日本薬理学雑誌
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数種鎮咳薬の呼吸および咳漱に対する反応差異
柳浦 才三北川 晴美細川 友和三澤 美和
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1983 年 82 巻 3 号 p. 213-222

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抄録
呼吸中枢と咳嗽中枢の関連性について薬理学的面から検討を行なうために2,3鎮咳薬を用いて呼吸運動と咳嗽に対する影響を詳細に検索した.実験にはpentobarbital 20mg/kg,i.v.軽麻酔下の雄性雑種犬を用い,上喉頭神経切断中枢端電気刺激により咳漱の誘発を行なった.薬物は椎骨動脈内に適用した.薬物適用による呼吸運動の頻度(respiratory rate; 以下RR),振幅(respiratory amplitude; 以下RA),流量(respiratory volume; 以下RV)および咳嗽の頻度(number of cough; 以下NC),振幅(amplitude of cough; 以下AC)の変化を記録した、呼吸のRRはcodcineによって用量依存的に減少し,fominoben,dextromethorphanによって用量依存的に増加した.RAに対してcodeine,dextromethorphanはほとんど彩響を与えずfominobenはRRの場合と同様に用量依存的に興奮作用を示しeptazocineは用量依存的に抑制した.咳噺のNCに対してはcoddneは用量依存的に抑制的に作用し,fominoben,dextromethorphanは高用量で抑制的,dextromethorphanの低用量興奮的に作用した.eptazocineは検討した全用量範囲でNCに対して著しく抑制的に作用した.AGに対しては用いた薬物すべてにわいてNCの場合とほぼ同様の成績が得られたが,dodeineではAGに比べてNCの抑制閾値が低いことが示された.以上の結果より呼吸,咳徽ともに抑制する薬物においてはおのおのの抑制閾値が異なることが明らかとなった.また今回の実験系からも,呼吸を興奮せしめるにもかかわらず咳漱を抑制する薬物の存在が明らかになった,また,頻度に対して作用しても振幅に作用しない薬物,その逆のタイプの薬物,また頻度,振幅ともに作用する薬物が示された.呼吸と咳漱のそれぞれにおいて,頻度調節系と振幅調節系の序在の可能性について考察した.
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© 社団法人 日本薬理学会
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