日本薬理学雑誌
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実験的コレステロール系胆石症マウスの発症と胆汁中コレステロール,リン脂質および胆汁酸組成の相関
山原 條二千坂 武司沢田 徳之助藤村 一
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1983 年 82 巻 3 号 p. 171-180

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抄録
多種の天然物から胆石症に有効な成分を見出すためのscreening法の確立を企図した.天然物中の微量有効成分の検出にはマウスが好適な胆石症発症病態モデルであるが,実験の結果,既知の胆石誘発飼料は全て悪影響を与えることが示された.そこで先づバター,コレステロール,コール酸添加のマウスに適した胆石症発症飼料を考案した.次で,本飼料により飼育された胆石症発症マウスの病態特性と持続牲にっいて検討するために,胆石発生確認時ならびに,確認後普通飼料に変更して4週および6週間目の胆汁成分,特に遊離および抱合型胆汁酸とコレステロール,リン脂質の動態を検討した.その結果,胆石発症状態においては,deoxycholic acidの増加とchenodcoxycholic acidの消失およびursodeoxycholic acidが減少する傾向がみられ,正常時にはまったくみられないコール酸のグリシン抱合型の出現と遊離およびタウリン抱合型コール酸の増加もみられた.そして,胆汁中のコレステロール量が普通飼料飼育マウスの約4倍に増加したのに対し,リン脂質量は約1.5倍,総胆汁酸量は約2倍に増加しただけであった.胆石発症率は,2週間目から3週間目にかけて急激に上昇した.また,胆石症マウスを普通飼料飼育に変更後6週間目においても胆石が消失することはなかったが,胆汁中のコール酸のグリシン抱合型の消失やdeoxycholic.acid,chenodeoxycholic.acid,ursodeoxycholic acidの正常値への回復傾向がみられた.
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