日本薬理学雑誌
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新規抗潰瘍薬T-593のラット急性胃粘膜傷害および胃粘膜血流低下に対する作用
荒井 博敏水尾 美登利丸淵 茂樹中川 昌也森 由紀夫
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1998 年 112 巻 2 号 p. 117-124

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抄録
新規抗潰瘍薬T-593の急性胃粘膜傷害に対する抑制作用について,ラットにインドメタシンと水浸拘束ストレスを負荷し,同時に胃内に塩酸を灌流させて発生する急性胃粘膜傷害モデルを用いて検討した.T-593は0.1mg/kg/hrの静脈内持続投与で有意な胃出血と胃粘膜傷害抑制作用を示した.1mg/kgの静脈内投与では胃出血の有意な抑制と胃粘膜傷害の抑制傾向を示した.しかし,ファモチジンは1mg/kgで抑制作用を示さなかった.一方,胃粘膜防御作用が報告されているセクレチンは15CU/kg/hrで有意な胃粘膜傷害抑制作用と胃出血の抑制傾向を示した.次に,その作用機序を解明する目的で胃粘膜血流量に対する作用を検討した.インドメタシンと水浸拘束ストレスを負荷したラット胃粘膜血流量は負荷3時間後で前値の約60%まで低下したが,T-593は0.1mg/kg/hrの静脈内持続投与で胃粘膜血流低下を有意に改善した.さらに,T-593の胃粘膜血流改善作用の機序を解明する目的で,内皮由来血管弛緩因子であるnitric coxide(NO)の関与について検討した.T-593の胃粘膜血流改善作用はNO合成酵素阻害薬であるNG-nitro-L-arginine methyl ester 2mg/kgの静脈内投与により消失し,NO合成酵素の基質であるL-アルギニン50mg/kgの静脈内投与により作用が回復した.この作用は光学異性体であるD-アルギニンでは認められなかった.以上のことより,T-593はインドメタシン処置水浸拘束ストレス負荷ラットの胃内に塩酸を灌流して発生する急性胃粘膜傷害を抑制し,その作用機序としてNOが関与する胃粘膜血流改善作用が示唆された.
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