培養ラットアストロサイトを低Ca2+溶液に短時間曝露しその後正常溶液でインキュベートすると,細胞死を伴った細胞障害が見られる.この細胞障害は,アポトーシスの特徴であるDNAの断片化,核の凝縮等の生化学的,形態的変化を伴う.本細胞障害の発現には細胞内Ca2+濃度の増加,活性酸素の産生,NF-κBの活性化が重要な役割を演じており,またこれらの過程にはカルパイン,カスパーゼ等のプロテアーゼが関っている.Ca2+流入後,産生された活性酸素はカルシニューリン依存的にNF-κBの活性化を引き起こす.これらのシグナルカスケードの阻害薬は本細胞障害を抑制する.また,種々の脳機能改善薬も本細胞障害を抑制するが,それらの薬物の作用メカニズムは多様である.種々の細胞内シグナル伝達系がストレスに応答するが,これらのバランスのコントロールが障害保護の面から重要と思われる.