日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
ラットにおけるデキストラン硫酸誘発潰瘍性大腸炎モデルに関する基礎的研究(第3報)―各種阻害剤の直腸内投与による影響―
木村 伊佐美永濱 忍川崎 真規片岡 美紀子佐藤 誠
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 108 巻 5 号 p. 259-266

詳細
抄録
われわれはこれまで,ラットに3%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を自由飲水させることにより,体重の増加抑制,血便および貧血などの症状並びに大腸におけるびらんの形成,さらに小腸病変を欠くことなどの点でヒト潰瘍性大腸炎(UC)に類似した実験的UCモデルが作製できることを確認した.またUC発症動物のホルマリン固定大腸標本は,1%アルシアンブルーにより濃淡のある特徴的な青色に染色され,その濃青色領域は組織学的にびらんであることを明らかにした.今回,本モデルにおける炎症性メディエーターの関与を明らかにする目的でスーパーオキシドジスムターゼ(SOD),5-アミノサリチル酸(5-ASA),AA-861,ロイコトリエンB4受容体拮抗剤(LTB4-ra),インドメタシン(Ind)およびOKY-046の直腸内投与による影響を検討した.活性酸素消去剤のSODあるいは強い活性酸素種消去作用を有する5-ASAは,大腸粘膜のびらん形成の抑制あるいは大腸短縮に対する改善を示した.またリポキシゲナーゼ阻害剤のAA-861は,大腸粘膜のびらん形成を抑制し,さらにロイコトリエンB4受容体拮抗剤のLTB4-raは大腸粘膜びらん形成および大腸短縮に対して改善を示した.一方,シクロオキシゲナーゼ阻害作用を有するIndおよびトロンボキサン合成酵素阻害剤のOKY-046は,大腸粘膜のびらん形成および大腸短縮のいずれに対しても改善作用を示さなかった.以上の結果より,ラットのDSS誘発UCモデルの病態における活性酸素種並びにアラキドン酸のリポキシゲナーゼ代謝産物の重要性が示唆された.
著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top