日本薬理学雑誌
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鎮痙作用を有するPiperidolateの,摘出平滑筋,特に性ホルモン影響下における子宮平滑筋に対する作用(1)
小澤 光弘中 豊
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1974 年 70 巻 5 号 p. 659-671

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抄録
N-ethyl-3-piperidyl-diphenylacetate hydrochloride(一般名piperidolate)の摘出平滑筋に対する鎮痙作用Y`ついて,腸管,気管,盲腸紐,そして特に性ホルモンを投与したラット,また妊娠中のラット子宮を用いて検討し,その作用機序,ならびに性ホルモンによる影響の有無について調べた.piperidolateは腸管,気管においてACh,histamine,Ba++の収縮をいずれも非特異的に抑制しpapaverineと同程度の強さを示した.またモルモット盲腸紐においてpiperidolateがK+-拘縮のtonic相を特異的に抑制したことなどから,その鎮痙作用が向筋肉性であり,papaverineのごとく細胞内のstore Ca++の遊離抑制に関係があり,さらに高用量のpiperidolateは収縮因子に対する直接の抑制作用も有することが考えられる.性ホルモンを投与して強制的にhormonal stageに調節したラット子宮に対してpiperidolateは投与した性ホルモンには無関係にACh,Ba++,oxytocinの収縮をそれぞれ非特異的に強く抑制した.しかしpapaverineは投与した性ホルモンによりBa++,oxytocinの収縮に対する抑制作用に差がみられ,dioestrusの子宮における抑制作用が最も強かった.妊娠時のラット子宮におけるACh,Ba++,oxytocinの収縮に対してはpiperidolateは妊娠前期よりも後期において,その抑制作用を強くあらわした.逆にpapaverineは妊娠前期と後期の子宮についてその抑制作用に差がみられなかった.またACh,Ba++,oxytocinに対する子宮の反応性についても性ホルモンを投与した場合には,prooestrusな子宮が最も良く,それに対して妊娠時の場合は妊娠後期における子宮が良かった.このことからも,piperidolateとpapaverineの抑制作用が性ホルモンを投与した場合と妊娠時の場合の子宮において異ることは,性ホルモンの子宮に対する影響がexperimentalな状態とphysiologicalな状態では子宮の薬物に対する感受性にかなりの差があることに起因することも考えられる.
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