日本薬理学雑誌
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82 巻, 3 号
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  • 山原 條二, 千坂 武司, 沢田 徳之助, 藤村 一
    1983 年 82 巻 3 号 p. 171-180
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    多種の天然物から胆石症に有効な成分を見出すためのscreening法の確立を企図した.天然物中の微量有効成分の検出にはマウスが好適な胆石症発症病態モデルであるが,実験の結果,既知の胆石誘発飼料は全て悪影響を与えることが示された.そこで先づバター,コレステロール,コール酸添加のマウスに適した胆石症発症飼料を考案した.次で,本飼料により飼育された胆石症発症マウスの病態特性と持続牲にっいて検討するために,胆石発生確認時ならびに,確認後普通飼料に変更して4週および6週間目の胆汁成分,特に遊離および抱合型胆汁酸とコレステロール,リン脂質の動態を検討した.その結果,胆石発症状態においては,deoxycholic acidの増加とchenodcoxycholic acidの消失およびursodeoxycholic acidが減少する傾向がみられ,正常時にはまったくみられないコール酸のグリシン抱合型の出現と遊離およびタウリン抱合型コール酸の増加もみられた.そして,胆汁中のコレステロール量が普通飼料飼育マウスの約4倍に増加したのに対し,リン脂質量は約1.5倍,総胆汁酸量は約2倍に増加しただけであった.胆石発症率は,2週間目から3週間目にかけて急激に上昇した.また,胆石症マウスを普通飼料飼育に変更後6週間目においても胆石が消失することはなかったが,胆汁中のコール酸のグリシン抱合型の消失やdeoxycholic.acid,chenodeoxycholic.acid,ursodeoxycholic acidの正常値への回復傾向がみられた.
  • 菅井 利寿, 仲川 義人, 武田 敬介, 今井 昭一
    1983 年 82 巻 3 号 p. 181-190
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    DOCA-saline高血圧ラット(DOC rat)にRinger液の段階的注入を行って水およびNaを負荷し血圧,尿量,尿申へのNa+およびK+排泄量に対する数種β遮断薬経口投与の効果につきthiazide系利尿薬penfluzideのそれと比較検討した.内因性交感神経興奮様作用を有するpindololはRinger液負荷2.3,4.3および8.9ml/hrいずれの条件下にも少量(1mg/kg)で抗高血圧作用を示したが,最低負荷の55ml/dayの条件下には尿量減少とともにNa+とK+の貯留がみとめられた.血圧と尿量の成績からGuytonの所謂腎機能曲線(RFC)を描いて解析を行ったところ,RFCの左方(低血圧側)への平行移動がみとめられpindololによる腎細動脈の拡張作用が示唆された.同様の作用はα遮断作用を有するβ遮断薬labetalol 15mg/kgでも観察された.一方propranolol 15mg/kgではRingcr液負荷最大の時,尿量および尿中Na+排泄の有意な増加(利尿作用)が観察された.この時血圧は下降の傾向を示した(有意ではない).いずれの負荷条件でも尿中K+排泄は有意に増加した.β1選択性遮断薬atenolol 15mg/kgでは血圧,尿量,尿中Na+排泄何れのparameterにも変化は見られなかったがK排泄はすべての負荷条件で増加の傾向を示した.α遮断作用を有する新しいβ遮断薬K-351 30mg/kgでは血圧下降(中等度負荷時)とナトリウム(最低負荷時),カリウム排泄増加(中等度負荷時を除く)とがみとめられた.一方もう1つの新しいβ遮断薬N-696 15mg/kgでは血圧下降(最大負荷時)のみがみとめられた(カリウム排泄は増加の傾向).thiazide利尿薬penfluzideは通常のratでは充分利尿作用を発揮する用量である2.5mg/kgでも利尿作用を示さなかったが,いずれの負荷条件でもカリウム排泄は増加した.また負荷中等度および最大の条件下には降圧がみとめられた.
  • 西 広吉, 渡辺 俊明, 森 元邦
    1983 年 82 巻 3 号 p. 191-212
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    suloctidil(以下MY103と略)の中枢および末棺神経系に及ぼす単回投与時の作用,ならびに1カ月連続投与時の中枢神経系に及ぼす影響に付いて検討した.MY103をマゥスに投与すると,軽度の運動量の低下と軟便の排出が300mg/kg,p.o.以上の用量で認められた.beagle犬では100mg/kg,p.o.以上で嘔吐ならびに下痢が観察された以外には著変はなかった.自発運動量はマウスでは100mg/kg,p.o.以上で,ラットでは300mg/kg,p.o.で有意に減少した.pentobarbital睡眠の持続時間はMY103 300mg/kg,p.o.で有意に延長されたが,barbital睡眠には何の影響も与えなかった.またMY103には抗けいれん作用は認められなかったが,酢酸writhing数を300mg/kg,p.o.で有意に抑制した.しかしHaffnher法では鎮痛作用は認められなかった.rotarod法においてMY103は30mg/kg,p.o.以上の投与量で陽性作用を示したが,筋弛緩作用は全く示さなかった.m-amphetaminc群毒性に対しMY103は100mg/kg,p.o.以上で致死保護作用を示した.またMY103 10mg/kg,i.p.以上の比較的高用量をラットに投与すると,catalepsyが惹起され,この作用はatropineで抑制された.ラットの条件回避反応は,MY103 300mg/kg,p.o.では何の影響も受けず,ウサギ自発脳波も300mg/kg,p.o.で何ら変化は認められなかった.また脊髄反射にも影響を及ぼさなかった.一方,MY103をラットに連続投与すると,条件回避反応は100mg/kg/day,p.o.以上の投与2日目から有意に抑制された.直腸温ならびにpentetrazolけいれんは,MY103の連続投与によって何の影響も受けなかったが,thiopentalの睡眠持続時間は用量依存性に延長された.しかしこの睡眠増強作用はMY103の休薬によって消失した.他方,末梢神経系に対しMY103は,局所刺激を伴なう表面麻酔作用を示したが,生体位での坐骨神経一筋標本には何の影響も与えなかった.以上の事実から,MY103の中枢ならびに末梢神経系に及ぼす作用は弱く,連続投与時に認められた中枢神経系の抑制作用も,その休薬によって消失することが明らかとなった.
  • 柳浦 才三, 北川 晴美, 細川 友和, 三澤 美和
    1983 年 82 巻 3 号 p. 213-222
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    呼吸中枢と咳嗽中枢の関連性について薬理学的面から検討を行なうために2,3鎮咳薬を用いて呼吸運動と咳嗽に対する影響を詳細に検索した.実験にはpentobarbital 20mg/kg,i.v.軽麻酔下の雄性雑種犬を用い,上喉頭神経切断中枢端電気刺激により咳漱の誘発を行なった.薬物は椎骨動脈内に適用した.薬物適用による呼吸運動の頻度(respiratory rate; 以下RR),振幅(respiratory amplitude; 以下RA),流量(respiratory volume; 以下RV)および咳嗽の頻度(number of cough; 以下NC),振幅(amplitude of cough; 以下AC)の変化を記録した、呼吸のRRはcodcineによって用量依存的に減少し,fominoben,dextromethorphanによって用量依存的に増加した.RAに対してcodeine,dextromethorphanはほとんど彩響を与えずfominobenはRRの場合と同様に用量依存的に興奮作用を示しeptazocineは用量依存的に抑制した.咳噺のNCに対してはcoddneは用量依存的に抑制的に作用し,fominoben,dextromethorphanは高用量で抑制的,dextromethorphanの低用量興奮的に作用した.eptazocineは検討した全用量範囲でNCに対して著しく抑制的に作用した.AGに対しては用いた薬物すべてにわいてNCの場合とほぼ同様の成績が得られたが,dodeineではAGに比べてNCの抑制閾値が低いことが示された.以上の結果より呼吸,咳徽ともに抑制する薬物においてはおのおのの抑制閾値が異なることが明らかとなった.また今回の実験系からも,呼吸を興奮せしめるにもかかわらず咳漱を抑制する薬物の存在が明らかになった,また,頻度に対して作用しても振幅に作用しない薬物,その逆のタイプの薬物,また頻度,振幅ともに作用する薬物が示された.呼吸と咳漱のそれぞれにおいて,頻度調節系と振幅調節系の序在の可能性について考察した.
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