坐骨神経圧挫ラットの圧挫側神経および筋組織タンパク画分へのラベルアミノ酸のとりこみおよび圧挫側神経組織におけるシュワン細胞核分裂に対するmethylcobalamin (CH-
3B
12) の影響について検討し,次の結果をえた. 1) 圧挫側神経組織タンパク画分への
3H-L-Leucine (20μCi/100g i. p.) のとりこみは圧挫1, 2週後で著しく増加し,圧挫3週後には対側レベルに回復した.一方, CH
3-B
12 (50,500μg/kg/day i. p.) 投与群では圧挫1週後では対照と同様のとりこみ増加を示したが,2週後には早くも対側レベルに回復した. 2) CH
3-B
12の1) の作用は圧挫神経組織におけるタンパク代謝亢進時期の時間的シフトの結果ではないかと考え,圧挫側神経組織タンパク画分への
14C-L-Leucine (15μCi/100g i. p.) のとりこみの経日的推移に対する影響について,さらに検討した. CH
3-B
12 (5,50,500μg/kg/day i. p.) 投与により,圧挫5~7日後における圧挫側神経組織への
14C-L-Leucineのとりこみは対照群に比し,有意に増大し,圧挫14日後では,逆に,有意なとりこみ減少を示した. 3) 圧挫側筋組織タンパク画分への
3H-あるいは
14C-L-Leucineのとりこみの経日的ないし経週的推移に対して, CH
3-B
12 (5~500μg/kg/day i. p.) は影響をおよぼさなかった. 4) 圧挫側神経組織におけるシュワン細胞の核分裂はワラー変性とほぼ同時期に出現し,圧挫後4~5日をピークに, 14~21日後にはほぼ消失した. CH
3-B
12 (5~500μg/kg/day i. p.) はこれら核分裂の時間的経過に対し,一定した影響をおよぼさなかった.以上の結果から,坐骨神経圧挫ラットにおいてCH
3-B
12 (5~500μg/kg/day) は変性神経組織でのシュワン細胞の核分裂には影響をおよぼさず,軸索再生初期段階(圧挫後5~7日)におけるシュワン細胞のタンパク代謝を亢進させ,軸索再生に対して促進的に作用する可能性が示唆される.
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