抄録
gallamine非動化,人工呼吸下のネコを用いて,timiperoneの脳波に対する作用を対照薬として用いたkaloperidolのそれと比較検討し以下の成績を得た.1)坐骨神経,中脳網様体および視床下部後部の電気刺激による脳波覚醒反応はいずれもtimiperone(1mg/kg,i.v.)によって抑制された。それらの抑制パターンとしては,坐骨神経刺激による脳波賦活閾値の上昇に比較して中脳網様体刺激によるそれは軽度であった.また,視床下部後部刺激による覚醒反応におけるtimiperoneの抑制効果は大膨皮質系脳波についてのみ認められ,辺縁系脳波活動には影響がなく,新皮質と辺縁系の脳波活動に対する作用の解離が観察された.一方,haloperidol(1mg/kg.i.v.)によっても坐骨神経および中脳網様体刺激による脳波覚醒反応に対してtimiperoneと同様の抑制パターンが認められた.また,視床下部後部刺激による覚醒反応に対しても同様の抑制作用を示した.2)視床正中中心核の刺激による漸増反応および視床後腹側核の刺激による増強反応に対して,timiperoneおよびhaloperidolの1mg/kg(i.v.)はいずれも影響を及ぼさなかった.3)尾状核の単一電気刺激により誘発されるcaudatespindleに対してtimiperone(0.3mg/kg,i.v.)は誘発を有意に増強させたがhaloperidol(0.3mg/kg.i.v.)はその誘発を増強させる傾向にとどまった.以上の成績から,timiperoneの自発脳波活動の同期化作用には,haloperidolと同様に,軽度ではあるが上行性網様体賦活系の抑制が関与することが推察され,また,意識水準ならびに睡眠,覚醒周期に影響を及ぼすことが示唆された.