日本薬理学雑誌
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血管新生におけるchymaseの役割
村松 理子片田 淳林 泉馬嶋 正隆
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キーワード: chymase, 血管新生, VEGF, Angiotensin, bFGF
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1999 年 114 巻 supplement 号 p. 48-54

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抄録
今回、我々はAngiotensin converting enzyme (ACE)以外のAngiotensin II (Ang II)産生酵素であるchymaseの、血管新生における役割をハムスタースポンジ皮下移植モデルを用いて検討した。Chymaseによって産生されるAng II、及び不活性前駆体であるAngiotensin I (Ang I)自身をスポンジ内に直接投与したところ、血管新生が誘導されたことからAng IIが血管新生促進作用を有すること、さらに投与部位周囲に変換酵素が存在することが示唆された。更に生体内での強力な血管新生誘導因子であるbasic fibroblast growth factor (bFGF)よって誘導される血管新生においてAng II type I受容対拮抗薬であるTCV-116及びchymase阻害薬であるchymostatinはbFGF誘導血管新生を有意に抑制した。このことから生理的な血管新生において内因性のAng IIが誘導因子のひとつとして働くこと、さらにその変換にchymaseが関与していることが明らかとなった。そこで、chymaseの強発現により血管新生が誘導されるかを検討した。ヒトpro-chymase transfection及び精製chymaseの投与により血管新生は有意に促進された。また、精製chymaseにより誘導された血管新生はTCV-116によって約50%抑制されたことから、chymaseはAng IからAng IIを産生する経路と、さらに他の経路を介して血管新生を誘導することが示唆された。このAng IIにより誘導される血管新生はVEGF antisenseにより抑制されることから、chymaseにより産生されたAng IIはVEGFのup-regulationを介して血管新生を誘導していると考えられる。
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