日本薬理学雑誌
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セロトニン3受容体拮抗薬Y-25130のラット胃運動に及ぼす影響
小谷 直也芳賀 慶一郎瀬戸口 通英
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1993 年 101 巻 1 号 p. 17-26

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抄録
選択的なセロトニン3受容体拮抗薬であるY-25130のラット胃運動に及ぼす影響を検討した.胃運動は,新たに開発した胃運動自動解析システムで(1)motility index(MI:運動指数),(2)amplitude(AM:収縮力),(3)frequency(FR:収縮頻度)の3つの成分に分けて解析した。Y-25130は1μg/kg以上の静脈内投与でMIおよびAMを亢進した.5-HT3受容体拮抗作用を示すondansetronおよびメトクロプラミドでも同様の作用が認められたが,Y-25130に比べて弱かった.シスプラチンの10mg/kgの静脈内投与はMIおよびAMを抑制し,Y-25130は1μg/kg以上でシスプラチンによって抑制されたMIおよびAMを回復させた.それらの作用はondansetronとほぼ同等であり,メトクロプラミドに比べて強かった.Y-25130で認められた胃運動亢進作用はアトロピン処置および迷走神経切除によって消失し,capsaicinの前処置はY-25130の亢進作用を抑制した.また,迷走神経の求心性電気刺激によって誘発された胃の収縮はY-25130で増強されたが,遠心性刺激によって誘発された収縮は影響されなかった.以上のように,Y-25130は胃自動運動を亢進させ,シスプラチンで抑制された胃運動を回復させた.その胃運動亢進作用は迷走神経を介するものであり,作用点は迷走神経求心性線維に存在するセロトニン3受容体であることが推察された.
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