日本薬理学雑誌
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ヒト腸上皮細胞株Caco-2のacyl-CoA:cholesterol acyltransferase(ACAT)活性とコレステロールエステル分泌に対するACAT阻害薬,F-1394の作用
楠 淳荒金 克己北峰 哲也山浦 哲明大西 治夫
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1997 年 110 巻 6 号 p. 357-365

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抄録

シャーレ上に培養したヒト腸上皮細胞株Caco-2を用いて,14C-オレイン酸のコレステロールエステル(CE)への取り込みを指標としたacyl-CoA:cholesterol acyltransferase(ACAT)活性を測定し,本活性に対するACAT阻害薬,F-1394並びに類似薬の阻害作用を比較検討した.F-1394は本細胞のACAT活性を濃度依存的に阻害し,その50%阻害濃度(IC50値)は71nMと算出された.他のACAT阻害薬であるYM-17E,CI-976,CL-277,082およびDL-melinamide並びにシンバスタチンの本活性に対するIC50値は,それぞれ,121nM,702nM,21.5μM,20.9μMおよび22.5μMと算出された.また,プラバスタチン,プロブコール及びクロフィブレートは本活性にほとんど影響を与えなかった.さらにCaco-2細胞をフィルター上に培養し,tightjunctionを形成させた小腸粘膜モデルを用いて,漿膜側へのCE分泌に対するF-1394の作用を検討したところ,F-1394は,漿膜側培養液へのCE分泌を濃度依存的に抑制した(F-1394 100nMでの抑制率;90%).以上の成績から,ACAT阻害薬F-1394は,細胞膜機能を有するACAT活性測定系においても,類似薬に比して強力に本活性を阻害することが明らかとなり,ヒト小腸粘膜においてコレステロール吸収を抑制することが示唆された.

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