日本薬理学雑誌
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1-(m-chlorophenyl)-3-N, N-dimethylcarbamoyl-5-methoxypyrazole [PZ-177]の一般薬理作用
鶴見 介登安部 彰藤村 一浅井 肇長坂 光昭三宅 弘幸
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1976 年 72 巻 1-2 号 p. 41-52

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抄録
PZ-177は比較的強い鎮痛抗炎症作用を有するとともに,中枢抑制作用のある化合物であることを先に報告した.本報ではその一般薬理作用を試験した. PZ-177は鎮痛抗浮腫作用用量にて呼吸循環系ならびに腎機能にはほとんど影響せず,血液凝固系および血糖値にも作用しなかった.神経系に対しては弱い局所麻酔作用を有するものの自律神経系には影響しなかった. PZ-177は胃液分泌量を減少し胃の酸度を低下させ,結合織成分の合成は抑制せず局所刺激作用も弱く,胃粘膜障害作用はほとんどないものと思われた. PZ-177は腸管内容物の移動を抑制し,摘出腸管を弛緩させた.またそれの収縮物質acetylcholine, histamine, serotoninおよびBaCl2のいずれに対しても同程度の拮抗作用を示した.この作用は軽度な局麻作用を有することにもよるがそれ以上に平滑筋に対する直接的弛緩作用によるものと思われた.そのため気管筋および子宮に対しても弛緩作用を示し,それらのhistamineあるいはoxytocinによる収縮に拮抗し,輸精管のadrenaline収縮をも抑制した.これらの拮抗作用はいずれも同程度で平滑筋弛緩作用による非特異的拮抗と考えられた.さらに骨格筋に対しても弱い弛緩作用を有し,中枢性弛緩作用の他にクラーレに似た末梢性筋弛緩作用を有するように思われた. PZ-177の一般薬理作用としてはこの平滑筋ならびに骨格筋に対する弛緩作用が主であった.これらの作用は鎮痛抗炎症作用にとって好ましい面があり,気道炎症時の呼吸困難の改善,消化管攣縮による仙痛の除去あるいは骨格筋の痙攣性疼痛を和らげるのに有益である.以上の結果からPZ-177は一般薬理作用上特に注意せねばならない副作用はなく,比較的安全な薬物であることが認められた.そして平滑筋に対する弛緩作用が比較的強く,従来の抗炎症薬にはみられない特徴を持つ薬物と思われた.
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