦
    1992 年 100 巻 1 号 p. 67-76
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    分子量約60万~120万のヒアルロン酸ナトリウム(HA)が変形性関節症(OA)に有効であることが報告されているが,さらに分子量の高いHAの方が有効性も高いと考えられるため,新規に発酵法で得られた分子量約180万~210万のHA(SL-1010)の効果をウサギ膝関節内へのパパイン注入により発症したOAモデルを用い検討した.ウサギ膝関節内に3日間隔で2回0.4,0.8および1.6%パパイン溶液0.5mlを注入した場合,用量に依存して軟骨基質の変性,軟骨中の硫酸化グリコサミノグリカン(S-GAG)量の減少が認められ,滑膜の炎症が軽微であるOAモデルが得られた.SL-1010投与群では,このモデルにおける軟骨基質の変性および軟骨細胞数の減少の程度は生理食塩液を投与した対照群および平均分子量約95万のHA(HA-95)投与群に比べやや軽度であった.また,SL-1010投与群ではOAモデルにおいて低下した軟骨中のS-GAG量が対照群と比較し,有意に回復した.さらにSL-1010はウサギの正常関節およびOAモデル関節から採取した軟骨からの35S-GAGの遊離を抑制する傾向を示した.以上の成績より,SL-1010はウサギを用いたパパイン注入によるOAモデルにおける軟骨変性の抑制に有効であることが示唆された.この作用は,S-GAG遊離を抑制することにより,低下した軟骨中のS-GAG量を回復することが大きく関与しているものと考えられる.
  • 田中 浩和, 鬼頭 康彦, 桂巻 常夫, 田中 道子, 北林 範子, 藤森 茂樹, 梅本 準治, 難波 和彦
    1992 年 100 巻 1 号 p. 77-86
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    モルモット膝関節内へのパパイン注入により発症した変形性関節症(OA)モデルを用い,高分子量ヒアルロン酸ナトリウム(SL-1010,分子量約180万~210万)の効果を,組織学的および生化学的に検討した.なお,パパインによるOAモデルは主としてウサギで研究されているため,モルモットにおけるOAモデル作製の条件も合わせて検討した.パパイン(1%,0.1ml)の関節内注入6週間後において,滑膜は炎症像を呈し,軟骨の基質および細胞に変性変化,safranin-O染色性の低下ならびに硫酸化グリコサミノグリカン(S-GAG)量の減少が認められた.電顕による観察では,パパイン注入6週後において最表層の電子密度の高い不定形層状物質が消失するとともに,膠原線維の露出が認められた.また,細胞間基質の膠原線維は線維束を形成し,その配列は乱れ,太い線維も観察された.このOAモデルにおいて,1%SL-1010の0.1ml/kg関節内投与は滑膜の炎症を軽減し,軟骨変性の進行を抑制した.また,パパイン注入により低下した軟骨中のS-GAG量は,対照群に比べ有意に回復した.さらに,SL-1010投与群では,対照群においてパパイン注入時に電顕でみられた諸変化は認められなかった.以上の成績より,SL-1010はパパインにより発症したモルモットのOAモデルに対して,抗炎症作用および軟骨保護作用を示し,軟骨の変性を抑制すると考えられる.
  • 大井 至, 小沢 尚美, 中村 敬太
    1992 年 100 巻 1 号 p. 87-95
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    麻酔ラットの冠動脈(左前下行枝)を4分間閉塞し,7分間再潅流することにより惹起される再潅流性不整脈に及ぼす虚血領域の大きさおよび虚血中の血行動態の影響について検討した.再潅流により64%のラットが死亡し,その死因は非可逆的な心室細動であった.死亡群では,生存群に比較して虚血領域および虚血中の心拍数の上昇が有意(それぞれP<0.001およびP<0.05)に大きく,また,虚血中の不整脈(心室性期外収縮または心室性頻脈)の発生率も有意(P<0.001)に高かった.収縮期血圧は冠動脈の閉塞により低下したが,両群間に有意な差を認めなかった.再潅流から心室細動の発生までの時間もまた両群間に有意な差を認めなかった.虚血領域の大きさと虚血中の心拍数の増加量および虚血中の不整脈の発生率との間には,いずれも正の相関が認められた.これらのことから,虚血領域の大きさが再潅流性不整脈の程度を決定する主要因であると同時に,虚血中の心拍数の上昇や不整脈の発生にも強く関与していることが示唆された.また,本再潅流性不整脈モデルを用いて薬物の評価を行う場合には,虚血領域の大きさの測定が必須であり,それに加えて,血圧,心拍数,心電図等の各種循環指標の測定が必要であると思われる.
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