日本薬理学雑誌
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72 巻, 1-2 号
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  • 医学・生物学への応用
    板垣 又丕
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 1-14
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
  • 藤本 昌俊, 大郷 利治, 五十嵐 俊二, 大竹 信三郎
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 15-21
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    マウスにdl-α-tocopheryl nicotinate (EN), およびdl-α-tocopheryl acetate (EA) を10日間連続投与した後, epinephrine (Epi) により惹起される肺浮腫に対する防禦効果について検討を加えた,その結黒Epi (100μg/ml×0.1ml/min×1min or 3min) 静注による肺湿・乾燥重量の増加に対し, EN 25mg/kg, EA 44mg/kg以上の投与群に明らかな抑制効果が認められた.またENの肺浮腫防禦効果は, EAに比較して強い傾向にあった.その作用機序については, ENおよびEAはEpiの昇圧反応に何ら影響を与えないことから血行力学的機序によるとは考え難く,他の何らかの機序が考えられねばならない.
  • 第2報. L-5HTPとp-CPAの相互作用
    大森 健守, 小嶋 哲夫, 丸茂 博大
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 23-30
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    Tryptophan hydroxylase阻害剤p-CPAおよび5-HTの前駆体L-5HTPのラットの条件回避反応および脳内5-HT含量におよぼす影響を検討し,次の成績を得た. 1) p-CPAの連続投与により,条件回避反応の習得の促進,消去の遅延がみられ,また,体重の増加は低いレベルに抑えられた. 2) 一定の基準に達したラットの条件回避反応はp-CPA負荷ラットの場合, L-5HTP 25, 50mg/kg投与により抑制をうけたが, CMC負荷ラットでは何らの影響も受けなかった. 3) p-CPA 316mg/kg 1回投与により脳内5-HT量は対照値の22%にまで減少したが, L-5HTP投与により5-HT量は急速に回復した.以上のことからL-5HTP投与によるラットの行動変化の発現にはL-5HTP投与前のラット脳内5-HT量の多寡により,差異が存することがわかった.
  • 鶴見 介登, 呉 晃一郎, 藤村 一
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 31-39
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    PZ-177の急性毒性と中枢神経系に対する影響を試験した. PZ-177の毒性はaminopyrineよりわずかに弱く,その中毒症状としては鎮静から正向反射の消失が認められた,従ってPZ-177によって動物の自発運動は減少し,脳波上にも睡眠波が認められた。またbarbiturateの睡眠作用に協力し,抗痙攣作用も認められた.さらに筋弛緩の傾向を示し協調運動の障害が認められた.これらの作用は代謝物PZ-222ではごく弱く,またmepirizoleにも認められたがPZ-177の方が明らかに強力であった.それ故鎮痛,下熱,鎮咳などの中枢作用においてもPZ-177の方が強いように思われた.そしてPZ-177の抗浮腫作用は正向反射を消失させない用量にて,また脊髄切断動物にても明かに認められたことから,中枢抑制作用による間接的抗浮腫作用はごく弱いもので中枢抑制が抗浮腫作用の機序とは思われなかった.
  • 鶴見 介登, 安部 彰, 藤村 一, 浅井 肇, 長坂 光昭, 三宅 弘幸
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 41-52
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    PZ-177は比較的強い鎮痛抗炎症作用を有するとともに,中枢抑制作用のある化合物であることを先に報告した.本報ではその一般薬理作用を試験した. PZ-177は鎮痛抗浮腫作用用量にて呼吸循環系ならびに腎機能にはほとんど影響せず,血液凝固系および血糖値にも作用しなかった.神経系に対しては弱い局所麻酔作用を有するものの自律神経系には影響しなかった. PZ-177は胃液分泌量を減少し胃の酸度を低下させ,結合織成分の合成は抑制せず局所刺激作用も弱く,胃粘膜障害作用はほとんどないものと思われた. PZ-177は腸管内容物の移動を抑制し,摘出腸管を弛緩させた.またそれの収縮物質acetylcholine, histamine, serotoninおよびBaCl2のいずれに対しても同程度の拮抗作用を示した.この作用は軽度な局麻作用を有することにもよるがそれ以上に平滑筋に対する直接的弛緩作用によるものと思われた.そのため気管筋および子宮に対しても弛緩作用を示し,それらのhistamineあるいはoxytocinによる収縮に拮抗し,輸精管のadrenaline収縮をも抑制した.これらの拮抗作用はいずれも同程度で平滑筋弛緩作用による非特異的拮抗と考えられた.さらに骨格筋に対しても弱い弛緩作用を有し,中枢性弛緩作用の他にクラーレに似た末梢性筋弛緩作用を有するように思われた. PZ-177の一般薬理作用としてはこの平滑筋ならびに骨格筋に対する弛緩作用が主であった.これらの作用は鎮痛抗炎症作用にとって好ましい面があり,気道炎症時の呼吸困難の改善,消化管攣縮による仙痛の除去あるいは骨格筋の痙攣性疼痛を和らげるのに有益である.以上の結果からPZ-177は一般薬理作用上特に注意せねばならない副作用はなく,比較的安全な薬物であることが認められた.そして平滑筋に対する弛緩作用が比較的強く,従来の抗炎症薬にはみられない特徴を持つ薬物と思われた.
  • 小林 雅文, 由井 孝, 荒井 悦郎, 沢 国生, 芦刈 忠, 篠原 正弘
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 53-58
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    副腎を摘出したダイコクネズミにpentobarbital麻酔を施した場合の麻酔の導入時間,持続時間を測定し,これに対するaldosterone, ACTH投与の影響を見た,また同じくpentobarbital麻酔時の脳中の5-HT含量の変動についても測定し以下の結果を得た.すなわち副腎を摘出した群においては,麻酔持続時間は増加した.これはいずれのhormoneの前処置によっても短縮された.また脳中の5-HT含量はpentobarbital注射後に漸増傾向を示したが,いずれもその度合は著明ではなかった.
  • 向出 惇, 亀山 勉
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 59-61
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    家兎腹腔多核白血球に対する遊走効果および遊走阻害について検討を加え,炎症反応における遊走機構・細胞内運動機構の阻害についての基礎的研究を行った, Cytochalasin B, colchicineは,いずれも強い運動阻害・遊走限害を示した. Cyclic nucleotideは濃度の増加で促進または抑制的に作用し, Lysosomeに作用する薬物は抑制的に作用した.なおglucocorticoid, chloroquineについては, Lysosomeの安定化に必要な濃度と遊走阻害に要する濃度との関係について差異がみられると思われる.
  • 小林 雅文, 福与 恵俊, 樋口 肇, 竹内 敏夫
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 63-70
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    Triiodothyronineを一定期間(70日間および7日間)注射したラットおよびpropylthiouracil含有食で飼育(70日間および30日間)したラットを用いて実験をおこない,次の結果を得た. A) triiodothyronine処置ラットについての成績: 1) 食物摂取量は対照群とほとんど差がなかったが,体重の増加は遅れ,死亡率は著しくたかまった. 2) 直腸温は正常の場合よりも高い値を示し,これはMAOI (tranylcypromine) を併用するとさらに著明になり,全般的に興奮状態を示した. 3) MAOI併用後の脳のtyramine uptake阻害効果, 5-HT量, 5-HIAA量, norepinephrine量の変動については,対照群のそれとの間に差を認めなかった. B) propylthiouracil処置ラットについての成績: 1) 食物摂取量が対照の1/2に減じ,体重の増加も遅れた.そして直腸温が著明に低下した,しかし死亡率は対照群と大差がなかった. 2) 70日間飼育後には脳5-HT量は対照よりも明らかに増加した.また5-HIAA量も著明に増加した.しかし脳norepinephrine量には著変が認められなかった. 3) 30日間飼育した群では, MAOI注射によって直腸温の低下の程度がさらに進んだ.これと同時に脳5-HIAA量は著明に減少した.しかし, 5-HT量, norepinephrine量の増加度, tyramine uptakeの阻害度は対照と大差がなかった.
  • 山田 健二, 相澤 義雄
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 71-75
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    ラット輸精管を除神経するとnoradrenalineに対する感受性は増大するがその機構解明の一端として輪精管のリン脂質代謝について実験を行った. Noradrenalineに対する感受性が最大に達した除神経3日後の輸精管のproteolipidへの3H-leucineおよび32P-正リン酸の取り込みは両者とも除神経により亢進していたが, 32P- 正リン酸のリン脂質への取り込みは3H-leucineの蛋白への取り込みにくらべその亢進が大であった.輸精管の総リン脂質, phosphatidylethanolamine, phosphatidylcholineへの32P-正リソ酸の取り込みは除神経後3日目に最高値を示し,以後も対照にくらべ高い取り込みを示し, noradrenalineに対する感受性の亢進と平行していた.これに反し,輸精管の蛋白含量は除神経により減少していく傾向にあった. Phospholipase C で輸精管を処理するとnoradrenalineに対する感受性は正常輪精管ではあまり変化しなかったが,除神経輸精管では著明に低下し約1/2に抑制された.これらのことより輸精管の除神経によるnoradrenalineに対する感受性の亢進には輸精管平滑筋のリン脂質代謝が重要な役割を演じていることと思われる.
  • 多糖の抗腫瘍効果と性差
    伊藤 均, 成瀬 千助, 杉浦 衛
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 77-94
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    雌雄のマウスにSascoma 180, Ehrlich carcinoma, Pulmonay tumor 7423, NF-sarcomaなどの固型種瘍を移植すると,雌雄間の腫瘍の消長には顕著な差が認められ,雌には腫瘍の自然退縮が発現することが多かった.またprogesterone, estrogeneなどでfeminizedされた雄マウスでも同様の成績であったが, Shionogi carcinoma 42とEhrlich腹水腫瘍の増殖には性差の影響は示されなかった.固型腫瘍に対する多糖の抗腫瘍性に対しても,雌マウスに高い効果が見られたが,腹水型ではほとんど有意差は認められなかった.また担子菌由来の多糖であるATSO, Coriolan, P. GU-1などは固型腫瘍に有効であるが,海藻由来の多糖であるSPMは腹水型腫瘍に延命治癒を示し,この腫瘍より回復した動物は腹水腫瘍の再移植を拒絶するとともにSarcoma 180, Shionogi carcinoma 42, NF-sarcoma, Ehrlich固型腫瘍などの腫瘍にも抵抗性を示した.また腫瘍を移植する前にX線照射Ehrlich腹水腫瘍細胞と,多糖を併用すると,多糖の抗腫瘍効果は顕著に促進された.これには多糖のadjuvant活性,免疫促進作用などの生物活性が関与していることが推定された.これらの作用はいずれも雌に強く発現した.
  • 篠 裕美
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 95-104
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    ラット胃幽門洞条片を用い, K, ACh, Baの各収縮機序およびCd, Mnの鎮痙機序を検討した. K, ACh, Baによる収縮の形は,いずれも指数曲線形であるが, phasic contraction (PC) とこれに続くtonic contraction (TC) より成る. KとAChのPCはCa遊離とpassiveのCa influxによって起り, BaのPCはCaの遊離によって起る.一方,各収縮薬のTCはエネルギーを要するactiveのCa influxによって維持される.ただし, Ca除去液中でBaの収縮のみが一定に残留することから, Baの収縮機序にはCa動員を介しない,筋収縮要素への直接刺激も一部関与すると推定される.筋細胞膜のCa storeには, Caが(1)遊離されやすいstore, (2)次いで遊離されやすいstore, (3)遊離されにくいstore, の区分があり, Kは(1)から, AChは(1)と(2)から, Baは(1), (2), (3)から,それぞれ収縮に利用されるCaを遊離させる. CdおよびMnの鎮痙作用について,外液のCa除去および外液への高K添加の与える影響ならびに濃度作用曲線による解析結果を総合して,次の推定を得た. CdおよびMnの鎮痙機序は濃度上昇に伴い,膜の抑制(Ca influxの競合的阻害に次でCa遊離を競合的に阻害し,次に,これらを競合兼非競合的に阻害する)に次で,筋収縮系の非競合型阻害が発現するのによる.
  • 谷山 紘太郎, 荒木 宏昌, 前田 昌良, 鄭 瑞棠, 松本 博
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 105-111
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    ラット直腸条片を用い, K, ACh, Baの各収縮機序をCaとの関連において検討した. K, ACh, Baの各収縮は, phasic contraction (PC) とこれに続くtonic contraction (TC) より成る,各収縮に対する代謝阻害 (anoxia, DNP) および栄養液のCa除去の影響から,次の推定を得た. KとAChのPCはCa遊離とpassiveのCa influxによって起り, BaのPCはCa遊離によって起る. KとAChのTCは主にactiveのCa influxによって維持され, BaのTCはCa遊離とactiveのCa influxによって維持される.ただし, Baの収縮機序には,この他に, Ca動員を介しない,筋収縮要素への直接刺激も一部関与する.筋細胞膜のCa storeには, Caが(1)比較的離れやすいstore, (2)次で離れやすいstore, (3)離れにくいstoreの区分があり, Kは(1)から, AChは(1)と(2)から, Baは(1), (2), (3)からそれぞれ,収縮に利用されるCaを遊離させる,濃度作用曲線を用いて,3収縮薬のPCおよびTCに対する外液Ca除去の影響を解析した.この結果から,3収縮薬の収縮機序についての上記の推定が一層支持された.
  • 池田 滋, 村山 智
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 113-126
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    Phenothiazine誘導体であるperimetazineの薬理作用を主として神経薬理学的方法で検討し以下の結果をえた. 1) Perimetazine投与により,ウサギの一般行動上鎮静,体温下降,筋弛緩あるいは協調運動失調などがみられた. 2) 骨格筋運動系に対するperimetazineの抑制作用は,主として脊髄上位中枢やgamma系に関与している上位中枢にその作用点が存在しているものと考えられた. 3) 交感神経節に対してはperimetazineはほとんど作用を示さなかったが,瞬膜の実験でみられた末梢性の抗adrenaline作用はchlorpromazineのそれと比較するとやや弱いものであった. 4) ウサギの自発脳波に対してperimetazineは低用量で徐波化が著明にみられた.音刺激覚醒反応は少量のperimentazineで著明に抑制されたが, RF刺激覚醒反応は比較的大量投与でもそれほどの抑制はみられなかった. Phenothiazine誘導体であるperimentazineは,ほぼchlorpromazineと相似た中枢抑制作用を有し,なかでも鎮静作用あるいは筋弛緩作用などが特徴的であった.
  • 上羽 禮子
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 127-137
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    ラット摘出精管の収縮を示標として,経壁刺激 (TS) によるcatecholamine (CA) の遊離機序を,特にacetylcholine (ACh) との関連において検討し,またbretyliumの交感神経遮断機序についても検討した. 1. 諸種薬物による影響に関して, TS, 外因性ACh, 外因性noradrenaline (NA) の各収縮を比較し,第1表の成績を得た. 2. 以上の成績を総合して,次の結論を得た. 1) TS収縮は, adrenergic fiber (AF) とcholinergic fiber (CF) が混在する下腹神経(交感神経)の末端刺激によるAFからのCA遊離とCFからのAChの遊離とによっておこる. TS収縮におけるCAとAChの関与の割合は約9:1である. 2) TSによるAFからのCA遊離に対して, ACh介在の必須性(Burnらの仮説)は否定される. 3) TSによってCFから遊離される内因性AChには, eserine (ES) 非存在下ではCA遊離作用はないが, ES存在下ではCA遊離作用が認められる. 4) 外因性AChの収縮は,低濃度ではACh受容体の直接刺激のみによるが,高濃度ではACh受容体の直接刺激とAFからのCA遊離とによって起る. 5) 内因性および外因性AChによるCA遊離は,いずれも,神経節遮断薬によって抑制されず, atropineによって抑制される,したがって, AF末端にはAChのCA遊離作用に関与するムスカリン様受容体の存在が示唆される. 3. Bretyliumは, TSによるCFからのACh遊離よリもAFからのCA遊離に対して優先的な非可逆的抑制を示し,一方,外因性AChによるCA遊離に対しては,弱い可逆的抑制しか示さない. 4. Bretylium適用(後水洗)により非可逆的に消央されたTS収縮に対し,高濃度NAのincubation (後水洗)は,軽度の持続性回復効果を示し,高濃度のmethamphetamine (MAP) またはCaのincubation (後水洗)は,永続的な強い回復効果を示す.また,これらのTS収縮回復に際して, NAおよびMAPのincubationは, CA遊離のみを回復させ, Ca incubationは, CAおよびAChの両者の遊離を回復させる. AFおよびCFに対するbretyliumの遮断機序は, Caの刺激伝達物質遊離作用に対する競合型拮抗によることが示唆される.
  • 古田 康彦, 鷲崎 真知子
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 139-144
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    Dopamine-β-hydroxylase (DBH) の特異的阻害剤であるフザリン酸とその誘導体であり, DBH阻害作用がより強い5-(4'-chlorobutyl) picolinic acid (FD-008) を心血管系に対する全身作用と直接作用とについてペントバルビタール麻酔犬を用いて比較検討した.フザリン酸 (10~30mg/kg) の静注では急速かつ用量に応じた降圧に伴い,心拍数増加,呼吸促進,上腸間膜動脈血流量の著明な増加,大腿動脈血流量の減少が観察された. FD-008もほとんど同様の作用を示した.単離した洞房結節交叉環流標本,及び乳頭筋交叉環流標本ではフザリン酸 (0.3~3mg) の近接動注により用量に応じた洞調律の減少及び収縮張力の減少が各々認められた.また上腸間膜,腎臓及び大腿動脈の血液環流標本に対してフザリン酸 (10~30mg) の近接動注は用量に応じて血流量を増加させた.これら末梢臓器に対する直接作用はFD-008投与でも全く同様に観察されたが,フザリン酸ほどその最大反応は強くなかった.これらのことから両薬物の静注により起こる急速な降圧は, DBH阻害によるのではなく,心臓に対する直接的な抑制作用と末梢臓器血管,とくに内臓血管に対する直接的な抵抗減少作用とによると考えられる.
  • 小木 曽太郎, 渡部 美保子, 山内 恵子, 佐藤 多美子, 加藤 好夫
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 145-151
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    医薬品の毒性をin vitroで予知するための基礎的研究を,ラヅト肝lysosome, 赤血球および二三の血球酵素を用いて検討した.臨床的に副作用の多い,水溶性トランキライザー抗ヒスタミン剤および抗うつ剤の多くは2×10-4M以上の濃度でlysosomeおよび赤血球のlysisおをもたらした.血球を30%溶血させる医薬品濃度 (H30) とラットおよびマウスの経口LD50との間に良好な相関関係が得られた.したがって医薬品の溶血作用の測定は,in vivoでの医薬品のlytic作用を予知するのに有用であると思われる.
  • 渡辺 繁紀, 川崎 博已, 植木 昭和
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 153-168
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    慢性電極植込みウサギを用いて, lopramineの脳波作用をimipramine, amitriptylineと比較検討した. Lopramineは自発脳波に対して,皮質および扁桃核では高電圧徐波,海馬ではθ波の脱同期化をひきおこし,いわゆるdrowsy patternを惹起した. Imipramine, amitriptylineも同様に自発脳波をdrowsy pattern化するが,その作用はlopramineよりもはるかに強い.またimipramineやamitriptylineでは動物に行動上鎮静を示し,軽度の筋弛緩,歩行失調をおこすのに対して, lopramineではごく軽度の鎮静を示すのみであった. Lopramineは音刺激および中脳網様体,視床内側中心核,後部視床下部の電気刺激による脳波覚醒反応に対してほとんど作用を示さないが, imipramine, amitriptylineはこれらの反応を著明に抑制し,覚醒閾値を上昇させた. Physostigmineによって誘発される脳波覚醒反応はlopramineによってほとんど影響されなかったが, imipramine, amitriptylineはこの覚醒反応を抑制し,持続時間は短縮した.視床内側中心核刺激による漸増反応はlopramineによって全く変化せず, imipramine, amitriptylineによっては増強される傾向を示した.海馬,扁桃核の電気刺激による大脳辺縁系後発射はlopramiaeによってほとんど影響を受けなかったが, imipramine, amitriptylineでは投与初期に著明に抑制,その後増強という2相性の作用が認められた.以上, lopramineは自発脳波のdrowsy pattern化をおこす点で, imipramine, amitriptylineと類似しているが,その作用ははるかに弱く,脳幹網様体賦活系など覚醒系に対する抑制作用がほとんど認められず,また大脳辺縁系後発射に対する作用もほとんどないなど,その脳波作用はimipramineやamitriptylineとかなり異った新しい型の抗うつ剤である.
  • 前田 昌良
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 169-176
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    ラット直腸条片を用い, isoproterenol (Iso) およびpapaverine (Pap) の鎮痙機序を,とくにCaとの関連において検討した. IsoおよびPapの弛緩作用におよぼす高K脱分極の影響ならびにKおよびacetylcholine (ACh) の収縮の形に対するIsoおよびPapの作用から次の推定を得た. Isoの鎮痙機序は膜の抑制にあり,濃度上昇に伴ってCa influxの抑制に次でCa遊離の抑制を起すのによる. Papの鎮痙機序は濃度上昇に伴い膜の抑制 (Ca influxの抑制に次でCa遊離の抑制)に続いて筋収縮系の反応を抑制するのによる,濃度作用曲線を用いて, KおよびAChのphasic contractionおよびtonic contractionに対するIsoおよびPapの拮抗型式をしらべ, Tablc 1の結果を得た.この結果から上記推定が一層支持された.またこの結果について考察した.
  • 前田 昌良
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 177-184
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    ラット直腸条片を用いKおよびAChのphasic contractionに対するisoproterenol (Iso) およびpapaverine (Pap) の抑制作用(鎮痙作用)におよぼす外液のNa除去の影響を, Caとの関連において検討し,さらにこれに関連してCa storeへの細胞内Caのuptakeにおよぼす外液のNa除去の影響もしらべた.外液のNa除去はIsoおよびPapのもつCa遊離阻害作用を減弱させるが, IsoのもつGa influx阻害作用およびPapのもの筋収縮系反応阻害作用には影響を与えない.外液のNa除去はCa storeへの細胞内Caのuptakeを阻害する.以上の所見を総合して次の推定を得た. IsoおよびPapはCa storeへの細胞内Caのuptakeを促進することによってCa遊離阻害作用を現わし,外液のNa除去はこのuptakeを阻害することによってIsoおよびPapのCa遊離阻害作用を減弱させる.
  • 水沢 英甫, 山根 幹男, 酒井 賢
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 185-199
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    Ifenprodilの自律,末梢および中枢神経系における薬理作用を検討し,以下の結果を得た. 1) Ifenprodil (10-7~10-5M) はnoradrenalineおよび下腹神経電気刺激によるモルモット輸精管収縮を抑制し, noradrenalineに対するpA2は7.69であった. Ifenprodil (50~1,000μg/kg i. v.) は交感神経刺激によるネコ瞬膜収縮を抑制し,その強さはphentolamineの約4.5倍であった. 3~10mg/kg i. v. は兎瞳孔径を軽度減少した. 0.25~1mg/kg i. v. はマウスのadrenaline致死を防御した (ED50=0.36mg/kg). 50~1,000μg/kg i. v. は犬腸管運動を一過性に亢進し,その作用はatropineによって抑制された. 10および20mg/kg i. v. はマウス腸管輸送能を抑制した. 10および100mg/kg i. m. はShay ratの胃液分泌機能を抑制し, 100mg/kgでは胃潰瘍発生を抑制した. 50~1,000μg/kg i. v. は下腹神経刺激による犬膀胱収縮を用量に応じて抑制し,骨盤神経刺激による収縮を軽度抑制した. 50~1,000μg/kg i. v. はモルモット子宮運動を軽度亢進し,兎子宮運動を抑制した. 2) Ifenprodil (0.04~1.4%) は局所麻酔作用を示し,モルモット角膜反射および皮膚収縮反応抑制のED 50はそれぞれ0.55%および0.27%であった.ネコ坐骨神経-腓腹筋標本においてifenprodil 1mg/kg i. v. 以下の用量は著明な変化を示さなかった. 3) ifenprodil 20mg/kg p. o. 以上はラットを鎮静化した. 0.25~2mg/kg i. v. は兎自発脳波を安静波化し, 5~10mg/kgは軽度覚醒波化した. 0.25~2mg/kgは漸増反応の閾値を10~30%上昇したが,覚醒反応は変化しなかった. 100mg/kg p. o. はラットのpentobarbitalおよびbarbital睡眠を増強し, pentylenetrazol, strychnineおよびpicrotoxin痙攣を増強した. 20および100mg/kg p. o. はラット体温を下降した.以上の結果よりifenprodilは循環器以外の平滑筋臓器においてもアドレナリン受容体遮断および直接作用を有するが,運動神経および中枢神経に対しては著るしい作用を持たないものと思われる.
  • 大村 一平
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 201-210
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    モルモット回腸条片を用い, K, acetylcholine (ACh), histamine (His), Baの各収縮機序およびisoproterenol (Iso), papaverine (Pap) の各鎮痙機序を, Caとの関連において,検討した.上記4収縮薬による収縮の形は, phasic contraction (PC) とこれに続くtonic contractlon (TC) よりなる. K, ACh, HisのPCはCa遊離とpassiveのCa influxによって起り, BaのPCはCa遊離によって起る.一方, K, ACh, HisのTCはactiveのCa influxによって維持され, BaのTCはCa遊離とactiveのCa influxによって維持される.筋細胞膜のCa influxには, Caが, (1)最も離れやすいstore, (2)次いで離れやすいstore, (3)離れにくいstoreの区分があり, Kは(1)から, AChとHisは(1)と(2)から, Baは(1), (2), (3)から,それぞれ,収縮に利用されるCaを遊離させる. IsoおよびPapの弛緩作用におよぼす高K脱分極の影響ならびにK, ACh, Baおよび外来Caによる収縮の形に対するIsoおよびPapの作用を総合して,次の推定を得た. Isoの鎮痙機序は膜の抑制(Ca遊離およびCa influxの阻害)によって発現し, Papの鎮痙機序は,濃度上昇に伴い,膜の抑制(Ca遊離およびCa influxの阻害)に次いで,筋収縮系の反応を抑制するのによる.濃度作用曲線を用いて, IsoおよびPapの収縮抑制型式を解析し,この結果 (Table 2) について考察した. IsoおよびPapがK, ACh, BaのPCおよびTCの対数濃度作用曲線を右に平行移動させるのは, PCおよびTCの発現に際して起るCa動員に対する機能的拮抗によることが示唆された.
  • 北川 純一, 岩壷 克哉, 重永 凱男, 猪木 令三
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 211-227
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    Enfluraneおよびhalothaneの薬理学的性質をラットおよびマウスを用いて検討した. enfluraneおよびhalothaneの血中濃度は両者とも約30分でプラトーに達し,初期取込み速度と最大血中濃度はhalothaneの方がenfluraneよりはるかに大きく,血中濃度の半減期はenfluraneの方が短かかった.ラット横隔膜神経筋標本の神経刺激に対して両者はほとんど影響を与えなかったが, enfluraneはsuccinylcholine chlorideの作用を増強した.ラット摘出腸管および摘出子宮に対し両薬物は張力を減少させた.ネコの膝蓋腱反射および屈曲反射に対し両薬物は抑制し, halothaneの方が強力であった.マウスの正向反射消失に対するED50はenfluraneで1.25%, halothaaeで1.40%であったが,両者に有意差はなかった.マウスの正向反射消失時間と致死までの時間はenfluraneがhalothaneよりも長かった.マウスの電気ショックによる強直性,間代性痙攣および致死に対して両薬物は抑制し, enfluraneはhalothaneより作用が強力であった. strychnine痙攣に対してhalothaneはわずかに抑制したが, enfluraneは抑制しなかった. pentylenetetrazol, picrotoxin, bemegrideによる痙攣について,両薬物はほぼ同程度に抑制した.これら電気ショックおよび中枢興奮薬による致死効果に対して両薬物は強力に抑制した.ラットの自発脳波に対して2%の両薬物は異なったパターンを出現させ, 4%ではスパイクを伴う平坦な脳波になった. recruiting responseについてenfluraneは周期の乱れとresponseの抑制を生じ, halothaneもresponseを抑制させた. augmenting responseについては両薬物をま抑制したが, halothaneの方が著明であった. arousal responseはenfluraneによって消失した.知覚神経刺激による皮質誘発電位の一次反応についてはenfluraneは陰性電位の増大を生じ, halothaneは抑制した.二次反応は両薬物によって完全に抑制された.
  • 村山 好道, 渡辺 悟, 林 恭子
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 229-236
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    ラットにおいて, 18~24時間の絶食によりNa利尿を起こすこと,またこの際遠位尿細管の浸透圧およびNa濃度が上昇することを前回の実験で指摘した.今回の実験は,遠位尿細管尿の浸透圧およびNa濃度に影響するかもしれないヘンレループでの水およびureaの動きが絶食によって変化するか否かを確めるためにおこなった.日本クレア製CE-2で飼育した雌性Wistar系ラットを用い,非絶食,18~24時間絶食および4~5日絶食の3条件下で実験をおこなった.絶食中も水は自由に給与した. Nembutalで麻酔し,クリアランスおよびヘンレループの微小潅流実験のための外科的手術の終了後, 5% inulin 0.4mlを静注,続いて2% inulinを含む2%食塩水を33.3μl/minの速度で持続注入した. 60分後よりクリアランス実験を行ない,適時ヘンレループの微小潅流実験も行なった.潅流液として, 0.05% lissamine green, 3H-methoxyinulinおよび14C-ureaを含む1%食塩水を用い,潅流速度は29.1nl/minとした. 18~24時間絶食ラットでは,尿量およびNa排泄量は高く, urea排泄量は低かった.イヌリンクリアランスは低下傾向を示した.一方,血漿に対する遠位尿細管尿の浸透圧比は上昇したが,ループでの水の吸収は不変であった.また,ループを潅流した14C-ureaの遠位尿細管での回収率は絶食により増加したので, ureaに対するループの透過性低下による遠位尿細管尿のurea濃度の上昇が推定されたが,浸透圧的に大きな比重を占めるものではなかった.以上の結果はラットの絶食により生ずるNa利尿の一部がヘンレループでの,恐らくループ上行脚でのNa再吸収の抑制によるとした前回の推定をさらに強く支持するものと考える.4~5日絶食ラットでの各種腎機能の変化は18~24時間絶食ラットにみられた変化よりさらに顕著であった.これはヒトおよび家兎での絶食にみられるNa利尿の経時的変化にも符含していることを示す.
  • ウサギの行動モデルとその解析法
    柳浦 才三, 峯尾 好生, 阿部 洋一
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 237-248
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    本研究はウサギの視床下部電気刺激下の情動行動を恐怖の動機づけとして,古典的条件づけにより, Conflict-induced behaviorの形成を試みた.反応様式の記録,解析は新たに考案した行動記録法を介して行なった.すなわち,行動の記録は頭部,腰部に加速度振動子を固定することにより,約20種類の行動が客観的にとらえられ,再現性が得られた.ウサギの視床下部刺激下の逃走行動は感覚刺激によって条件づけられる.条件反応の形式過程は自律・体性期,連続走行期,非連続走行期の3期に分類できる.内側視床下野あるいは脳弓周囲を無条件刺激とする場合に条件反応は非連続走行が認められるが,外側視床下野の刺激では非連続走行に移行しない.この非連続走行は走行に移行させる力と走行を阻止する力との同時的な対立によるconflict-induced behaviorと考えられ, Lewinの分類による回避-回避葛藤に相当するものと結諭した.
  • 大村 一平
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 249-258
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    モルモット回腸条片を用い, dibenamine (DB) のトーヌスに対する作用ならびにhistamine (His), acetylcholine (ACh), K, Baの各収縮に対する抑制機序を, Caとの関連において,検討した. 1) DBは,正常栄養液中で, Ca遊離とCa influxの両者にもとづく収縮を起すが, Kによる収縮下では,筋細胞膜の抑制にもとづく弛緩作用を現わす. 2) DBは,濃度上昇に伴い, AChの起すCaのactive influx, passive influxおよび遊離の順に,これらを抑制する. 3) DBは, Hisに対してつよい優先的拮抗を示し, ACh K, Baに対する拮抗はこれよりずっとよわく,同程度であった.また, DBは, Hisのphasic contraction (PC) とtonic contraction (TC) を平行して抑制したのに対し, ACh, K, Baに対しては ,PCよりもTCを優先的に抑制した, DBのACh, K, またはBaに対する非可逆的抑制はCaによって保護されたのに対し, His収縮に対するそれはCaによって保護されず, Hisおまび抗His薬によって特異的に保護された.これらの所見から, His収縮に対するDBの拮抗およびその非可逆性はhistamine receptorの阻害によって発現し, ACh収縮に対するそれは, K収縮およびBa収縮に対するそれと同様, Ca-siteの阻害によると推定される. 4) DB水洗後のAChの対数濃度作用曲線の非可逆的右方平行移動は, KおよびBaのそれと同様, Ca-siteの非可逆的阻害によるのに対し, Hisのそれはspare receptorの存在による可能性がある.
  • 坐骨神経圧挫ラットの筋重量減少ならびに筋電図パタンに対するMethylcobalaminおよびCobamideの影響
    山津 清実, 金子 武稔, 北原 晟文, 大川 功
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 259-268
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    末梢神経の変性ならびに再生に対するmethylcobalamin (CH3-B12) およびcobamide (DBCC)の影響を検索するため,坐骨神経圧挫ラットの筋麻痺,筋電図パタンあるいは支配下筋重量の経時的推移に対する影響を指標として検討し,次の結果をえた. 1) 坐骨神経圧挫ラットに4週間, CH3-B12あるいはDBCCを50,500μg/kg/day i. p. 投与しても体重推移や全身状態に影響はみられなかった. 2) 圧挫側の筋麻痺や反射消失は対照群では圧挫21~28日後にはみられなくなった.一方, CH3-B12, DBCC投与群でも同様の経過で回復し,ビタミンB12の投与の影響は認められなかった. 3) 圧挫側大腿二頭筋筋電図パタンにおいて, CH3-B12 500μg/kg/day投与群ではfibrillation voltageの出現に遅延がみられ, normal NMU voltageの再出現は対照群や他の実験群に比し早かった.一方, DBCC 50μg/kg/day群でfibrillation voltageの消失が幾分早い傾向がみられたが, complex NMU voltageやnormal NMU voltageの出現経過には有意な影響はなかった. 4) 支配下筋(腓腹筋,前脛骨筋,ヒラメ筋)重量は神経圧挫によって対側の約50%に減少し,圧挫4週後までほとんど回復しなかった.腓腹筋,前脛骨筋重量比の推移に対してCH3-B12 (50,500μg/kg/day) の影響はみられなかったが,ヒラメ筋の場合にはCH3-B12 500μg/kg/dayで圧挫4週後には筋重量比の有意な増加を示し,ほぼ対側レベルに回復した.一方, DBCC投与群では支配下筋重量の推移に対し有意な影響は認められなかった.以上の結果から,坐骨神経圧挫ラットの神経変性ならびに再生に対してCH12-B12 DBCCに比べ有意な影響を有し, CH3-B12 (500μg/kg/day) は神経の退行性変性(ワラー変性)に対して抑制的に作用し,神経線維再生に対しては促進的に作用することが示唆される.
  • 第2報坐骨神経圧挫ラットの圧挫側神経組織タンパク画分へのラベルアミノ酸のとりこみならびにシュワン細胞核分裂に対するMethylcobalaminの影響
    山津 清実, 山西 嘉晴, 金子 武稔, 大川 功
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 269-278
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    坐骨神経圧挫ラットの圧挫側神経および筋組織タンパク画分へのラベルアミノ酸のとりこみおよび圧挫側神経組織におけるシュワン細胞核分裂に対するmethylcobalamin (CH-3B12) の影響について検討し,次の結果をえた. 1) 圧挫側神経組織タンパク画分への3H-L-Leucine (20μCi/100g i. p.) のとりこみは圧挫1, 2週後で著しく増加し,圧挫3週後には対側レベルに回復した.一方, CH3-B12 (50,500μg/kg/day i. p.) 投与群では圧挫1週後では対照と同様のとりこみ増加を示したが,2週後には早くも対側レベルに回復した. 2) CH3-B12の1) の作用は圧挫神経組織におけるタンパク代謝亢進時期の時間的シフトの結果ではないかと考え,圧挫側神経組織タンパク画分への14C-L-Leucine (15μCi/100g i. p.) のとりこみの経日的推移に対する影響について,さらに検討した. CH3-B12 (5,50,500μg/kg/day i. p.) 投与により,圧挫5~7日後における圧挫側神経組織への14C-L-Leucineのとりこみは対照群に比し,有意に増大し,圧挫14日後では,逆に,有意なとりこみ減少を示した. 3) 圧挫側筋組織タンパク画分への3H-あるいは14C-L-Leucineのとりこみの経日的ないし経週的推移に対して, CH3-B12 (5~500μg/kg/day i. p.) は影響をおよぼさなかった. 4) 圧挫側神経組織におけるシュワン細胞の核分裂はワラー変性とほぼ同時期に出現し,圧挫後4~5日をピークに, 14~21日後にはほぼ消失した. CH3-B12 (5~500μg/kg/day i. p.) はこれら核分裂の時間的経過に対し,一定した影響をおよぼさなかった.以上の結果から,坐骨神経圧挫ラットにおいてCH3-B12 (5~500μg/kg/day) は変性神経組織でのシュワン細胞の核分裂には影響をおよぼさず,軸索再生初期段階(圧挫後5~7日)におけるシュワン細胞のタンパク代謝を亢進させ,軸索再生に対して促進的に作用する可能性が示唆される.
  • 藤田 直, 安田 正秀
    1976 年 72 巻 1-2 号 p. 279-286
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
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