日本薬理学雑誌
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70 巻, 5 号
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  • 藤井 喜一郎, 伊藤 均, 成瀬 千助
    1974 年 70 巻 5 号 p. 571-577
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Coriolan,CM・coriolan,DEAE-cellulose分画菌体多糖のS-180,P・7423,S-42に対する抗腫瘍性を検討した結果,次の結論が得られた.1)S-180移植マウスに対してcoriolan1.0mg/kg×5(週3回)静脈内投与すると11/12の腫瘍が完全消失した.2)coriolan1.0mg/kg×5(週3回)静脈内投与すると腫瘍が全例,完全消失し,投与量を下げると抗腫瘍性も低下した.一方,静脈内投与の場合には同量を分割投与するよりも1回投与する方が,より抗腫瘍性の高いことが示唆された.3)S-180移植マウスに対してCM-coriolan10.0mg/kg×10(連日)腹腔内投与した場合は2/10の腫瘍が完全消失した.しかし皮下投与した場合には腫瘍の完全消失は得られなかった.4)P・7423移植マウスに対してCM-coriolan10.0mg/kg×15(週3回)腹腔内および皮下投与した場合は腫瘍は完全消失は認められず,腫瘍の抑制のみ認められた.5)S-42移植マウスに対してCM-coriolan10.0mg/kg×10(週4回)腹腔内投与すると4/11の腫瘍に完全消失が認められた.また,腹腔内投与は皮下および静脈内投与より抗腫瘍効果が高かった.6)DEAE-cellulose分画菌体多糖の抗原感作血球凝集反応においてはF3は動物血清と反応するが,F1,F2は反応性が消失した.7)F1,F2の構成糖はglucose,galactose,mannose,fucose,xyloseよりなり,F3は91ucose,riboseよりなることが確認され,抗原様物質の主体はriboseであると推定された.8)S-180移植マウスに対してF1,F2をそれぞれ,10.0mg/kg×10(連日)静脈内,腹腔内および皮下投与すると腫瘍はいずれも100%が完全消失し,F3の抗腫瘍性はF1,F2に比較して,かなり低下した,
  • 小木 曽太郎, 高月 芳子, 加藤 好夫
    1974 年 70 巻 5 号 p. 579-588
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ヒト,ウシ,ラットの血球Achaseならびに家兎脳Achaseの医薬品による阻害について検討し,以下の成績を得た.1)医薬品の多くは血球Achaseを阻害し,その阻害率は医薬品により異なる.一般に,cationicな薬剤はAchaseの阻害が大であった.Albuminはそれらの阻害作用をほとんど軽減しなかった.2)医薬品によるAchase阻害は,ヒトとウシの間に種差,性差を認めなかった,3)I30とマウスLD50(p.o.,i.v.およびi.p.)およびラットLD50(i.p.)との間に高度の相関が認められた.
  • 蟹屋敷 栄一
    1974 年 70 巻 5 号 p. 589-601
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    マウス空腸条片を用い,収縮薬K,ACh,Baおよび弛緩薬isoproterenol(lso),papaverine(Pap),Mnの各作用機序を検討した.I.収縮薬の作用:1)K,ACh,Baの各収縮曲線は,phasic contraction(PC)とこれに続くtonic contraction(TC)より成る.AChとBaのPCはCa遊離によって起り,KのPCは,大部分がCa influxにより,小部分がCa遊離によって,起る.各収縮薬のTCは,エネルギーを要するactiveのCa influxによって維持される.2)筋細胞膜のCastoreには,Caが,(1)極めて離れやすいstore,(2)比較的離れやすいstore,(3)離れにくいstoreの区分があり,Kは(1)から,AChは(2)から,Baは(2)と(3)から,Caを遊離させると推定される.II.弛緩薬の作用:1)正常bath中と高K脱分極bath中での弛緩作用の比較から,Isoの弛緩機序は,膜機能の抑制によるのに対し,MnおよびPapの弛緩機序は,低濃度では膜機能の抑制によるが,高濃度ではそれ以外の機序も加わることが推定された.2)正常bath中とCa(-)bath中での弛緩作用の比較から,各弛緩薬ともに,Ca遊離またはこれに続くトーヌス維持機構を阻害することが示唆された.3)AChの収縮曲線に対して,各弛緩薬の低濃度は,PCを抑制せずに,TCのみを選択的に抑制した.このことから,各弛緩薬は,いずれも,Caのactive influxに対する阻害作用をもつと推定できる.4)濃度作用曲線を用いて,外来Caの収縮,K,ACh,Baの各PCに対する弛緩薬の拮抗型式をしらべ,Table2の成績を得た.これから,各弛緩薬の収縮抑制機序の詳細を考察した.5)以上の各所見を総合して,正常トーヌスに対する弛緩機序を次のように推定した.1)Isoの弛緩は,筋細胞膜の抑制にあり,Ca influxとCa遊離を偽性競合的に阻害するのによる.2)Mnの弛緩は,濃度上昇に伴い膜の抑制(Ca influxの競合型阻害に続く,Ca遊離の競合型阻害)に次で,筋収縮系の非競合型阻害が発現するのによる.3)Papの弛緩は,濃度上昇に伴い,膜の抑制(Ca influxとCa遊離に対する非競合型阻害に次で,筋収縮系の非競合型阻害が発現するのによる.
  • 江田 昭英, 平松 正彦, 吉田 洋一
    1974 年 70 巻 5 号 p. 603-608
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    7例の正常前立腺および3例の「肥大前立腺」のcitric acid量,aconitaseならびにisocitrate dehydrogenase活性を測定し,ついでこれらにおよぼすPEの影響について実験した.その結果,以下のような成績が得られた.1)正常前立腺のcitric acid量は70.13±12.23μg/100mgであった,これに対して「肥大前立腺」のcitric acid量は164.6±25.15μg/100mgであり,正常前立腺のそれに比して有意に高い値を示した.2)正常前立腺のaconitase活性は7.01±0.707unitであった.これに対して「肥大前立腺」のaconitase活性は2.9±0.44unitであり,正常前立腺のそれに比して有意に低い値を示した.3)正常前立腺のisocitrat edehydrogenase活性は48.46±6.45unitであった.これに対して「肥大前立腺」のisocitrate dehydrogenase活性は36.7±11.47unitであり,正常前立腺のそれに比してやや低い傾向を示したが,有意ではなかった.4)正常前立腺および「肥大前立腺」のこれらの生化学的因子に対してPEはin vitroでは影響がみられなかった.
  • 江田 昭英, 平松 正彦, 吉田 洋一
    1974 年 70 巻 5 号 p. 609-619
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラット,サルおよびヒト前立腺Acphaseの若干の性質について検討し,ついで,前立腺肥大症治療効果を示すPEのこれらのAcphase活性におよぼす影響について検討し,以下の成績を収めた.1)ラット諸臓器のAcphase活性は脾臓〉肝臓>腎臓>胸腺>肺>睾丸≥前立腺>副腎>精嚢のごとくであり,前立腺のAc phase活性は0.69KA unit/0.1g tissueとかなり低い御こ過ぎなかった.しかし,サル前立腺のAc phase活性は336KA unit/0.1g tissueと著しく高く,他の臓器のそれの200~700倍におよんだ.2)L(+)-tartaric acidによりラット諸臓器のAc phase活牲はいずれも軽度阻害され,前立腺Ac phaseに対する特異性はみられなかった.しかし,サル前立腺のAc phaseはL(+)-tartaric acidによりほぼ完全に阻害され,他の臓器のそれは軽度阻害されるに過ぎなかった.formaldehydeによりラット諸臓器のAc pahseはかなり強く阻害されたが,前立腺Ac phaseに対する特異性はみられなかった.サル前立腺Ac phaseはformaldehydeにより軽度阻害されたが,他の臓器のそれは比較的強く阻害された.L(+)-tartaric acidおよびformaldehydeのサル精嚢Ac phaseに対する態度は前立腺Ac phaseに対する態度とほぼ同様な傾向を示した.L-cysteineおよびsodium thioglycolateによってラットおよびサルのいずれの臓器のAc phaseもほとんど影響を受けなかった.また,ethanolによってはサル諸臓器のAc phaseはいずれも70%以上阻害され,前立線Ac phaseに対する特異性はみられなかった.3)ヒト前立腺の精製Ac phaseはL(+)-tartaric acidによりほぼ完全に阻害され,formaldehydeでは軽度阻害されるに過ぎなかった.L-cysteineおよびsodium thioglycolateではほとんど影響がみられず,ethano1ではかなり強く阻害された.4)サル前立腺Ac phase活性はPEにより約2倍に賦活されたが,他の臓器のAc phase活性には影響がみられなかった.5)ヒト前立腺の精製Ac phase活性はPEにより賦活され,その賦活作用は濃度にほぼ比例して強くなった.また,その他の前立腺肥大症治療薬ではCerniltonに賦活作用がみられたが,その作用はPEに比して軽度であった.ParaprostおよびEviprostatでは賦活作用はみられず,逆に阻害作用がみられた.L(+)-tartaric acidで阻害されたAc phase活性はPEにより回復し,また,Cerniltonによっても回復したが,その作用はPEに比して軽度であった.
  • 西野 仁雄
    1974 年 70 巻 5 号 p. 621-628
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    交叉熱電対を用いて,pentobarbital麻酔下で脳,心,肝,腎および筋血流量ならびにその動態を検した.血流量の相対比は1.5:1:2;4.5:0.15であった.人工呼吸停止により脳および心血流のみは有意に増加した.noradrenalineは心,筋,脳血流の増加を来たしたが特に心血流増加作用が強かった.ただし腎血流をむしろ減少させた.AChは各臓器で同様な作用様式を示した.各種vasodilatorsは各臓器でそれぞれ作用様式を異にした.
  • 桜田 司, 只野 武, 今井 正幸, 木皿 憲佐
    1974 年 70 巻 5 号 p. 629-636
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    マウスの嗅球摘出による情動行動,自発運動量および脳内polyamine量について検討を加えた結果,次のような実験成績が得られた.1)マウスの嗅球摘出によって,光束法およびoPen・field testでとらえた自発運動量は術後8日目以降増加したが回転篭法でとらえた自発運動量は減少した.2)嗅球摘出マウス(O.B.mouse)のattackingの出現率は術後8日目で30%,術後15日目で44%と術後日数とともに増加した.3)嗅球摘出後15日目で1回以上attackingを示すマウス(hyper mouse)の自発運動量は術後attackingの出現したかったマウス(non-hyper mouse)と比較して光束法およびopen-field testで測定した運動量を著明に増加させた.4)O.B.mouseの脳内polyamine量については,術後8日目でO.B.mouseのspermine(SPM)だけが増加し,術後15日目ではSPMおよびspertnidine(SPD)量の増加することが認められた.5)hyper mouseのSPD量は術後8日目でnon-hyper mouseと比較して著明な変動は認められなかったがhyper mouseのSPM量は有意な増加が認められ,15日目ではhyper mouseのSPM量の増加はさらに著明であった.
  • 安東 潔, 柳田 知司
    1974 年 70 巻 5 号 p. 637-647
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    benzodiazepine系薬物は一般症状観察および自発運動量測定において中枢抑制症状を示したがchlordiazepoxide,lorazepamは低用量において攻撃行動などを,また投与数時間後には自発運動量増加傾向を示す場合があった.シドマン回避条件反応においてその反応数に有意な抑制をもたらした用量は0.25mg/kg,i.p.(lorazepam),2mg/kg,S.C,(diazepam),8mg/kg,i.p,(cloxazolam),32mg/kg,i.p.(chlordiazepoxide)であったが,oxazolamの場合は256mg/kg,i.p.に至るまで反応数抑制はあらわれなかった,DRL食飯強化実験における反応数抑制はchlordiazepoxideおよびcloxazolamについてはシドマン実験の1/2量で生じ,lorazepa皿およびdiazepamでは倍量を必要とした,oxazolamでは32mg/kg,i.p.で反応数抑制がみられた.diazepamおよびchlordiazepoxideでは反応数抑制の生じない用量で反応効率あるいはIRT標準偏差に有意な変化がみられた.条件情動反応はdiazepam,oxazolam,cloxazoram,10razePamについてテストされたがいずれも条件情動反応抑制傾向がみられた.
  • ―Substitution testおよびラット体重の経時変化について―
    柳浦 才三, 鈴木 勉, 田頭 栄治郎
    1974 年 70 巻 5 号 p. 649-658
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    薬物混入飼料を用いる方法で,substitution testおよび薬物依存ラットの体重の経時変化について検討した。薬物混入飼料を用いる方法で獲得したmorphine,codeineおよびmeprobamateの身体的依存ラツトに,それぞれcodeine,morphineおよびphenobarbital混入飼料を置き換えた結果,それぞれの休薬時に認められるような禁断症状としての体重減少は観察されなかった.すなわち,morphine,codeineおよびmeprobamateにcodeine,morphineおよびphenobarbitalが置き換わり,それぞれの身体的依存性を推持したものと思われる.したがって,薬物混入飼料を用いる方法でもsubstitution testが可能である.しかし,phenobarbital依存ラットにmeprobamate混入飼料を置き換えたが,禁断症状としての体重減少が認められた.これは,meprobamateの混入濃度が低濃度であったためと考えられる.薬物混入飼料を用いる方法で獲得した依存ラットの体重の経時変化を測定した結果午前7時前後が最高となり,午後7時前後が最低となる日内変動を示した.また,休薬することにより累進的な体重減少を示したが,その中にも,わずかながら日内変動が認められた.休薬後48時間にそれぞれの薬物混入飼料を再処置すると,薬物依存ラットの体重レベルに急激に近づいていった.このようなラット体重の経時変化を測定することは,禁断症状としての体重減少をより明確にする上でも,また被検薬物の身体的依存形成能の検定にも有用と考えられる.
  • 小澤 光, 弘中 豊
    1974 年 70 巻 5 号 p. 659-671
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    N-ethyl-3-piperidyl-diphenylacetate hydrochloride(一般名piperidolate)の摘出平滑筋に対する鎮痙作用Y`ついて,腸管,気管,盲腸紐,そして特に性ホルモンを投与したラット,また妊娠中のラット子宮を用いて検討し,その作用機序,ならびに性ホルモンによる影響の有無について調べた.piperidolateは腸管,気管においてACh,histamine,Ba++の収縮をいずれも非特異的に抑制しpapaverineと同程度の強さを示した.またモルモット盲腸紐においてpiperidolateがK+-拘縮のtonic相を特異的に抑制したことなどから,その鎮痙作用が向筋肉性であり,papaverineのごとく細胞内のstore Ca++の遊離抑制に関係があり,さらに高用量のpiperidolateは収縮因子に対する直接の抑制作用も有することが考えられる.性ホルモンを投与して強制的にhormonal stageに調節したラット子宮に対してpiperidolateは投与した性ホルモンには無関係にACh,Ba++,oxytocinの収縮をそれぞれ非特異的に強く抑制した.しかしpapaverineは投与した性ホルモンによりBa++,oxytocinの収縮に対する抑制作用に差がみられ,dioestrusの子宮における抑制作用が最も強かった.妊娠時のラット子宮におけるACh,Ba++,oxytocinの収縮に対してはpiperidolateは妊娠前期よりも後期において,その抑制作用を強くあらわした.逆にpapaverineは妊娠前期と後期の子宮についてその抑制作用に差がみられなかった.またACh,Ba++,oxytocinに対する子宮の反応性についても性ホルモンを投与した場合には,prooestrusな子宮が最も良く,それに対して妊娠時の場合は妊娠後期における子宮が良かった.このことからも,piperidolateとpapaverineの抑制作用が性ホルモンを投与した場合と妊娠時の場合の子宮において異ることは,性ホルモンの子宮に対する影響がexperimentalな状態とphysiologicalな状態では子宮の薬物に対する感受性にかなりの差があることに起因することも考えられる.
  • 藤村 一, 鶴見 介登, 野崎 正勝, 平松 保造, 田村 洋平, 島沢 司
    1974 年 70 巻 5 号 p. 673-696
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    新しいタイプの抗炎症薬を開発する目的で各種の化合物をスクリーニングした結果,quinazoline-2,4-dione誘導体に優れた効果を見出し,次いで,この誘導体の多くからH-27〔1-(m-trifluoromethylphenyl)-3-ethyl-quinazoline-2,4-dione〕およびH-88〔1-(m-trifluoromethyl-phenyl)-3-(2'-hydroxy)-ethyl-quinazoline-2,4-dione〕を選出した.両被検体は血管透過性充進および浮腫を強く抑制し,これら急性炎症反応に対してindomethacinよりは弱かったが,phenylbutazone,flufenamic acid,benzydamineおよびmepirizoleなどよりも強い抑制効果が認められた.しかし紫外線紅斑,肉芽増殖ならびにadjuvant関節炎などの亜急性慢性炎症反応に対してはH-27が軽度な抑制作用を示すもののH-88は無効であった.従って消化管潰瘍を発現することもなかった.他方H-88はaminopyrineの2倍,mefenamicacidの4倍程の鎮痛活性を示し,下熱作用もaminoPyrineより強く,従来の抗炎症薬にはみられない特徴を有することが認められた.これに対してH-27の鎮痛作用は弱く,下熱作用も認められなかった.LD50はH-88がflufenamic acidとほぼ同等で,H-27はそれより2倍程大きい値を示し,両検体共急性毒性は比較的弱いものであった.H-88の抗炎症作用は酸性非ステロイド抗炎症薬とは作用態度を異にし,タンパクに対する結合力は弱く塩基性抗炎症薬に似ていたがそれらよりは強力であり,赤血球膜安定化作用はtinolidineのそれよりも強力であった.この抗炎症作用には一部副腎刺激作用ならびに中枢抑制作用を介しての間接的効果もあるように思われたが,それのみではなく直接的効果もあり,鎮痛下熱作用の強い抗炎症薬として急性炎症性疾患に有用な薬物と考えられる.
  • 飯塚 義夫, 田中 喜一郎
    1974 年 70 巻 5 号 p. 697-705
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラット後肢足に火傷をつくり,それに重ねて熱刺激を加えて惹起させた炎症性終痛によるラットの症状を指標とし,新しい鎮痛薬試験法を考案した.ラット後肢足をエーテル麻酔下に57DCの熱湯に5秒間浸して火傷を作成し,2ないし4時間後に40°Cの温湯に5秒間の刺激を重ねてその火傷足に加える.再加熱直後,ラットは通常火傷足を床につけずに持ち上げるかまたは舐める行動を示す.この行動を終痛反応と規定し,再加熱後の30秒間に示される痔痛反応の時間を計測する.痛みの程度はこの終痛反応時間で表示した.火傷2時間後に疹痛反応を明瞭に示すラットを選別して投薬し,疹痛反応時間の抑制百分率ならびにID50値(50%の抑制率を与える薬用量)で薬効を表示した.この方法の特長は指標とする反応が疹痛知覚に起因している可能性が大きく,それが鎮痛薬によってのみ特異的に抑制されること,下熱鎮痛薬の鎮痛作用を抗炎症作用あるいは下熱作用の影響をうけずに測定し得ること,ならびに疹痛反応の観察に際し惹起熱刺激を与える時間と反応観察時間とを分離したことにより被検動物に加えられる通常でない環境因子を除去し得ることなどで,従来の鎮痛試験法より特異性が大きいと推察される.この方法によって測定された下熱鎮痛薬の有効性の順位は,indomethacin>flufenamic acid>mefenamic acid>bimetopyrol>ibuprofen>phenylbutazone>aminopyrine>mepirizole>aspirinであった.
  • 野崎 茂
    1974 年 70 巻 5 号 p. 707-718
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    粉乳および雑穀に550ppmと750ppmの三酸化ヒ素をそれぞれ添加した飼料で35日間ラットを飼養して脳・肝・腎・脾の各臓器のヒ素含有量を測定し,すでにヒ素代謝に関する研究第7報で記載した各臓器のヒ素含有量と比較検討し次の結果を得た.1)脳におけるヒ素量は,粉乳飼料で飼養した場合には,臓器全体からも臓器g当りからも添加三酸化ヒ素量を550ppm以上に増加しても有意差のある増加は認められなかった.一方,雑穀飼料の場合には,ある程度抑制されたが増加する傾向を示した.2)肝のヒ素量は,粉乳飼料の場合も雑穀飼料の場合もそれぞれ臓器全体からも臓器g当りからも,その添加三酸化ヒ素量に平行して増加した.3)腎のヒ素量は,臓器全体からは粉乳飼料の場合も雑穀飼料の場合も,添加三酸化ヒ素量を200ppm以上に増加しても有意差のある増加は認められなかった,9)脾のヒ素量は,粉乳飼料の場合も雑穀飼料の場合もそれぞれ臓器全体からも臓器g当りからも,添加三酸化ヒ素量に平行して増加した.
  • 永沼 真理子, 稲垣 真里子, 瀬戸 淑子, 豊島 滋
    1974 年 70 巻 5 号 p. 719-725
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    14C-Pipethanate hydrochlorideは,マウスに経口投与されると30分後には,血中および胆汁中放射活性は最高濃度に達し,時間推移とともに減少した.胆汁への排泄は24時間後まで続くが,48時間後には全く消失した.放射活性はほぼ全身に分布し,特に肝臓や消化管に高い放射活性が見られたが,時間とともに減少して,蓄積性や残留性を示す臓器組織は認められなかった.尿中へは,3~6時間後には,全投与量の約50%が排泄され,24~48時間までに投与された量のほとんどが体外へ排泄され,その割合は,尿に約70%,糞便中に約30%である.呼気中への排泄は,ごくわずかで0.35%であった.以上の所見は,同時に行なった凍結全身オートラジオグラフィの結果によっても裏づけられる.
  • 小澤 光, 安部 不二夫
    1974 年 70 巻 5 号 p. 727-733
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    モルモットの下腹神経一精管標本において精管および神経節に選択的に薬物を投与し得る実験方法を考案した.精管と神経節の隔絶分離は,ショ糖隔絶法で用いられる隔絶法を下腹神経の節後線維にあたる部位において応用することにより達成された.隔絶部の内部は,等張のショ糖液が灌流されているため,隔絶部において陰圧となり,したがって栄養液は隔絶部に吸引されやすく,逆にショ糖液は栄養液槽に流入し難くなる.すなわち,この陰圧の発生によって栄養液槽の隔絶は強化される.本法に用いた等張のショ糖液は栄養液に比して高い電気抵抗を有する,したがって,隔絶部へ栄養液が流入すれば,ショ糖液の電気抵抗が急激にかっ著しく低下する.それゆえ,ショ糖液の電気抵抗の変化を指標として隔絶の状態を確認した。この神経節は精管の近傍に存在するので,精管と神経節の分離の確実性が問題となる.それゆえ,隔絶部において神経を生体染色し,染色部において精管側の部分と神経節側の部分に切断した.これらから,光学顕微鏡切片を作製し,神経節の有無を観察することによって分離の確実性を確認した.さらに諸種の神経節遮断薬を精管あるいは神経節に選択的に投与し,節前および節後神経の電気刺激によって生ずる精管の収縮反応に対しこれらの薬物がおよぼす影響を検討した.この薬理学的実験結果も,本法による隔絶および分離の確実性を裏づけるものであった.
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