抄録
Reserpine誘導体で,rescinnamineとほぼ同程度の抗高血圧作用を有するCD-3400のラット胃粘膜に対する作用,胃液分泌,さらに慢性的実験潰瘍である酢酸潰瘍におよぼす影響をrescinnamine,reserpineと比較検討した.1)絶食ラットにCD-3400を1回大量皮下投与すると胃体部粘膜に出血性びらんが認められた。胃損傷の程度はreserpineが最も強く,次いでrescinnamineでありCD-3400は最も弱いものであった.2)非絶食ラットにCD-3400の1日1回3日間連続投与ではほとんど胃損傷がみられなかったのに対し,rescinnamineおよびreserpineでは胃損傷の増悪傾向が認められた.3)酢酸潰瘍に対してはCD-3400および低用量のrescinnamineとrcserpine投与では対照群との間に差異は認められなかったが,rescinnamineおよびreserpineではCD-3400と同用量では死亡例が認められた.4)胃液分泌については幽門結紮ラットを用い前処理時間を変えて検討したところ,CD-3400およびreserpineは胃液量の減少傾向の他に,酸度,K+の低下とNa+の増大を示し,いわゆる胃酸の逆拡散が生じているのが推定された.この胃液成分の変化は特にreserpineでは顕著にみられたのに比べ,CD-3400では弱いものであった.5)5日間連続投与による場合にもreserpineでは胃液量および酸度の減少が認められたが,CD-3400では全く認められなかった.6)CD-3400やreserpineによる胃損傷および胃液成分の変化は副交感神経遮断薬により抑制された.以上の事実からCD-3400の皮下投与によってみられた胃損傷作用は,rescinnamineやreserpineのそれらに比べ非常に弱いものであることが判明した.また,その発現機序にはreserpineと同様に自律神経系が関与し,さらに胃液成分の変化もその一因となっていることが示唆された.