日本薬理学雑誌
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胎生期ラット心臓における交感神経系の棲能的発達に関する検討
渡辺 敏樹松橋 邦夫高山 敏森田 遙
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1984 年 84 巻 2 号 p. 229-241

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抄録
妊娠20日のラット母体静脈内または踏帯および胎盤循環を維持した胎仔の腹腔内に自律神経作用薬を投与し,主としてその胎仔の心拍数の変化から,胎生期における心臓の交感神経系の機能的発達について検討した.その結果,isoproterenol,epinephrine,norepinephrine,tyramineおよびdopamineの胎仔投与は胎仔心拍数を増加させ,一方propranololおよびmethacholineは胎仔心拍数を減少させた.このisoproterenolによる胎仔頻脈およびmethacholineによる胎仔徐脈が,それぞれpropranololおよびatropineの胎仔前投与によって阻止された事から,心臓β-アドレナリンおよびムスカリン性コリン受容体が胎生期に機能的に存在することが明らかになった.またpropranololを胎仔に前処置してepinephrineを投与すると胎仔に徐脈および低酸素症が惹起されたが,これらの作用は断頭仔,hexame-thoniumおよびatropineによって阻止できなかったが,phentolamineおよびyohimbineなどのα-アドレナリン受容体遮断薬によって阻止されたことから,胎生期にα-アドレナリソ受容体も機能的に存在することが明らかとなった.一方epinephrine,norepinephrineおよびmethacholineの母体投与時にみられた胎仔徐脈は,母体の循環器系の変化に基づく間接的影響によることが示唆された.tyramineの心拍数増加作用よりラット胎仔心臓の交感神経終末の機能的成熟をみたところ,胎仔心拍数は妊娠20および19日目ではtyramineの投与によって有意に増加したが,18日目では有意でなかった.このことから,ラット心臓交感神経終末とシナップス後部受容体との機能的な神経支配が妊娠18~19日目に形成されることが明らかとなった.
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