抄録
Homocytotropic antibody (HTA), compound 48 / 80, dextraneならびにphospho-lipase Aによって惹起される分離ラット腹腔細胞からのhistamine遊離に及ぼすN- (3', 4'-dimethoxycinnamoyl) anthranilic acid (N-5') の影響をdisodium cromoglycate (DSCG) のそれと比較検討し, 以下の成績を得た. (1) HTAにより受身的に感作した分離ラット腹腔細胞に対応抗原 (DNP-As) を添加することにより惹起されるhistamine遊離に対してN-5'は1または10μMではほとんど作用を示さなかったが, 100および1000μMではそれぞれ50.8%および95.3%の著明な抑制作用がみられた.一方, DSCGは1μMではほとんど作用がなく, 10および100μMではそれぞれ57。8%および85.5%の著明な抑制作用を示した.しかし, 1000μMでは抑制作用は減弱し67.2%となった. (2) HTAによるhistamine遊離率はphosphatidylserine (PS)の1μg/ml添加により約2倍に増加した.PS添加時のhistamine遊離に対してN-5'の100μMではPS非添加の場合とほぼ同程度の抑制作用を示したが, DSCG100μMによる抑制作用はPS添加時には約1/2に減弱した. (3) HTAによるhistamine遊離に対するN-5iの抑制作用はglucoseの非添加時および添加時のいずれにおいてもほぼ同程度であった. (4) compound 48/80にこよるhistamine遊離に対してN-5'の1~1000 μMはほとんど影響しなかったが, 一方, DSCGは10μMでは軽度の, 100および1000 μMでは明らかな抑制作用を示した. (5) dextraneおよびPS共存下に惹起されるhistamine遊離に対してN-5'は1μMでは軽度の, 10~1000μMでは濃度に依存した有意な抑制作用を示した.DSCGは1および10μMで有意な抑制作用を示したが, 100および1000μMに濃度を増加しても抑制作用は増大しなかった. (6) phospholipase-Aにこよるhistamine遊離に対してN-5'は1および10μMではほとんど影響しなかったが, 100および1000μMでは濃度に依存した有意な抑制作用を示した.一方, DSCGも100および1000μMではじめて抑制作用を示したが, N-5'のそれに比し軽度であった. (7) phospholipase-A活性に対してN-5'の1~100μMでは全く影響しなかったが, 1000μMでは有意な抑制作用を示した.一方, DSCGでは1~1000μMで影響がみられなかった.