日本薬理学雑誌
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末梢神経の変性ならびに再生に関する薬理学的研究(第1報)
坐骨神経圧挫ラットの筋重量減少ならびに筋電図パタンに対するMethylcobalaminおよびCobamideの影響
山津 清実金子 武稔北原 晟文大川 功
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1976 年 72 巻 1-2 号 p. 259-268

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抄録
末梢神経の変性ならびに再生に対するmethylcobalamin (CH3-B12) およびcobamide (DBCC)の影響を検索するため,坐骨神経圧挫ラットの筋麻痺,筋電図パタンあるいは支配下筋重量の経時的推移に対する影響を指標として検討し,次の結果をえた. 1) 坐骨神経圧挫ラットに4週間, CH3-B12あるいはDBCCを50,500μg/kg/day i. p. 投与しても体重推移や全身状態に影響はみられなかった. 2) 圧挫側の筋麻痺や反射消失は対照群では圧挫21~28日後にはみられなくなった.一方, CH3-B12, DBCC投与群でも同様の経過で回復し,ビタミンB12の投与の影響は認められなかった. 3) 圧挫側大腿二頭筋筋電図パタンにおいて, CH3-B12 500μg/kg/day投与群ではfibrillation voltageの出現に遅延がみられ, normal NMU voltageの再出現は対照群や他の実験群に比し早かった.一方, DBCC 50μg/kg/day群でfibrillation voltageの消失が幾分早い傾向がみられたが, complex NMU voltageやnormal NMU voltageの出現経過には有意な影響はなかった. 4) 支配下筋(腓腹筋,前脛骨筋,ヒラメ筋)重量は神経圧挫によって対側の約50%に減少し,圧挫4週後までほとんど回復しなかった.腓腹筋,前脛骨筋重量比の推移に対してCH3-B12 (50,500μg/kg/day) の影響はみられなかったが,ヒラメ筋の場合にはCH3-B12 500μg/kg/dayで圧挫4週後には筋重量比の有意な増加を示し,ほぼ対側レベルに回復した.一方, DBCC投与群では支配下筋重量の推移に対し有意な影響は認められなかった.以上の結果から,坐骨神経圧挫ラットの神経変性ならびに再生に対してCH12-B12 DBCCに比べ有意な影響を有し, CH3-B12 (500μg/kg/day) は神経の退行性変性(ワラー変性)に対して抑制的に作用し,神経線維再生に対しては促進的に作用することが示唆される.
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