新しく開発されたアドレナリン性βレセプター遮断薬5-(3-tert-butylamino-2-hydroxy)propoxy-3,4-dihydrocarbostyril hydrochloride(OPC-1085)の心血管系および心筋代謝に対する作用を麻酔開胸犬ならびに摘出犬心臓標本を用いて検討した.麻酔開胸犬では,心拍数,Vmaxおよび平均血圧においてOPC-1085はisoproterenolに対して用量依存性に拮抗し,propranolo1に比較してそれぞれ6,24,27倍の強さを示した.心筋酸化還元電位においてもOPC-1085はisoprotereno1に対してpropranololの10倍以上の拮抗力を示した.OPC-1085の単独作用については,心拍数およびVmaxは,3~30μg/kgで減少傾向を示したが,100~3,000μg/kgでは逆に増大した.max
dp/dtについても同様な傾向が認められた.しかし,proprallololは用量の増大とともに心拍数,Vmaxおよびmax
dp/dtを減少させるのみであった.心筋酸素消費量および冠血流量はOPC-1085の3,10μg/kg,propranololの30,100μg/kgで減少した.心筋酸化還元電位に対しては著明な作用は認められなかった.摘出心臓標本ではOPC-1085の0.1mgによりisoproterenolによる心拍数,心筋収縮力,冠血流量および心筋酸素消費量の増大および心筋酸化還元電位の低下が完全に抑制された.単独作用についてはOPC-1085の0.1mgにより心拍数,心筋収縮力,冠血流量および心筋酸素消費量が増大した.潅流圧,心筋酸化還元電位には著明な変化が認められなかった.以上のことから,OPC-1085はpropranololよりも強力なβレセプター遮断作用を有し,単独作用ではpropranololよりも弱く,100μg/kg以上の大量では交感神経興奮様の作用を有するものと考えられる.
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