日本薬理学雑誌
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強心ステロイドのモルモット盲腸紐に対する収縮および弛緩作用について
須賀 俊郎鈴木 政美
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1978 年 74 巻 8 号 p. 925-940

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抄録

蟇毒およびDigitalis-Strophanthus属強心ステロイド(CS)を摘出モルモット盲腸紐に適用すると,初期に収縮,次いで弛緩が起こりほぼ完全に弛緩するに至り,この時CSを除去すると弛緩はさらに若干増強されて回復まで20~40分続く.これらの作用の機序を二重庶糖隔絶法により検索した.弛緩はbufalinが最も強力であり,ouabainがこれに次ぎ,cinobufagin,resibufogeninの順であった.適用後1~2分以内に漸増する脱分極とスパイク発射の増加が起り収縮が惹起された.さらに10~20分経過するとスパイク発射頻度の減少ないし欠落が起るようになり,次第に膜は再分極し,弛緩はこれらの変化に極めてよく対応しながら生起した.膜抵抗はCS適用後収縮とともに次第に減少し,その減少は弛緩時にも続き,CS除去後はさらに増強される傾向がみられた.Na,K,Caの膜コンダクタンスは収縮期,弛緩期ともに増加の傾向が認められたが,収縮期にはNaコンダクタンスの増加が相対的に大であり,弛緩期ないしCS除去後の弛緩時にはKコンダクタンスの増加が顕著であった.弛緩期にさらにCS適用を継続すると20~40分後に二次性の緩除な収縮が生起されたが,CS除去後は直ちに弛緩が起り,上述の弛緩期にCSを除虫した際と同様の経過で回復した.CS除去後の弛緩の持続は外液温度に依存し,この下降により顕著に延長された.外液のNa,K,Ca濃度を増加すると濃度依存性に弛緩作用が抑制され,二次性収縮が促進された.以上の結果からCS盲腸紐適用時の収縮は,Na pump抑制の結果によるものであり,弛緩は膜の再分極およびスパイク発射の減少等の膜の興奮性の低下ないし消失によるものであり,この膜変化には細胞内Naの極度の増加およびK透過性の増加が関与すると推定した.CS除去後の弛緩はelectrogenic Na pumpの活性化によるものであることが,膜の諸性質の変化からも推定された.

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