日本薬理学雑誌
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神経損傷後の腓腹筋およびヒラメ筋におけるCholinesterase活性の変化と,その変化に及ぼすビタミンB群の影響
長谷川 和雄田中 実小林 英幸菊野 正隆
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1978 年 74 巻 8 号 p. 941-950

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抄録

ラットの坐骨神経を圧挫し,腓腹筋とヒラメ筋のcholinesterase(ChE)活性の変化を調べた.次に,その変化と筋萎縮に及ぼすビタミンB1,B6,B12,合剤(3B)の作用を検討した.腓腹筋は1,000 × g沈渣(a画分),100,000 × g沈渣(b画分),100,000 × g上清(c画分)に分画し,ヒラメ筋はホモジネートとミクロゾーム画分について,ChE活性の測定を行なった.ChE活性はspecific activity,total activity (specific activity × 全蛋白量),whole tissue activity(各画分のtotal activityの合計)とで比較した.その結果,腓腹筋におけるChE活性はb画分において最も著明であった.また,各画分のChE活性は神経の障害度に応じて減少し,しかもb画分のChE活性が最も減少した.ヒラメ筋においても,ホモジネートよりもミクロゾーム画分の方が神経障害度をより良く反映した.一方,3Bは腓腹筋においては,ほとんど影響を及ぼさなかったが,ヒラメ筋においては効果をきたした.すなわち,圧挫側のヒラメ筋ChE活性は,3B投与群の方が生理食塩液投与群よりも高い傾向を示した.だが,有意差はなかった.対照側においては,3B投与群のChE活性の方が有意に高かった.筋萎縮に対しても,3Bは腓腹筋においては影響をほとんど与えず,ヒラメ筋において効果を示した.以上の結果から次のことが示唆される.調べた画分のうち,ミクロゾーム画分が最も著明なChE活性を有する.また,神経障害度を最も鋭敏に反映するのもミクロゾーム画分のChEである.一方3Bは,ChE活性ならびに筋重量ともに,腓腹筋においては影響をほとんど与えず,ヒラメ筋において効果を示す.

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