日本薬理学雑誌
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74 巻, 4 号
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  • GABAニューロンの同定を例として
    斉藤 喜八
    1978 年 74 巻 4 号 p. 427-440
    発行日: 1978/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    電気生理学的手法により得られた神経回路に関する知見も, 光学顕微鏡, あるいは電子顕微鏡レベルでの解剖学的知見の裏付けがあれば一層明解になるであろう.逆に解剖学的手法の応用による新しい神経回路の解明も可能で, 電気生理学的研究の先駆となり得るであろう.ある特定の神経伝達物質についての神経回路解明のために用いられるこれらの解剖学的手法としては, (1) 内在性のモノアミンをアルデヒドと反応させて螢光物質とするいわゆるFalck-Hillarpの方法1) , (2) 放射性原子でラベルした物質を組織に摂取させてその分布をみるオートラジオグラフィー法 (文献2参照) 2) , および (3) 抗原抗体反応を利用して免疫組織学的に物質を染色するなどの方法が代表的なものであろう.ここでは (3) の方法をGABAニューロンの同定を中心にして, 同時にそれに関連した仕事をreviewしたい.
  • 池沢 一郎, 竹永 秀幸, 佐藤 匡徳, 伊藤 信夫, 中島 宏通, 清本 昭夫
    1978 年 74 巻 4 号 p. 441-449
    発行日: 1978/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    (±) -1- (3, 4, 5-trimethoxybcnzyl) -1, 2, 3, 4-tetrahydroisoquinoline (TMI) の5位から8位に, 水酸基を1~3個有する化合物について, 血管拡張作用およびcyclic 3', 5'-adenosine monophosphate phosphodiesterase (PDE) 阻害作用をイヌの総頸動脈を用いて検討した.動脈内投与による総頸動脈血流量増加作用は, isoproterenol>6, 7-OH体>5, 7-OH体>5, 6, 7-OH体>6, 7, 8-OH体>7-OH体>5-OH体>6-OH体>5, 6-OH体≧TMI>8-OH体>papaverine>6, 8-OH体>7, 8-OH体>5, 8-OH体の順であった.これらの化合物のうち, 7位に水酸基を有する化合物の血流量増加作用は, 7, 8-OH体を除いて, すべてpropranololによってほぼ消失した.一方, 8位に水酸基を有する化合物の血流量増加作用は, 6, 7, 8-OH体以外, いずれもpropranololで抑制され難かった.また, TMI誘導体のlog CBF50 (血流量を50ml/min増加させる用量) と血流量増加作用のpropranololによる抑制率との間に, 有意な負の相関々係が認められた.他方, イヌの総頸動脈におけるPDE活性に対して, TMI誘導体は, 10-3Mで30%以上の抑制作用を示したが, tri-OH体を除き, 血管拡張作用の強い化合物は, PDE阻害作用が弱く, 逆に, PDE阻害作用の強い化合物は, 血管拡張作用が弱かった.以上の結果から, TMI誘導体の血管拡張作用に, PDE阻害作用の寄与が少なく, 主にβ-アドレナリン作用が関与しているものと考えられる.TMI誘導体のβ作用の発現に, 7位の水酸基が重要で, 6位または5位の水酸基は, この作用を増強するように働くものと思われる.一方, 8位の水酸基は, 7位の水酸基によるβ作用を減弱する方向に働くものと思われる.
  • 液性免疫反応におよぼす影響
    江田 昭英, 森 裕志, 永井 博弌
    1978 年 74 巻 4 号 p. 451-458
    発行日: 1978/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    α-Mercaptopropionylglycine (α-MPG) およびsodium dipropylacetate (DPA) の液性抗体産生におよぼす影響について検討し, 両薬物は免疫促進作用を有することを明らかにした.すなわち, ウサギのbacterial α-amylasc (BαA) に対する免疫反応は, α-MPGまたはDPAの1次免疫後10日間の投与により1次免疫反応およびその後の2次免疫反応はこおける抗体産生を促進した.しかし, 2次免疫後10日間の投与では抗体産生に影響をおよぼさなかった.また, 5×108個のヒツジ赤血球 (SRBC) で免疫したマウスの脾臓のhemolytic plaque forming cell (HPFC) 産生は, 両薬物の免疫前または免疫後5日問の投与により促進した.HPFC産生におけるSRBCの閾値量は5×107個であり, これに対して両薬物の免疫後5日間の投与は明らかに促進作用を示した.α-MPGはSRBCによる免疫前48時間または免疫後24~72時間の1回投与によりHPFC産生を促進し, DPAは免疫前24時間または免疫直後の投与により促進した.
  • 1. ProcaineおよびXylocaineの影響
    駒林 隆夫, 坂本 清也, 坪井 実
    1978 年 74 巻 4 号 p. 459-466
    発行日: 1978/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ダイコクネズミの別出白色脂肪組織 (epididymal fat tissuc) を用いてcatechoiaminesおよびmethylxanthine誘導体によって惹起されるlipolysisの亢進現象におよぼすprocaine, xylocaineの影響について検討した.Procaincおよびxylocaincはcatecholamincsおよびmethylxanthine誘導体の添加によって惹起されるlipolysisの亢進現象を著しく抑制した.その抑制作用はprocaineよりxylocaineの方が強く認められた.またxylocaineは正常環境液でのlipolysisも抑制した.NE (norepinephrine) によるlipolysisはprocaiaeおよびxylocaineの添加後60分に著明に抑制された. NE含有環境液におけるprocaineの抑制作用はCa2+の代りに2mM EDTAを含む環境液でも観察された.環境液中のCa2+濃度を増加するとprocaineのantilipolytic actionはさらに増強された.以上の結果よりprocaineおよびxylocaineはantilipolytic actionを示すこと, そしてその作用はCa2+濃度の増加によってさらに増強されることなどが明らかになった.
  • 受身皮膚アナフィラキシー (PCA) におよぼす影響
    中沢 政之, 吉村 哲郎, 内藤 惇, 東 洋
    1978 年 74 巻 4 号 p. 467-472
    発行日: 1978/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    種の条件下での受身皮膚アナフィラキシー (PCA) におよぼすN- (3', 4'-dimethoxy-cinnamoyl) anthranilic acid (N-5') の影響について検討し, 以下の成績を得た. (1) N-5' (100および200mg/kg) はPCA惹起30または60分前に経口投与した場合に最大の抑制作用を示し, 240分前処置では抑制作用はごく軽微であった. Disodium cromoglycate (DSCG, 150mg/kg) は経口投与ではPCAに対してほとんど影響しなかった. (2) N-5' (20mg/kg) およびDSCG (5mg/kg) は, いずれもPCA惹起5分前に静脈内投与した場合に最大の抑制作用を示し, DSCGの場合, 以後抑制作用は著明に減弱し, 30または60分前処置では作用はごく軽微となるのに対して, N-5'では120分前処置でも明らかな抑制作用が認められた. (3) 最大抑制作用発現時でのN-5'およびDSCGのPCAに対するED50は, それぞれ8.8および0.79mg/kgであった. (4) N-5' (37.5~300mg/kg, p. o.) の副腎摘出ラットにおけるPCA抑制作用の程度は, 偽手術群におけるそれと差がなかった. (5) 生後3週齢のラットにおけるN-5'のPCA抑制作用の程度は, 成熟ラットにおけるそれよりも強かった. (6) N-5' (75および150mg/kg) を1, 2, 3および4週間にわたり連続経口投与しても, PCAに対する抑制作用の程度は1回投与時のそれと差がなく, 体重増加の抑性作用も認められなかった.
  • 抗炎症作用について
    中沢 政之, 吉村 哲郎, 内藤 惇, 東 洋
    1978 年 74 巻 4 号 p. 473-481
    発行日: 1978/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    N- (3', 4'-dimethoxycinmmoyl) anthrmilic acid (N-5') の抗炎症作用について検討し以下の成績を得た. (1) Histamine, hyaluronidaseまたは酢酸による血管透過性充進に対して, N-5'の100または200mg/kg, P.o.ではほとんど影響しないかまたは軽度に抑制するにすぎなかったが, 400mg/kgでは明らかな抑制作用を示し, その程度はphenylbutazone 200mg / kgの作用に比し大であった. (2) Carrageenin, dextranまたは卵白により惹起したラットの足蹠浮腫に対して, N-5'の100または200mg/kg, P.o.ではほとんど影響しないかまたは軽度の抑制作用を示すにすぎなかったが, 400mg/kgではいずれの浮腫に対しても抑制作用を示し, その程度はphenylbutazone 200mg/kgの作用にほぼ匹敵した. (3) N-5'は肉芽増殖に対して400mg/kg/dayを6日間経口投与することによってはじめて軽度の抑制作用を示し, 100,200または400mg/kg/dayを6日間投与しても体重増加ならびに胸腺, 脾臓および副腎重量に対して顕著な影響は認められなかった。
  • 分離ラット腹腔細胞からのHistamine遊離におよぼす影響
    中沢 政之, 吉村 哲郎, 内藤 惇, 東 洋
    1978 年 74 巻 4 号 p. 483-490
    発行日: 1978/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Homocytotropic antibody (HTA), compound 48 / 80, dextraneならびにphospho-lipase Aによって惹起される分離ラット腹腔細胞からのhistamine遊離に及ぼすN- (3', 4'-dimethoxycinnamoyl) anthranilic acid (N-5') の影響をdisodium cromoglycate (DSCG) のそれと比較検討し, 以下の成績を得た. (1) HTAにより受身的に感作した分離ラット腹腔細胞に対応抗原 (DNP-As) を添加することにより惹起されるhistamine遊離に対してN-5'は1または10μMではほとんど作用を示さなかったが, 100および1000μMではそれぞれ50.8%および95.3%の著明な抑制作用がみられた.一方, DSCGは1μMではほとんど作用がなく, 10および100μMではそれぞれ57。8%および85.5%の著明な抑制作用を示した.しかし, 1000μMでは抑制作用は減弱し67.2%となった. (2) HTAによるhistamine遊離率はphosphatidylserine (PS)の1μg/ml添加により約2倍に増加した.PS添加時のhistamine遊離に対してN-5'の100μMではPS非添加の場合とほぼ同程度の抑制作用を示したが, DSCG100μMによる抑制作用はPS添加時には約1/2に減弱した. (3) HTAによるhistamine遊離に対するN-5iの抑制作用はglucoseの非添加時および添加時のいずれにおいてもほぼ同程度であった. (4) compound 48/80にこよるhistamine遊離に対してN-5'の1~1000 μMはほとんど影響しなかったが, 一方, DSCGは10μMでは軽度の, 100および1000 μMでは明らかな抑制作用を示した. (5) dextraneおよびPS共存下に惹起されるhistamine遊離に対してN-5'は1μMでは軽度の, 10~1000μMでは濃度に依存した有意な抑制作用を示した.DSCGは1および10μMで有意な抑制作用を示したが, 100および1000μMに濃度を増加しても抑制作用は増大しなかった. (6) phospholipase-Aにこよるhistamine遊離に対してN-5'は1および10μMではほとんど影響しなかったが, 100および1000μMでは濃度に依存した有意な抑制作用を示した.一方, DSCGも100および1000μMではじめて抑制作用を示したが, N-5'のそれに比し軽度であった. (7) phospholipase-A活性に対してN-5'の1~100μMでは全く影響しなかったが, 1000μMでは有意な抑制作用を示した.一方, DSCGでは1~1000μMで影響がみられなかった.
  • 姉崎 健, 安藤 隆一郎, 嶋 啓節, 桜田 司, 木皿 憲佐
    1978 年 74 巻 4 号 p. 491-498
    発行日: 1978/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Basal amygdaloid nucleus (Abm) 刺激によりlateral hypothalamus (LH) およびmesenccphalic reticular formation (MRF) からの誘発電位, LH-Abm, LH-MRF および MRF-LH, MRF-Abm 誘発電位に対するdiazepamの効果を検討した結果, 次の成績が得られた.1) Abm 刺激によりLHから三相性の誘発電位が得られたが, diazepamはそのlatc component の振幅を減少させた.2) Abm刺激によりMRFから短い潜時で低振幅のfast component, 続いて二相性のlate componcntが得られたが, diazepamはlatecomponentの振幅を著明に減少させた.3) LH刺激によりAbmより三相性の誘発電位が得られたが, diazepamはこれらに対しては影響を与えなかった.4) diazepam は LH-MRF誘発電位のlate componentの振幅を著明に増加させた.5) diazepam は MRF-Abm 誘発電位に対してはほとんど影響を与えなかった.6) diazcpam は MRF-LH誘発電位のlate componentの振幅を著明に減少させた.
  • 特に脊髄非切断・切断標本における作用比較
    藤田 允信
    1978 年 74 巻 4 号 p. 499-516
    発行日: 1978/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    代表的な諸種向精神薬のネコ脊髄前根反射活動電位におよぼす影響について, 脊髄切断および非切断標本における, 単シナプス反射 (MSR) および多シナプス反射 (PSR) 両脊髄反射電位に対する作用を指標として, 構造-活性相関 (SAR) の見地から比較検討した.1) Neuroleptics において, phenothiazine系誘導体のdimethylamino 側鎖群およびpiperazine側鎖群, およびbutyrophenone 系誘導体の薬物群は, 非切断標本ではより低用量でMSR抑制作用を示し, その効果の発現はPSR抑制作用に先行する傾向が認められた.2) Neuroleptics のPSRに対する抑制作用は, 非切断標本において, MSR抑制作用の強さと比較した場合, 化学構造上特徴ある変化が認められた.すなわち, phenothiazine系誘導体のdimethylamino 側鎖群ではMSR≒PSR, piperazine側鎖群ではMSR≧PSRのそれぞれの抑制傾向がみられ, butyrophenone 系誘導体ではMSR≦PSRの抑制パターンを示した.3) Trieyclic antidepressantsは, phenothiazine系誘導体のdimethylamino 側鎖群に類似した抑制作用を, より高用量でi発現する傾向が認められた.4) Minor tranquilizersのbenzodiazepine系誘導体は, MSRには特に作用せず, PSRのみを抑制する傾向が認められた.5) 脊髄非切断および切断の両標本のMSR, PSRに対する作用を比較することにより, 構造類縁化合物の薬物群はそれぞれ類似した抑制パターンを示したが, その抑制効果の強さの順位はほぼ臨床効果に相関性がみられるが, 構造上異なる薬物群の間には特に一致は認められなかった.以上の1) ~5) の結果から, ネコ脊髄前根反射活動電位を指標として, SARの立場から, ある程度向精神薬を分類しうる可能性が判明した.
  • 水田 和孝, 板谷 公和
    1978 年 74 巻 4 号 p. 517-524
    発行日: 1978/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    γ-Oryzanolのinsulin, 2-DG刺激に対する作用について, atropineを対照に比較検討した.この結果, γ-oryzanolの前処置は, insulin刺激による胃液分泌を用量依存的に抑制するほか, 2-deoxy-D-glucose (2-DG) 刺激の胃液分泌亢進をも抑制した.しかし, 血糖に対してはまったく影響を与えなかった.また, 血清gastrinは溶媒綿実油投与群に比し, 若干peak時を早めるが, 両者の間に有意差は認められなかった.これに対し, atropineはinsulin, 2-DG刺激による胃液分泌を完全に抑制した.しかし, 血糖はinsulin刺激の場合, 生理食塩水投与群よりも有意に減少し, 2-DG刺激の場合には, 生理食塩水投与群との間には差は認められなかった.また, 血清gastrinはinsulin, 2-DG刺激ともに, atropine投与群は生理食塩水投与群よりも著明に上昇した.これらの事実より, γ-oryzanol作用は, 末梢性のatropine作用とはやや異なるが, 迷走神経系に関与して発現するものと推察した.
  • 古川 恭子
    1978 年 74 巻 4 号 p. 525-537
    発行日: 1978/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ラット回腸平滑筋における5-hydroxytryptamine (5-HT) による収縮および弛緩反応の機序について研究し次の結果をえた. 1) 5-HTの濃度により1相性または2相性の収縮を示す. 6.25×10-7M以下の1相性の反応はmethysergide (MTG) により阻害され, 筋性受容体を介する事が示唆された. 1.25~25×10-6M以上の濃度ではphasic contraction (PC) とtonic contraction (TC) の2相性の反応となり, TCはMTGにより殆んど完全に阻害され筋性受容体を介する反応であり, 一方MTGで阻害されないPCはmorphine (MOR) で阻止され, physostigmine (PHYS) により増強される事から神経性受容体を介してのacetylcholine (ACh) による反応であると推定された.また後者の反応はmecamylamine (MC) により阻害されることから神経節に作用している事が明らかとなった. 2) MTGとhyoscine (HYO) の併用により筋性受容体およびムスカリン受容体を共に阻止した場合には, 5-HT 2.5×10-6または1×10-5Mにより弛緩反応が現われた.この弛緩はMCにより影響されず, tetrodotoxin (TTX) により阻害されることから神経末端への作用である事が示唆された. 6-hydroxydopamine (6-OHDA) 注射により内因性noradrenaline (NOR) の検出されなくなった回腸標本においても同様に弛緩反応のみられることから, 上記の濃度の5-HTによる弛緩はnon-adrenergic inhibitory neuronの神経末端に作用していることが明らかである. 3) MTG投与後, 低濃度の5-HT (6.25×10-7M以下) によつても弛緩反応がみられるが, この弛緩はTTXによる阻害が不完全なことから, 神経を介さない部分のあることが推察される.以上のことからラット回腸平滑筋における5-HTによる反応は, 筋性受容体を介する収縮が主体を占めるが, その他に, cholinergic neuronの神経節を介する収縮と, non-adrenergic inhibitory neuronの神経末端, および神経を介さない弛緩をその反応の中に含んでいることが明らかとなった.
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