抄録
DAF法によりmorphine(M)とmethamphetamine(MA)を併用し,Mに対するpreferenceに及ぼすMAの影響をラットを用いて検討した.選択試行1日と強制試行2日からなるsessionを6回繰り返した後,1週間毎日選択試行を行なった.M群ではM 0.5mg/g food混入飼料に対するpreference rateは漸次増加し,約70%に安定した.一方,M+MA群ではM群のようなpreference rateの上昇が認められず,MA 0.125mg/g foodの併用群ではM群に対して有意な抑制が認められた.また,MA 0.125mg/g fbod混入飼料と普通飼料をラットに選択させるとMA混入飼料を約40%摂取し,両飼料にM 0.5mg/g foodを混入しても同様の値を示したことより,Mに対するpreference rateの抑制はMA併用による味覚の変化によるものではないと考えられる.さらに,cocaineあるいはcaffeineをMと併用した場合,MA併用時のような有意なpreference rateの抑制は認められず,MA併用によるpreference rateの抑制は中枢興奮薬一般の作用によるものではないと考えられる.実験期間中のM摂取量はM群に比べMA併用群では有意に抑制きれていたが,naloxone適用後の体重減少率はM群と有意差が認められなかった.さらに他の退薬症候においてもMA併用群で著明に出現した症状があり,MA併用によりMの身体依存が増強されている可能性も考えられる.また,MおよびMAの併用効果を毒性の面からも検討したが,併用したMAの用量依存的に死亡例が増加し,また死亡が早まっていることから急性毒性の増強が示唆された.以上の結果から,MAの併用によりMに対するpreference rateは抑制され,これは味覚の変化や中枢興奮薬に共通した作用によるものではなく,MとMAの相互作用によって出現することが示唆できる.また,MとMAの併用による作用増強がpreference rate抑制に関与していることも示唆できる.