抄録
電気刺激やisolationによるaggressiveマウスの脳内polyamineの変動およびその行動に対するLiClの影響について検討を加えた結果,次のような実験成績が得られた.1)電気刺激で得られるaggressive mice(ES-mice)においてはbiting,mounting,attackingおよびvocalizationなどのpatternが一様に出現した.一方,3週間のisolationによって得られるaggressive mice(IS-mice)においてはattackingの出現が著明であった.2)ES-miceにおいては脳内CA,5-HTおよびspermidineは集団飼育した正常群と比較して有意な変動は認められなかったがspermineは著明に増加した.しかし,電気刺激によっても攻撃性を示さないマウスにおいてはspermineの増大は認められなかった.3)IS-miceについてisolationの期間とattacking出現回数との関係を調べた結果,isolation1週間目では1.1±0.4回,2週間目では3.7±0.5回,3週間目では7.2±0.5回,4週間目では7.4±0.5回とisolationの経時変化とともにattacking強度も増すことが認められた,4)IS-miceについて,isolation期間と脳内amine量の変動について検討を加えた結果,spermidineだけが経時変化とともに増大することが認められた.しかし,3週間のisolationによってもattackingを示さないnon-aggressive miceにおいてはspermidineの増大は認められなかった.5)IS-miceにLiCl 12.5,25および50mg/kgを1日2回,10日間連続i.p.投与するとbitingおよびattackingの用量に比例した抑制効果が認められた.とくに,50mg/kg投与群においてはこれらpatternは全く消失した.6)IS-miceにLiClの10日間連続投与が脳内polyamineに与える影響を検討した結果,IS-mice群と比較して50mg/kg投与群においてspermineの有意の上昇が認められた.