日本薬理学雑誌
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ウサギ肺動脈条片のトーヌスおよび対薬物収縮反応に及ぼす外液NaおよびKの影響,とくにCaとの関連
西畑 次郎
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1975 年 71 巻 2 号 p. 185-194

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抄録

ウサギ肺動脈条片のトーヌスおよび対薬物(K,noradrenaline(NA),Ba)収縮反応におよぼす栄養液(BS)のNaおよびKの変量の影響を,とくにCaとの関連において検討し,これに関連する二,三の補足的実験も行なった.1)BSのNa除去は,Ca遊離とCainfluxによる持続性収縮を起こした.2)BSのNa除去は,その直後に,K,NA,Baの各収縮を増強し,40分後に減弱させた.3)Ca(-)BS中での外来Caの収縮は,このBSからのNa除去により,直後に増強され,30分後にはつよく抑制された.4)BSのNa増量は高浸透圧効果により,Ca influxの促進にもとずく持続性収縮を起こした.ただし,この収縮の大きさは,Na増量と同じ高浸透圧のsucroseによる持続惟収縮よりも小であった,5)BSのNa増量は,Baの収縮には無影響で,Kの収縮を直後に軽度,40分後につよく抑制し,NA収縮を直後,40分後ともにつよく抑制した.これらの抑制は,高浸透圧効果とは無関係のNaに固有の作用による.6)Ca(-)BS中での外来Caの収縮は,このBSのNa増量により,直後,30分後ともに,つよく抑制された,7)BSのNa除去は,Castoreへの細胞内Caのuptakeを阻害した.BSのNaはこのuptakeを促進する役割をもつことが示唆される.8)BSのK除去は,Ca遊離とCa influxによる持続性収縮を起こした.9)BSのK除去は,40分後に,NA収縮をつよく,Ba収縮を軽度に,滅弱させた。10)Ca(-)BS中での外来Caの収縮は,このBSからのK除去により,直後および30分後に増強されたが,長時間(240分)後にはつよく減弱した.11)Na(-),Ca(-)BS中またはK(-),Ca(-)BS中で消失したNA収縮およびBa収縮の正常BS中での回復過程は,高K適用(後水洗)により著しく促進された.この促進効果は,膜興奮性低下の除去とCa storeのrepletionによることが示唆された.12)トーヌスおよび対薬物収縮反応におよぼす上記NaおよびKの各影響を,Caとの関連において,考察した.

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