日本薬理学雑誌
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自然発症性糖尿病(WBN/Kob)ラットの自発性末梢知覚神経活動に対するメキシレチンの効果
堀内 城司佐藤 悠
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2000 年 115 巻 6 号 p. 353-359

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抄録

糖尿病性痙痛は末梢の知覚神経のsmall fiber neuropathyによって引き起こされると考えられている.本研究では,まず自然発症糖尿病ラット(WBN/Kobラット)の末梢知覚神経にみられるsmall fiber neuropathyが,求心性神経活動を自発性に引き起こしているかについて検証し,さらに,抗不整脈薬で糖尿病性疼痛に有効とされるメキシレチン,局所麻酔薬であるリドカインの胃内投与が,起こっている自発性神経活動に対してどのような効果を持つかを比較検討した.実験には,ウレタン麻酔下のWBN/Kobラットと対照群であるWistar SLCラットを用いた.7匹中,6匹のWBN/Kobラット(57∼62週齢)の中枢側を挫滅した左腓腹神経から自発性の求心性神経活動が観察され,それはメキシレチンの投与(10mg)で有意に長時間(最高2時間まで観察)抑制された.これに対して,より若い(54週齢)WBN/KobラットおよびWistarSLCラット(31および35週齢)では左腓腹神経から自発性の求心性神経活動が観察されなかった.62週齢のWBN/Kobラットの左腓腹神経を電気刺激(1Hz,673mV,0.05ms duration)したときの求心性刺激伝導速度はメキシレチンの投与前後で変化が認められなかった.以上の結果から,メキシレチンによる糖尿病性疼痛の改善効果は,疼痛の原因とされる知覚神経のsmall fiber neuropathyによって引き起こされる自発性求心性神経活動が,メキシレチンの投与で抑制されることによりもたらされることが示された.また,メキシレチンの抑制効果は知覚神経の刺激伝導には明らかな影響を与えなかった.

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