抄録
脳血管障害後遺症改善薬イデベノンとジヒドロピリジン系力ルシウム拮抗薬塩酸マニジピンの両薬剤併用による脳血管障害後遺症に対する改善効果を明らかにするため脳卒中易発症系高血圧自然発症ラット(SHRSP)を用い,イデベノン50mg/kg投与,塩酸マニジピン2mg/kg投与およびイデベノン50mg/kgと塩酸マニジピン2mg/kg併用投与にて脳卒中発症後の神経症状,体重変化および病理学的変化を検討した.SHRSPは,脳卒中の発症時期を可及的にそろえるために1%食塩水を飲水として与え飼育した.脳卒中発症後,飲水を水道水にかえ,薬物を発症1日後より毎日1回3週間経ロ投与した.塩酸マニジピン投与群は,対照群に比し脳卒中発症後の神経症状を有意に改善した.イデベノン単独投与では神経症状は不変であったが,併用投与群では投与全時期にわたって対照群に比べ有意な神経症状の改善を示した.特に,併用投与によって重篤な神経症状を呈している日数が対照群に比べ有意に減少した.脳卒中発症後塩酸マニジピン投与群および併用投与群で対照群に比べ有意な体重減少の回復が認められ,脳浮腫に伴うと思われる脳重量増加が対照群に比べ有意に抑制された.脳および腎臓の病理組織学的検査の結果,対照群と比較し,塩酸マニジピン投与群では脳病変の軽減がみられたが,併用投与群では脳および腎臓病変の軽減がみられた.すなわち,イデベノンと塩酸マニジピンは併用により体重減少および脳,腎の組織学的病変を有意に改善し,特に重篤な神経症状を呈する日数の減少に対し明らかな併用効果がみられた.以上の結果より,SHRSPにおける脳血管障害後遺症においてイデベノンと塩酸マニジピンの併用によって治療効果が単独投与と比べ増強されたことが明らかになり,臨床においても脳卒中後遺症治療に対する両薬物の併用効果が期待される.