日本薬理学雑誌
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ラットAdjuvant急性炎症足破行反応に対する抗炎症薬の作用
樋口 昭平長田 祐子塩入 陽子田中 伸子小友 進相原 弘和
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1984 年 84 巻 2 号 p. 243-249

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抄録
0.5% Mycobacterium tuberculosis 0.1mlをラット後肢足臆に皮下注射すると急性炎症に伴って炎症足の疹痛閾値が低下し,動物は炎症足を床から離し,三足歩行(以下,破行と略)を示した.この炎症足破行反応に対し,酸性非ステ目イド系抗炎症薬(ANSAID)はpmstaglandins生合成阻害作用の強さに相関した抑制作用を示したが,prostaglandins生合成阻害作用がないかあるいは弱い塩基性非ステロイド系抗炎症薬(BNSAID)の作用は弱いものであった.炎症部位へのprostaglandin E2,1μg/siteの注射により,ANSAIDの作用は消失したがBNSAIDの作用は消失しなかった.bradykinin,5μg/siteの注射では,いずれのタイプの抗炎症薬も作用が消失しなかった.adjuvant急性足浮腫ラットにおいて炎症足肢行反応を指標とした方が,炎症部位への加圧によるstraggling,escapeおよびvocalization反応を指標とするよりも著しく低用量でANSAIDの鎮痛作用を検出でき,このことはyeast足浮腫および硝酸銀関節炎ラットでも同様で,それぞれ加圧および屈曲・伸展刺激によるよりも破行反応を指標とした方が低用量で薬物の作用を検出できた.morphlne,pentazocineおよびacetaminophenも肢行反応を抑制し,これらの作用は炎症部位へのprostaglandin E2の注射で消失しなかった.diazepam,mephenesin,cyprohcptadineおよびimmipramincは破行反応を抑制しなかったが,haloperidolとatropineが抑制した.以上のことは,炎症性疼痛においてはprostaglandinsが重要な役割を果たしており,ANSAIDは炎症部位でprostaglandins生合成を阻害して鎮痛作用を発揮し,BNSAIDは主に中枢神経系に作用して鎮痛作用を発揮するという従来の考えを支持しており,炎症足破行反応を指標とした本法は,抗炎症薬の炎症性疼痛緩解作用を評価する方法として有用と考えられる.
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