日本薬理学雑誌
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アレルギー性気管支喘息時の気道過敏性発症機序―過敏性気管支平滑筋におけるCa2+感受性の変化―
薬理学の新世紀を拓く
千葉 義彦三澤 美和
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1999 年 114 巻 3 号 p. 185-190

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抄録
非特異的刺激に対する過剰な気道平滑筋収縮反応性の亢進,すなわち気道過敏性はアレルギー性気管支喘息患者に共通の特徴であり,発作の重要因子である.喘息患者から摘出した気道平滑筋自体でも反応性の亢進が認められている.このことは,喘息患者では気道平滑筋に何らかの変化が惹起されて平滑筋の収縮性(contractility)が大きくなり,その結果わずかな刺激でも過剰な収縮反応を呈してしまうことが考えられる.当教室ではこれまでに,感作ラットに抗原を反復吸入チャレンジすることにより,再現性の良い気道過敏性状態が得られ,また,本気道過敏性モデルにおいては喘息患者と同様,摘出気管支平滑筋レベルでも過敏性が獲得されていることを報告している.本気道過敏性ラットより摘出した肺内気管支平滑筋skinned fiber標本を用いて検討を行ったところ,acetylcholine(ACh)非存在下でのCa2+による収縮反応は正常レベルであったが,ACh存在下でいわゆるCa2+感受性を観察したところ,このACh誘発Ca2+感受性効果は気道過敏性時には著明に増強されていることを初めて明らかにした.また,このACh誘発Ca2+感受性は低分子量GTP結合タンパク質Rhoの不活化薬C3の前処置により完全に抑制された.気道過敏性ラットの気管支平滑筋組織のRhoAのタンパク質を測定したところそのレベルが著明に増大していることも明らかにした.以上の結果より,抗原誘発気道過敏性時には気管支平滑筋収縮におけるRhoを介するCa2+感受性機構が亢進しており,その結果わずかなアゴニスト刺激に対しても著しい収縮反応が惹起されて気道過敏性がもたらされることを示唆し,提唱した.
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