日本薬理学雑誌
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麻薬拮抗性鎮痛薬Butorphanolおよびその主代謝産物の依存形成能
丹羽 雅之野崎 正勝上久保 啓太藤村 一門田 利人甲斐 修一河野 茂生河村 寿高橋 紀光
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1983 年 82 巻 6 号 p. 451-463

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抄録
butorphanol(BT)およびその主代謝産物であるnorbutorphanol(NB),hydroxy-butorphanol(HB)の依存形成能を各種動物モデルで試験した.ラットに被検薬を1時間毎に3日間静脈内反復注射後,naloxone誘発性体重減少および禁断症状を検討したところBT>NBで弱いものの作用が認められた.HBは有意な作用を示さなかった.被検薬を除放性エマルジョンとし,モルモット皮下に注入,2~3日後naloxone投与によるjumping反応でBT投与は同用量(最大600mg/kg)のpentazocine投与より有意に少いjumpingしか出現せず,またNB,HB(600mg/kg)投与群はともにjumpingを認めなかった,モルヒネ依存ラットに対し,被検薬の交叉反応を検討すると,BT,HBの両投与群は同用量のpentazocineより有意に強い体重減少と退薬症候を示した。NB投与群は生理食塩水投与群に比し,体重変動が有意に小さかったpentazocine投与群とはほぼ有意差を認めなかった.ラット尾状核のadenylate cydase活性に対しBTは用量依存性の弱い抑制作用を示した.その作用はpentazocineより弱かった.NBによる抑制作用はBTの作用よりさらに弱く,またHBは作用を認めなかった.以上の成績からBTの依存形成能はpentazocineの作用よりも弱いと考えられ,これはBTの強いμ-antagonist性によるのかもしれない.NBはμ-agonist性があり依存形成能を否定することはできないと思われる.HBには依存形成能はないと考えられた.
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